キャリアアップコラム vol.139
“辞退”を軽く考えていませんか?

“辞退”を軽く考えていませんか?

選考辞退、オファー辞退、入社前辞退と、転職活動では、ご自身の都合で選考を終えられる場面としばしば遭遇します。今回は、辞退にまつわるエピソードと私の考えを述べたいと思います。

Kさんの転職をご支援させていただいたのは半年前。
A社とB社からオファーをいただき、A社がより希望を満たしていたため、B社へは丁寧に辞退の意を伝え、A社へご入社されました。Kさんと入社後にお会いしたところ、充実した日々を送っているとのことで、更なるご活躍を祈っていました。

ところが数か月たったある日、Kさんからご連絡がありました。「A社では2つの役割が与えられており、1つ目の役割ではお客様の期待にしっかり応えられていました。しかしながら、もう1つの役割について、上司(当時の面接官)と私の間で技術面に関する認識の大きな齟齬があり、そのギャップを埋めるために1か月ほど徹夜が続いています。」

Kさんは途中で物事を投げ出さないという信念をお持ちの方で、努力を続けられているものの、詳しくお話をお聞きしていくと、そのギャップは短期間で埋められるものではなく、A社での今後のキャリアを考えなければならない状況とのこと。また、A社に入社したことで様々な気づきがあり、B社の良さを再認識しているということでした。

入社前後で職務が違うことは多々ありますし、短期での転職にはデメリットも多いことから、どうすべきかと大きく悩みましたが、現状はKさんが逃げ出さずにアクションを取り続けた上での状況であり、今回の転職がどのような意味を持つか、やA社で感じたご自身の価値観などについてKさんと深く話した結果、転職活動を再開することにしました。

そこで、これまでの経緯から、今回はB社1社に絞った転職活動を行うことに。B社の選考の詳細は割愛しますが、結果的にSさんはB社からオファーをいただくことができ、現在は、チャンスをいただけたことに感謝しながら、高い充実感を持って、猛烈に働かれています。

再度オファーをいただけた大きな要因は半年前の辞退の仕方にありました。Kさんは、志望度が高かったA社のオファーを先に得ていたものの、B社のオファー面談で、現場・人事の方へオファーをいただいたことの感謝の意を伝え、他社の状況やご自身の決断の方向性を真摯に説明されました。その結果、B社のオファーを辞退する際に、現場・人事の方はその決断に理解を示して下さり、応援の言葉までかけて下さいました。Kさんは、オファー辞退にも関わらず、B社の方と良い関係性を構築されていたわけです。

一方で、志望度の高い企業からオファーを得られた瞬間に、他社とのオファー面談を設定していたにも関わらずお詫びなく突然辞退される方や、他社の選考が継続しているにも関わらず一切連絡が取れなくなってしまう方など、それまでと大きく態度を変える方もしばしばいらっしゃいます。

現職の都合で、辞退意志を伝える余裕がない方や、辞退は人材紹介会社の仕事と考える方もいらっしゃるかもしれません。また、人材紹介会社側に問題がある場合も考えられますから、私自身、振る舞いはどうだったのかと自問自答することも多くありますし一概に良くないと言うつもりはありません。ただ、選考の機会やオファーをいただいたことに対する感謝の気持ちを忘れずに、誠意ある行動を心がけることは重要です。

辞退した企業へ再応募することもあるかもしれませんし、その企業の方と協業する可能性もあるでしょう。選考時の面接官が、ご自身が所属する企業へ転職して来られることも考えられます。ご縁とは不思議なもので、過去の行動がいつか繋がっていくものです。

辞退のような局面にこそ、その方自身が現れるとも言えるでしょう。

(2013年8月5日)

今回の教訓&アドバイス

辞退によって、良い関係性が構築されることもある

辞退こそ、感謝の気持ちを忘れずに、誠意ある行動を心がけることが重要

過去の行動が将来に繋がっていくことを認識し、行動すべき

このコラムを書いたコンサルタント
コンサルタント
永田 憲章
コンサルファームでの実務経験を活かして、ミドル~エグゼクティブの方のハイクラス転職の実績多数。コンサルファーム・大手事業会社・スタートアップ・VC・PEファンドなど幅広い業界・職種に精通し、幅広い選択肢の中から中長期的なキャリア展望も見据えてアドバイス。デジタルプロフェッショナルのキャリア・転職支援も強みとしています。
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