昔の、就職=就社という考えが一般的だった頃から比べると、今や日本での転職に対する考え方は大きく変化してきています。仕事を変えることへの周囲の否定的な見方が減り、転職はごく日常の出来事といっても過言ではないでしょう。ただ、安易な転職から、転職回数ばかり多くなってしまうのも考えものです。今回は、転職回数が多いことによって与えるイメージ、そして面接で必ず聞かれる転職理由について考えてみたいと思います。
では、実際に人事担当の方が転職回数の多い方に対して概ねどのようなイメージを持つのかいくつけ揚げてみました。
・人間関係に問題がある人では?
・飽きっぽくて、すぐに違う会社に目移りする人かな?
・好条件でスカウトされたらすぐに飛んでいっちゃう人かも。
・実は仕事ができない人??
などなど・・・他にも考えられますが、いずれも悪いほうに想像されることばかりでしょう。「色々な会社を経験しているので、柔軟性や幅広い対人関係などに期待できる」などとポジティブに捉えていただけるケースは少ないと考えたほうが無難です。ただ、ちゃんとした理由があり、キャリアについて真剣に考えられた結果、転職回数が多くなってしまった方などは、その理由をしっかり伝えることでクリアできる問題です。
そこで、37歳で4社のご経験を持ち、5社目になる企業に見事入社が決定されたAさんのケースをご紹介いたします。この面接には私が同席をしました。
(1社目)新卒で専門商社へ、経理部門に配属 → (2社目)OA機器販売会社の営業職 → (3社目)ソフトウェアベンダーの営業職 → (4社目)SI企業の営業職
(実際の面接でのやり取りです)
面接官:Aさんの今までの転職理由をお教えいただけますか?
Aさん:はい、1社目は正直言いまして学生のときに自分が何をやりたいのか、何に向いているのかわかっていなかったことが大きな原因です。経理に配属されて一応は一所懸命やっていましたが、あまり面白いと感じられず、営業という仕事に興味を持つものの、社内での異動が叶わなかったため転職しました。2社目では、とにかくがむしゃらにやり、そこそこの実績を出しました。営業として自信がついてきたので、本格的にIT分野での営業職にチャレンジしたく転職しました。 3社目でも何とか目標数字は常にクリアしていましたが、3年目のときに本来のお客様重視という方向とはやや矛盾してしまうような方針が出たんです。自分としては、この矛盾を何とかうまく整合させようと、上司、同僚、他部門の方々に働きかけ、色々と努力しましが、結局限界を感じてしまったのが正直なところです。自分の力不足でした。今の会社では、昨年から会社業績が悪化して、給与一律カットや希望退職も募ることになり、悩んだ末、今に至っています。
横で聞いていて、ヒヤヒヤする場面もなく実にスッキリした返答で、面接官も真剣なまなざしで熱心に頷いていました。翌日、面接合格の連絡がありました。Aさんの今までの営業としての実績も評価されてのことではありますが、少なくとも転職回数や理由についての懸念は全くといっていいほど持たれませんでした。
何も転職する理由として劇的な理由が求められるわけではありません。日頃から真剣に仕事に取り組んでいれば当然発生する、新しい分野への興味や今後のキャリアに対しての不安、また会社と自分との方向のズレ・・・。消して誤魔化そうとしたりせず、誠実に説明すれば、きっと伝わります。逆に格好良く伝えようとしたり、オブラートに包んだような表現になると要らざる疑念を持たれてしまいます。
大切なことは、いざ、転職するときにその理由を堂々と説明できるような日々を送っているかどうかです。転職は人生における一大イベントです。決して軽々しく考えずに慎重かつ真剣に考えて行動するようにしましょう。
(2012年5月5日)
今回の教訓&アドバイス
転職回数の多さは、印象としてマイナス
その場だけを切り抜けようとする姑息な考え方は絶対に禁物
転職は慎重に!
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