キャリアアップコラム vol.175
キャリアに関する憧れと負ける技術

憧れの企業に入社する

転職のご相談をいただく時に、しばしばその方の「憧れ」からくるご希望を伺うことがあります。

例えば昔から総合商社に入りたかった。外資戦略コンサルティングファームに入社をしたい。といったようなご希望です。

人によっては具体的な社名まで明確にあり、どうしてもその企業に入社をしたいという強いご希望をお持ちで、極端な場合、入社することが転職活動のゴールになっている方もいらっしゃいます。

 
ただし上記のように入社自体をゴールにしてしまうと、入社後に不幸な事態に陥るケースがあります。

せっかく入社したのに、入社後周りのレベルの高さに圧倒されパフォーマンスも出せずやんわりと退職勧奨されたり、同時期に入社した方が次々と昇格するのを見ていたたまれなくなり、結局短期間でまた次の転職をされる方なども残念ながらいらっしゃいます。

憧れをほどほどに制御するには

キャリア選択において「憧れ」が絡むことを避けるのは難しいでしょうし、そもそも「憧れ」がまったくないなか、理屈だけでキャリア設計をするのは、それはそれで不確実性が高い現代のような社会では意味がないと思います。
 
そこで「憧れ」を制御するカウンターシステム=「負ける技術」が必要になってきます。負ける技術と表現すると、なんだかネガティブな響きもありますが、自身にとってより良いキャリアを構築していく為に必要な技術と捉えてください。負ける技術は以下の2つの要素から構成されます。

負ける技術(1) 「自己客観視能力」

まずそもそもの前提として、私たちは「憧れ」の職業について活躍できるということが極めて稀であるということを頭に入れておく必要があります。ほとんどの人はこのことを人生のどこかで「気づき、受け入れ、忘れる」ことが求められます。これが「自己客観視能力」です。
 
自己客観視能力の足りない人は引き際を見極められず、勝つまでやるということになるのですが最終的にどこかで勝てれば良いものの、一生を費やして結局勝てなかったら、非常に残念な結果となります。
 
冒険家の故植村直己さんは、登山において最も重要なのは、「自分の実力以上のルートだと思ったら、その時点でアタックを中止する勇気、引き返す勇気を持つこと」と述べていますがまさにキャリアにおいてもこの観点は重要になります。

負ける技術(2) 「関心喚起能力」

しかし上記のようにただ「負けを認める」だけだと、なんだか希望が感じられず後ろ向きなスタンスになってしまいます。ここで求められるのが、別の仕事のなかに面白さ、やりがいを見出していく力=「関心喚起能力」です。
 
関心喚起能力では多様な引き出しが重要になってきます。未経験の仕事に接してそれがどのような面白さややりがいをもたらしてくれるかを知覚するには豊かな想像力、多面的に物事を捉える価値観といった引き出しが必要となります。
 
「憧れ」の職業に就くために「役に立つか、立たないか」だけで学生時代から学習機会を峻別してきた人ほどこの引き出しが少ないという印象があります。
 
しかし実際は役に立つのかどうかよく分からないことに対しても興味を持ち、そこに面白みを見出せる能力こそが、実は思ってもみなかったタイミングで自分自身を助けてくれることがあります。

可能性を拡げるのも狭めるのも自分次第

今後ますます流動的かつ不確実性の高い社会となることが予想されるので「憧れ」に捉われすぎず、「充実した自分らしいキャリア」のために目の前の仕事や機会に思いっきり興味を持って楽しんでみることからスタートされてみてはいかがでしょうか。
 
今やっていることが、5年先、10年先のキャリアに大きな影響を与える可能性があるかもしれません。また仕事以外での趣味や、人との出会いに意味を見出していくことも同様だと思います。
 
これは意識一つで変えていけることですね。今回のコラムを読んで、一理あるなと感じていただけた方はぜひ意識をしてみてください。
 
(2016年9月20日)

今回の教訓&アドバイス

元々持っている「憧れ」に囚われすぎない

キャリア構築の中では「負ける技術」が必要になるときがある

目の前の仕事や縁に意味を見出していく関心喚起力を高めていく

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
工藤 直亮
経営幹部、事業責任者等、企業のキーマンとなるポジションへの転職支援が強み。スタートアップのCXOクラス、大手企業の役員クラスまで幅広く支援実績がある。テクノロジー領域のスタートアップ、プロダクトマネージャー、人事組織領域は得意分野。
【 CxO専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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