キャリアアップコラム vol.24
2分30秒の法則

面接が終わった後、「上手く話せた」という感想を良く聞きますが、「上手く話せた」=上手くいったと言う結果になるのでしょうか。そもそも面接官は応募者の話をちゃんと聞いているのでしょうか?今回は「上手く話せた」話を実は面接官は聞いていなかったという世にも恐ろしいお話です。

今回が2回目の転職です。

「御無沙汰してます。実は今、転職活動をしているのですが、上手くいかなくて悩んでいます。相談にのってもらえませんか?」と、久しぶりのお電話。早速お会いしました。

「どうされたのですか?」と私。

「実は、もう10社以上応募したのですが、全て書類選考は合格、でも一次面接で不合格になってしまうんですよ。何がなんだかわからなくなって、自信喪失です。」

とかなり落ち込んだ様子。

詳しくお聞きすると、自己紹介もやりたい仕事も志望動機も、しっかり準備してとても「上手く」話せるとのこと。一体面接官は自分の何を見て落としているのかがわからないとのことでした。そこで、試しに10分程の模擬面接をすることにしました。

Wさんは29歳、関西の有名私大を卒業後、大手IT企業2社で営業職として活躍されてきました。

そして・・・

「Wさん、どうでした?」

「はい、上手く話せたとは思うんですが、なんか手応えはありませんでした。」と少し落ち込んだ様子。

「Wさん、正直に言って話が面白くなかったです。特に経歴紹介が長すぎて途中で退屈してしまいましたよ。(笑)」

「いや、でもしっかりまとめてもあれくらいにはなってしまうんですよ。」

確かにWさんは2社経験されて色んな成果を出されているので、経歴紹介が長くなるのはもっともなことです。

「Wさん、会話の中で話を集中して聞ける限界は2分30秒って言われているんですよ。今、何分くらい自己紹介していたかわかりますか?」

「3、4分ですかねぇ。」

「いえいえ、6分ですよ。」

これはWさんに限ったことではなく、多くの応募者は自分の話している時間の感覚は少なめなものなのです。

「でも、経歴を全て話すと、どうしてもこれくらいは必要になってくるんです。どうすれば2分30秒で話せるんでしょう。」とWさん。

「相手は経歴紹介でWさんの何を知りたがっているんでしょうか。それだけを話せば2分30秒で話せるんじゃないですか」

面接は書類選考の次のステップです。面接官は経歴の中で注目した経験があったからこそ書類合格という判断をしたのです。では、何に注目したか?募集要項や募集背景など事前の情報で推測できる場合もあります。例えば営業としての実績だけでなくマネジメントを期待しているとか、特別な業種への営業経験があるとか。であれば、その経験を強調して、他は簡単に触れる程度でいいのです。

また、企業の募集情報があまりわからないときは、極端な話、最初の経歴紹介はさらっと簡単に話して流れと特徴をつかんでもらって、その後の質問を待つ。最初から全てのことを詳しく同じウエイトで、または自分が強調したいというだけで詳しく説明してしまうので、5分、6分と話し続けてしまうのです。まずは、「その質問の意味」をしっかりとメッセージとして受け止めることが大切なのです。

「最初に経歴を簡単にご紹介ください」。これには、「職務経歴は一通り読んでいます。でも、私が理解できるように、簡潔に、そして私の集中力が持つ間に。。。」という意味なのです。

一通りご説明した後、Wさん。

「そうですね。私は自分の話したいことを話してました。もっと相手の知りたいことや会社の状態を想像すべきでした。」

「そうでしょう。それでかなり会話の濃度は変わってきますよ。面接はプレゼンテーションではなくてコミュニケーションなんですよ。」

Wさんは大いに納得され、お帰りになりました。

それから1週間後。Wさんよりメールがあり、2社面接を突破されたとのこと。まだ、2次、3次と残っている様子ですが、Wさんはとても自信を回復された様子でした。まだ合格の連絡はありませんが、Wさんのことだからきっと上手くいくのではないかと思っています。

面接という場面ではついつい自分のPRしたいことを詳しく話したくなるもの。まずは気持ちを抑えて相手の聞きたいことにしっかりと応えていくことが大切です。ちゃんとコミュニケーションが取れて面接官との関係構築ができれば、何かの質問をきっかけに自分の話したいことを伝えればいいのです。まずは面接官との関係構築。相手のペースで会話を弾ませることが大切です。実は面接官もそれを望んでいます。だから最初に誰でも応えられる「経歴をご紹介ください」という質問を用意しているとも言えるのです。

(2012年2月10日)

今回の教訓&アドバイス

相手の話を聞ける時間は最長2分30秒と心得ること。

面接はプレゼンではなく相手とのコミュニケーション。

そのためにも事前の募集情報や会社情報の収集が重要。

書類選考通過⇒興味を持った経歴が必ずある。

コミュニケーションが取れればお互い手応えがある。

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
丸山 貴宏
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