活況が続く転職市場とリーマンショックの記憶
今年1月に景気拡大局面が戦後最長を更新したという政府発表がありましたが、つい最近の内閣府発表では6年2か月振りに国内景気の基調判断が悪化。とはいえ有効求人倍率も高水準を維持しており、今転職をしようとしている方にとっては求人案件が多い良い状況が続いています。
ただ、やはりこの先は世の中の環境がどうなっているか不透明です。ある日突然激変・・ということもあります。顕著な例として、2008年のリーマンショックによる景気後退、雇用環境の悪化が挙げられます。当時まだ社会人になっていなかった方は実感がないと思いますが、当時の記憶・感覚を荒っぽく表現すると、“世の中から求人が消えた”という感じでした。クライアント各社が示し合わせたかのように、各社が次々と求人を凍結したのです。一方、相談に来られる候補者は、リストラに遭った方や、その可能性を心配する方が多かったです。
こういう時こそ「治に居て乱を忘れず」
世は無常、そして歴史が示す通り景気には波がありますので、景気悪化局面がすぐそこに迫っているかもしれません。
多少気持ち的に余裕がある時期に、将来のいざという時に備えること、まさに孔子が残した「治に居て乱を忘れず」という言葉を実践すべき時ではないでしょうか。
では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか?
絶対的な答えはありませんが、不況時の転職はライバルが増え競争倍率が高まるわけですから、少なくとも差別化ができていないと勝てません。そして、自分が会社に利益をもたらせるかどうか、その自信の裏付となる実績があり、それを他人に論理的に説明できるかどうかが重要になります。
厳しい環境下での転職成功例
リーマンショック後の非常に厳しい転職環境においては、本当に会社の利益になる方のみが採用されました。その時転職支援で関わった例を一つ紹介します。
IT営業プレイングマネージャーのA氏は、自ら新規顧客を開拓するなど、率先して動くことでチームの目標を達成してきました。その結果が素晴らしいと思える一方で、転職先で同じような活躍が出来る保証までは見えません。つまり、面接で再現性を訴求できないと意味がないことになります。そこで、Aさんには過去を細かく振り返っていただき、どのタイミングで何をしたのか、その時なぜそこに目を付けたのか等々、Aさんの頭の奥深くにあることを引き出し、行動と結び付けてAさん自身の成功ストーリーをまとめて頂きました。プレゼンの練習も行い、応募先の社長面接&プレゼンの結果、見事採用が決まりました。数年後、同社社長とお会いした際、Aさんが期待以上に大活躍され、執行役員として部門を率いていただいているということと、Aさんに来ていただいたお蔭で会社が助けられたと、ビックリするほど感謝されました。不況期においては、会社を救うほどの活躍が期待されるような方でないと採用されない実例と言っていいと思います。
Aさんの成功ポイントを整理すると、役割や仕事への強いオーナーシップがあること。全てを自分事として徹底的に考え抜くことができます。更に自ら課題を見つけ、その課題解決に必要な打ち手を考え、次善策も持っていること。そして決めたことをやり抜くパワー。自ら意思を持って主体的に動いてきたことが伺えます。だからこそ、過去の経歴を深堀りする質問に、ちゃんと具体的な回答が出てきました。外部環境がどういう状況であっても、転職を成功させる人は概ね上記に通じる要素を持っていると感じています。営業などのプロフィット部門の職種に限らず、経理財務、システム部門、物流等、色々な職種で当てはまります。
今までのご自身の仕事を振り返り、マズイと思った方は今から自ら課題を見つけてその解決に取り組むという行動パターンを取り入れてみてはいかがでしょうか。いざ転職というときに、自分の成功ストーリーが話せるかどうか、この差は大きいです。
(2019年6月20日)
今回の教訓&アドバイス
余裕のある時にこそ将来に備える
常に自らの意思を持って日々の業務に向き合うことの大切さ
自分の成功ストーリーを話せるかどうか
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