転職はご縁のものとよく言われます。“今回は縁がなかったんだね”とか、“やっぱりご縁があったんだ”、というふうに、ある意味便利な言葉としてついつい使ってしまいます。ご縁とは一体何者なのだろうか?その正体を暴くべく、一つの例を取り上げて考えてみました。
もう2年も前になりますが、複数のコンサルティング会社で経営コンサルタントとして、クライアント企業の経営課題の解決に取り組んできたAさんが転職相談にご来社。本質を見抜く力と、深く広い思考力、的確な説明力に加え、人間味溢れるキャラも大変魅力的な人物です。
現在プロジェクトの合間にあり、予てから考えていた転職活動を開始、希望は事業会社。
3社提案し2社に応募、その内の1社であるB社が早々に書類選考を通過し、面接へ。一次面接では期待通り高い評価を受け、是非二次面接へとなりました。そして二次面接も変わらず高い評価で通過。ここまでは極めて順調です。Aさんのモチベーションも高い状態に。
ところが、次回社長面接という段階で、予期せぬ状況に。社長が海外出張やその他のスケジュールの都合でどうしても面接日程の調整ができないまま3週間が経過。
転職活動開始当初はプロジェクトの合間でしたが、今は次のプロジェクトへのアサインの話が出ており、それを受けるか断るかの決断時期が迫ってきました。転職先が決まっていない段階で、断る選択肢はあり得ませんので、焦るAさん、そして私。
B社とも状況を常時共有し努力していただいていたものの、どうしても面接を組めませんでした。
そして遂に時間切れ。Aさんから、“非常に残念ですが、もうこれ以上は待てないのでB社のことは諦めて、次のプロジェクトに入ります”と。これも含めて評価なのかな、と若干悲しい気持ちになっていたご様子。B社の人事担当者に報告し、結局ご縁がなかったですね、とお互いに非常に残念な思いでその話は終了、したかに思えたのですが、数日後にB社の社長がAさんに何とか会わせて欲しいと、諦めていなかったのです。一度気持ちを切り替えたAさんに、ある意味無理にお願いして社長との面接をセッティングした形となりました。
数日後、B社から内定連絡が届くも、転職時期という大きなハードルをどうしよう・・・。採用側、しかもベンチャー企業のB社にとって、内定から半年先に入社というのはいくらなんでも非現実的です。Aさんに対して無茶なお願いをしてみるか、ふぅ~っと大きな溜息。
こういうことも我々の重要な仕事。ダメ元という思いでAさんに相談したところ、“3カ月後をメドになんとか調整してみます”と意外な返事。えっ、大丈夫なんですか?と思わず私。“本当は6カ月拘束される予定なのですが、途中で抜ける段取りさえできればなんとかなります”と。社内で多くの方に迷惑をかける可能性や、信用をなくす懸念もある中、そのリスクをとってでも、時期を前倒す決断をしたAさんの姿に、強い自信と意思を感じました(後日談ですが、無事円満退社されました)。
Aさんに聞くと、社長にお会いして、今後のビジネスプランに大変な魅力を感じたこと、また責任ある役割を任せていただけそうという点も大きかったのですが、なかなか面接をアレンジできなかったことに対して、社長ご自身が直接厚くお詫びをされ、その上で、是非一緒に仕事したいといった意味の言葉をいただいたそうで、その誠実な対応と熱い思いが心に響いたご様子です。
それを聞いて、“これがご縁か”と。偶然が重なって生まれるご縁もあるかもしれませんが、今回は、熱い(強い)思いが相手に通じ、受け取った側もそれを意気に感じて行動した。つまり、ご縁とは人の気持ちが通じ、そしてお互いにプラスに影響し合って、そこから新たな関係が生まれることであり、そのご縁を生んだ張本人は自分自身に他ならないと言えます。
(2013年1月25日)
今回の教訓&アドバイス
ご縁とは偶然生まれるものではなく、人の強い思いが生み出すもの
人の心を動かす基本は飾りのない誠意ある気持ちと行動
何事も諦めないことが大事
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