キャリアアップコラム vol.137
柔軟性

「協調性」「リーダーシップ」など、候補者の方々から強みとして出てくるキーワードであり、企業が求める人物イメージとしてもよく挙がる項目です。「柔軟性」があるかどうかもそのひとつ。これらは抽象的で説明や評価・判断するのが難しいのですが、これまでの業務ではもちろん、新しい業務・新しい環境で活躍するためにも必要な資質です。この「柔軟性」が評価され、40歳でキャリアチェンジに成功した方のお話をご紹介します。

Aさんは某有名大学を卒業後、国内系の大手IT企業に入社。システムエンジニア（以下、SE） としてシステム開発からスタートし、プロジェクトマネージャー（以下、PM）として活躍。直近では複数のプロジェクトを統括し、ラインマネジメントにも携わるなど、知名度のある会社で順調にキャリアを積み重ねています。そんなAさん、40歳にして初めての転職活動です。

「これまでも顧客の役に立ってきた自負はありますが、システムありきのソリューションではなく、コンサルタントとしてより上流の課題解決から携わり、顧客の利益に貢献したいという思いが強くなりました。年齢的なことを考えると遅いかもしれませんが、今しかないと思って転職を考えています。」
居心地も良く現職に不満はないのですが、これまでのキャリアではなくこれからのキャリアを考え、このタイミングでのチャレンジを選択されました。

顕在化した問題・課題を解決するための提案・実行を行なうSIと、潜在化している問題・課題を見つけて解決手法までを含めた提案・実行を行なうコンサルタント。もちろん、これまでの経験を活かすことはできますが、新たに身に付けなければならないスキル・経験も少なくありません。これまでのキャリアからシフトすることになるため、現場からのスタートとなり、年収やポジションなど今より下がる可能性も高い。年齢的な面から選択肢も少なくなり、制度・体制などの環境面も今より悪くなるかもしれない。特に、Aさんは大手企業1社のみの経験のため、今まで当たり前だと思っていることがそうでなかったりと、転職によっていろいろなものが変化し、手放さなくてはならないものが出てくる可能性を強めにお伝えしました。

「もちろん家族もいるので限度はありますが、転職したら新入社員なので、入社時の給与や役職が下がることは最初から想定していました。これまでも実績を出すことによって自分のポジションを上げてきたので、自分のスタンスは何ら変わりありません。現職でも新しい領域のプロジェクトに参加する際は、PMであっても現場に出て知識を身につけてきたので、現場からスタートするのも当然のことと思います。」
「企業が中途採用に求めるのは、現場でいかに価値を提供できるか。マネージャーであっても、プレイヤーとしての動きができなければいけません。ましてや、プレイヤーとしての評価がなければ、マネジメントの役割は期待されません。」

頭では理解できたとしても、現実として受け入れることはなかなか難しい。ただ、もともと想定していた内容と初めて考える内容があったようですが、Aさんはこれらを受け入れていました。現職と市場の常識・評価がイコールではないということを認識し、市場を意識している点などからも、これまでの実績や成功体験にとらわれず、状況や変化を受け入れ、自分から機会を作れる方だと確信できましたので、企業にも自信を持って強く推薦することができました。面接でもこの点は高く評価され、コンサルタントとして新しいキャリアをスタートされました。

抽象的なものを説明する際には、いかに具体性を持たせるかが大事です。そのために、事例はもちろんですが、そこにしっかりとした考え方を持っているかどうかが重要です。A さんの「過去」ではなく「未来」を向いた考え方にはこれまでの行動・実績など具体例が伴っており、説得力がありました。強い信念や思考が柔軟性を支えるのだということを改めて感じました。

（2013年6月25日）

今回の教訓&アドバイス