我々キャリアカウンセリングの世界で、今までの仕事とは全く、またはほとんど違う仕事に就くことを「キャリアチェンジ」と言います。例えば事務系職種から営業職へ、営業職から専門職へ、など。「キャリアチェンジ」はもっとも難しい転職の一つと位置付けられており、我々も候補者の方にはお勧めすることの少ないパターンです(希望される方は多いのですが・・)。ただ本人の強い希望と複数の条件が整ったときそれが実現できるケースもあります。今回は一般的には困難とされる営業職からアナリストに「キャリアチェンジ転職」をされたCさんの例をご紹介します。
Cさんとは半年ほど前に私の友人の紹介でお会いしました。現在広島に在住、一刻も早く会いたいとの希望から、友人から連絡を受けたその週末の日曜日に東京駅でお会いしました。Cさんは関西出身、私立大学経済学部を3年前に卒業後、大手証券会社に営業職として入社、広島支店に配属されました。入社以来3年連続営業成績は同期入社組でトップ。新規開拓数では西日本トップ、預かり資産も勿論先輩を抜いて支店トップという輝かしい経歴の持ち主です。本来ならノリに乗っていらっしゃるはずです。ところが・・・・・
「丸山さん、一刻も早く転職したいんです。私、スペシャリストになりたいんです。」
「え、どうしてですか?そんなに業績がいいのに営業を続けられればよろしいじゃないですか。あと、業績がいいんだから、社内異動だってできるでしょう。」
「ええ。何度も異動の自己申告はしました。でも一向に聞き入れられなくて、もう我慢も限界かなって思ってるんです。」
Cさんは1年くらい前から、支店長や本社の人事などに直談判を何度もされてきて、その度にはぐらかされてきたようです。でも頑張ってればいつかは希望を叶えてもらえると思ってがむしゃらに営業成績を上げてきたそうです。でも、もう我慢の限界を超えたので会社を離れて希望のキャリアを積めるところを探そうと決意されたとのことでした。
「でも、いわゆるキャリアチェンジ転職になりますから、ゼロからのスタートですよ。給料も同年代の人より少なくなりますし、苦労も多いですよ。昇進とかも遅れちゃいますけど、その辺はお分かりですか?」 と私。
「ええ。覚悟しています。とにかく今、動かないとどんどんチャンスが減っていくと思いますし、あと2年もすれば営業以外では金融業界での転職はできなくなると思うんです。とにかくキャリア優先で考えてます。」
私は、外資は即戦力採用なので可能性がほぼゼロであること、また国内大手は第二新卒扱いなのでアナリストなどの知識専門職を採用する可能性が極めて低いことなどをお伝えして、その場を終わりました。
(さて、困った・・・)翌日からCさんの転職戦略を練りながらの正直な私の感想でした。こんなときは第三者に相談するに限るので、早速私の知り合いが勤務する準大手証券会社Dの人事に電話をしてみました。すると、なんと興味があるので書類を見せてほしいとのこと。早速Cさんに連絡をし推薦の承諾を得てCさんの書類をD証券会社に送付。その日のうちに人事部長から連絡があり明日にでも会いたいとのこと。おまけに人事部長が広島までわざわざ出かけるとまで言ってくれました。
トントン拍子に話しが進み、10日後には最終面接。その3日後にCさんはD証券会社のアナリストととして採用内定されたのでした。
後日、人事部長にCさんの採用決定のポイントをお聞きしたところ、1.丁度若手のアナリストが退職したタイミングであったこと、2. Cさんは証券アナリスト資格の試験に合格されていたこと、3.営業とは言えしっかりした実績を上げられてることなどを、ご説明頂きました。それをCさんにお伝えしたところ。
「今まで一生懸命営業してきたことも、無駄にはならなかったんですね。これからも目の前にある自分の仕事をとにかく一生懸命やって行きます。」
と、Cさん。
(その通り!) 思わず受話器を持つ手に力が入る私でした。
転職は現状打破の有効な手段であると同時に、媚薬的な面(最初は良いが結局似たような状況になる)があり、繰り返ししてしまうということがあることもお忘れなく。。。。
(2011年10月25日)
今回の教訓&アドバイス
募集企業とのタイミングが合う
→ 突然の欠員、中々採れないので妥協などの場面に遭遇できればラッキー
給与等の諸条件を下げることが可能か
→ ジュニア、見習からのスタート。「お金をもらって勉強 させてもらう」感覚
現在の仕事で圧倒的な成果を上げている
→ 仕事のできる人はどんな仕事でもできるもの
思いっきり本気であること
→ 憧れや現状逃避でその職務を希望しているだけではダメ
→ 何度も何度も、自己確認が必要
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