働き方改革はキャリアにとってプラス? マイナス?
2019年4月より、働き方改革に関連する法律が順次施行されます。大手企業・上場企業だけでなく、中小企業を含めすべての企業が対象となります。働き方改革には、正規・非正規の格差の是正、女性・高齢者の活躍・雇用促進、雇用の流動化・多様化などいろいろな課題が含まれています。しかしながら、実際には残業時間の削減・抑制、有給休暇取得促進など、長時間労働の是正に多くの人の関心があるように思います。5日以上の年次有給休暇取得義務化、残業時間の上限規制などをはじめ、対応に迫られている企業も少なくありません。
これまでも政府は「働き方改革」を推進しており、幅広い業種・企業で労働環境の改善は進んでいます。長時間労働の是正自体は良い事だと思いますし、これからの労働市場を考えると多様な働き方が可能になることは大賛成です。ただ、労働者の為の法案であり、働きやすさを実現するためのルールであるはずが、キャリアを考えた際に弊害となっていることも出てきているように感じます。
働き方改革≠働きたいように働く
先日お会いしたA さん。父親が地元で事業を営んでおり、資金繰りや経営の苦労を近くで見ていたこともあり、中小企業の経営を支援したい、問題・課題を解決したいという想いを抱き、銀行に就職。希望した通り、中小企業および経営者が抱える問題・課題に実際に触れ、再生や成長の支援に日々取り組んでいましたが、思ったような仕事ができずに転職を考えていました。
思うような仕事ができない理由は、厳しい残業規制。クライアントの為に必要な提案・資料を届けたいと思っても、上司から残業にストップがかかり必要以上に時間がかかってしまう。クライアントに向き合いたいのに、自社の制限が足かせとなり向き合いきれない不満やもどかしさ、そして自身のキャリアに対する不安が強くなり、コンサルティングファームへの転職を決意しました。
ここのところ、同じような相談を受けることが多くなりました。これまではより上のステージを目指してキャリアップを希望する相談が大半でしたが、会社の規制やルールにより思うような仕事ができず、希望するキャリアの実現に不安を感じている方が増えているように思います。
「自分にあわせた働き方の実現」など、本来は労働者の為であるべき働き方改革。しかし、本質を見ず制度だけが独り歩きしてしまうのは本末転倒。誰の為の改革なのか、よくわからなくなってしまいます。
どのような働き方がいいのかは、20代・30代・40代と、年齢や自身を取り巻く環境などによっても異なります。目指すキャリアビジョンと現在のステージによっても変わってきます。働きたいように働くことを実現するためにも、現状をふまえ、未来を見据え、何を身に着けることが必要なのか、自分なりにしっかり考える必要があるでしょう。制度に縛られるのではなく、制度を利用するという考え方が重要だと感じています。
働き方に対する意識改革
Aさんが転職したコンサルティングファーム。ハードワークの典型的な業界のひとつです。ただ、コンサルティング業界にも「働き方改革」の動きが出ています。多かれ少なかれ実態との乖離はあると思いますが、残業時間の上限を設定し、運用する企業が出てきました。変わらずハードな環境の企業もありますが、夜間の会議禁止、リモートワークや産休・育休復帰支援など、クオリティ・生産性を落とさず仕組みを構築して働き方の改善に取り組む企業も増えています。
自分にとって最適な組織・環境はどこか。上述の銀行やコンサルティングファームは一例ですが、業界でひとくくりにするのではなく、企業ごとに見極めることが大事です。そして、制度・仕組に依存するのではなく、活用することによってどのように働き、キャリアを構築することができるのかを考えることが求められます。働き方改革が進む流れの中で、働き方に対する意識の改革も必要だと思います。
(2019年4月22日)
今回の教訓&アドバイス
「働き方改革」は「働きたいように働く」ではない
制度に縛られるのではなく、制度を利用する考え方が重要
働き方改革が進む流れの中で、働き方に対する意識の改革も必要
半藤 剛
【 デジタルプロフェッショナル専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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