新卒で入社して5年も経つと、仕事にも会社生活にも慣れ、そこそこ成果も出せるようになるものです。いっぱしのビジネスマンになったと言えるでしょう。でも多くの人が今の仕事は自分のやりたい仕事だったんだろうか?と考え出すタイミングでもあります。少し古くて恐縮ですが3年ほど前にお会いしたAさんのケースをご紹介します。
Aさんは大学卒業後、外資系大手通信機器メーカーB社に就職、システムエンジニアとして5年目、当時28歳です。 お互い挨拶を交わした後、Aさんうつむき加減に。
「いや、実は何をご相談していいかわからないのに来てしまったんです。」
「いいですよ。でも相談したいことがあるからいらっしゃったんですよね。気にせずまずは今のお気持ちを話してください。」とやさしく私。
「そろそろ転職をしないといけないんじゃないかと思っています。」
AさんはSEとしてそこそこ評価され、責任ある仕事をしているものの、この仕事が自分に向いているのか悩んでいること、また本当にしたい仕事だったのかどうかを考えると迷いがあること。また今は居心地がいいけれど、このまま10年過ごして「やっぱり違う」と思ったとき、取り返しがつかないのではないかと思っていること。などを話してくれました。
一通りお聞きして、
「Aさんは今の仕事は楽しいですか?」
「はい。結構きついですけど楽しいです!」即答でした。
「今の職場になりたいと思う人はいますか?」
「はい。僕のチームのリーダーです。」これまた即答でした。
「ほかにしたい仕事とかあるんですか?」Aさん、考え込んで。
「特にはないんです。」
「じゃ、転職しない方がいい!」次は私が即答でした。
Aさんは私の意外な答えにびっくりされた様子。
私はAさんの今の状況がいかにAさんにFITしているか。具体的には(1)仕事で評価されていること。(2)職場になりたい人がいること。(3)なによりAさんが楽しいと思っている。なので転職する必要はないことをお伝えしました。
そして、本当にやりたいことなんて最初から予測不可能であることや、Aさんのように人生に前向きなビジネスマンは30歳前後で必ずAさんと同じような「曖昧な不安」に襲われることをお伝えしました。
「なんかほっとしました。今の仕事頑張っていていいんですね。」
安心されとても明るい表情でした。
Aさんはその後3年間現在の会社で活躍されています。そして毎年新年にメールを頂き近況を報告してくれます。それによると昨年マネジャーになられ、より充実した時間を過ごされているとのことでした。そして「今よりいい会社があればヘッドハントしてくださいね」と、活躍しているがゆえの余裕のコメントも入っていました。
そうなると、全く違う次元でヘッドハンティングしたくなる私でした。(笑)
(2012年8月15日)
今回の教訓&アドバイス
曖昧な不安だけで転職してはいけません。
であるが故に相談する相手は間違ってはいけません。
やってみればそれが天職
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