キャリアアップコラム vol.216
転職活動の明暗を分ける、求職者の覚悟

転職活動における悩ましい問題の一つがタイミングです。新卒の就職活動のように、複数の内定を確保した状態で、更に選択肢を増やそうということはなかなか出来ません。また、内定が出てからの回答期限は概ね一週間程度が一般的です。転職は人生における重大な選択・決断であることは言うまでもありません。だからこそ是非とも心掛けてほしいことがあります。それは、大事な局面でリスクをとる覚悟を決めるということです。それが奏功したケースと、うまくいかなかったケースをご紹介しながら考えてみたいと思います。

リスクをとる求職者の姿勢に企業側が応えた

Aさんは、20年近く日本の大手企業一社で、主に法人営業とマーケティングを担当し、常に顧客ニーズや顧客にとって自分たちが提供できる価値はなにかを考えて仕事をしてきた優秀な方です。転職動機は“テクノロジーが経営を変える”という大きなトレンドがやってきている中、今の企業にいたのでは、世の中から取り残されるという危機感を抱いたからです。

そして、意思決定が早い新興企業を狙って転職活動を開始しました。私からは3社応募を勧め、全て書類選考が通過し各社とも面接へ。選考が進む中で、その中で一番魅力的に思えたB社が第一志望となりました。ところが、ご自身で応募されていたC社から予想外に早く内定が出てしまい、その回答期限が迫っていました。B社はまだあと2回の面接を残しており、足並みを揃えることはほぼ無理でした。間に合わないB社をご辞退することも視野に、Aさんにどうしましょうか?と率直な気持ちを尋ねました。

C社への回答期限を引き延ばす交渉をするという選択肢もあったのですが、なんとAさんの口からは、B社の次の面接を通過して最終に進むことになったら、C社を辞退するというのです。いいんですか?と念を押して考えが固いことを確認し、そのことをB社にお伝えしたところ、翌日B社から予定を変更して次を最終面接とするという連絡がありました。その理由は、初めての転職活動で、Aさんのリスクをとる覚悟にB社内の関係者が心を動かされたからだそうです。そして、その覚悟が奏功してか最終面接では非常に高い評価を得て、現職よりもかなりの年収UPで見事に内定を獲得したのでした。

優秀でも企業文化の溝が埋められなければ、転職は成功しない

さて、もう一つのケースですが、こちらも初めての転職となるDさん。一流大学を卒業して大手総合商社で約10年。近い将来の経営ポジションを狙い、スタートアップへの転職を希望していました。頭脳明晰で現職での成果も評価されたDさんも第一志望のE社がほぼ内定に近いところまで来ました。ほぼ内定に近いということはDさんにもお伝えし、あらためて希望年収を確認し、条件面の詰めに入りました。しかし、そこからのDさんの行動が徐々にマズイ方向に・・・。

初年度の年収はある程度納得いただいた一方で、入社翌年の年収はどのくらいになりますか?また、何がどのくらい評価されたら〇〇万円に到達しますか?と、福利厚生がないので、入社後の年収がどうなるのかがわからないと判断できないというのです。変化が激しいベンチャーは評価の仕組みが変わるのも早いし、そもそもそんなにキッチリした制度がないことが普通。E社にはうまくお伝えしましたが、E社の役員も、あれっ?と思い始めたようです。

スタートアップを希望し、近い将来経営ポジションに就きたいというDさんなので、リスク覚悟でベンチャーに飛び込み、自分の力でポジションも年収も掴みとるという気持ちがあるものと思っていました。しかし大企業の感覚から抜けられなかったようです。結局、内定寸前だったE社から、“優秀だという評価は変わらないが、企業文化とのギャップが払拭できない”という理由で正式内定が出ることなく、Dさんの転職活動は仕切り直しとなりました。

(2020年2月20日)

今回の教訓&アドバイス

求職者の覚悟は、企業側に伝わる

スタートアップ企業の転職では、特に覚悟が必要

優秀でも、企業文化のミスマッチは乗り越えにくい

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
奈良 元生
エグゼクティブポジション全般、オーナー系中堅成長企業。新規立ち上げ、事業企画系実績も多数あり。
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