今回は千差万別なスタートアップ企業の中から後悔や失敗をしないために自分に合った会社を見極める6つのポイントについて、前回に引き続き解説します。 ちなみに前回紹介したのは「(1) どの成長フェーズのスタートアップ企業なのか?」「(2)経営者・経営陣(経営チーム)はどんな人たちか?」の2つです。興味のある方は前回のコラムもぜひご覧ください。
(3)対象マーケットのポテンシャルは?
手掛けている事業の市場規模が将来、どれくらいの大きさになるかはその会社の成長に大きく関わってきます。この点は候補者によって気にする人、気にしない人がいて、「できるだけ成長が見込める領域に転職したい」という人もいれば、「私はこの分野が好きなので転職したい」と、私たちとの面談で話題に上がらない人もいます。
とはいえやはりビジネスなので、想定している市場規模と、それに対し現在はどれくらいリーチできていて、将来的にどの程度のシェアを獲得できると目論んでいるのかについては、スタートアップ企業とのコミュニケーションを通じて確認、検証しておく必要があります。
そのときに注意しておいたほうがよいのが、市場規模の定義です。幅広く定義し過ぎているため、数字が過大になっている会社があるためです。
また、単なる市場規模の大きさを重視する必要はありません。たとえば狙っている市場の規模が1000億円と聞くと小さく感じるかもしれませんが、そのうち20%のシェアを獲得できる勝ち筋があれば200億円の売上を達成できます。
これだけ売上があれば東証プライム市場に上場できるレベルなので、市場規模が1000億円でも別に小さいわけではない、と考えられます。
ただし、市場規模が小さすぎる領域でビジネスを展開すると売上が伸びず、給与も人員も増やせません。スタートアップ企業は基本的に外部から資金調達して事業を行うため、一般的な中小企業以上の成長が期待されています。
成長しないのなら他人資本を入れてまでスタートアップ企業をやる意味はあるのか、という話になってしまいます。
そういう意味でも、転職を検討しているスタートアップ企業が適切な成長ができる市場にポジショニングしているかどうかは、きちんと検討したほうがよいでしょう。
(4)事業やプロダクトの内容と、取り組んでいる課題は何か?
そのスタートアップ企業が手掛けている事業やプロダクトを愛せるか。あるいは「業界のこんな課題を解決したい、」「ユーザーが直面しているこの問題を改善したい」といったチャレンジしている課題への共感は、個人が働くモチベーションの原動力となります。
したがってその会社の事業やプロダクト、取り組んでいる課題に興味が持てるか、自分にとって共感できるかどうかは大切なポイントとなります。
ただし、最初から強い思い入れを持てるとは限りませんし、業界へのこだわりはあまりないという人も少なくありません。
また、事業やプロダクトを見る視点としては、ユニークさや参入障壁の高さ、競争優位性といったポイントも欠かせません。
(5)採用力が強いか?
スタートアップ企業ではどれだけ優秀な人材を採用できるかが、事業の成長に直結します。そのため採用にどれだけ本気で取り組んでいるかは非常に重要で、かつ求職者が自分自身の体験でダイレクトに感じ取れるポイントでもあります。
求人に応募してきた人たちに対し、適切な情報提供で自社の魅力を伝え、面接を上手に行ってより良い「採用体験」を提供している会社は、やはり採用力が強いです。
逆に採用があまり上手ではない会社もあります。面接に行ったら上から目線で一方的に話を聞かれ、とくに情報提供もしてくれないし、話をしても会社に対する理解が深まらない。そんな不快な対応を一人だけでなく複数の面接官からされたら、面接官個人の問題ではなく組織として何らかの問題がある可能性が高い。これではよい人材が応募してきても逃げられてしまう、採用力の弱い会社になってしまうでしょう。
スタートアップ企業に限らず、現在の転職市場は優秀な人材の獲得競争になっています。繰り返しになりますが、よい人材に入社してもらえるか否かが会社や事業の成長に大きく影響するので、採用力の弱い会社は競争に劣後し、強い会社は成長できる可能性が高いです。
ですから、応募者に提供するより良い採用体験を意識してつくっているかどうか、そしてそのスタートアップ企業に分不相応な人材がどんどん入社しているかどうかは、会社を評価する上で重要な指標となります。
(6)経営理念やミッション・ビジョン・バリューに共感できるか?
大手企業で働いていると多くの場合、経営理念はあっても日常業務に直接影響することは少ないと思います。
しかしスタートアップ企業は人が集まっては散っていく世界なので、組織の拠り所として経営者と経営理念、ミッション・ビジョン・バリューがより重要になります。何か判断に迷ったら立ち返る基準なので、これらに共感できないといずれ組織と合わなくなります。
経営理念やミッション・ビジョン・バリューが策定された背景にどんな経緯や経営者の思いがあるのかを知り、それに自分は共感できるかどうか。これはスタートアップ企業選びにおいてとても大切なポイントです。極端な話、ここさえしっかりしていれば、あとはスタートアップ企業耐性さえあればやっていけるでしょう。
もちろん表面的な美辞麗句を並べているだけの会社もありますし、経営者の思いはあっても組織にあまり浸透していない会社もあります。それは面接で複数の社員と話したとき、経営理念やミッション・ビジョン・バリューに対する思いが話の節々に感じられるかで判断できます。
たとえば面接官に「なぜ入社したのですか」、「この会社で働く醍醐味は何ですか」と質問してみると、そのスタートアップ企業が大切にしている価値観を共有している人なら、それが回答にわかりやすく反映されるでしょう。
今回は2回に渡り、自分に合ったスタートアップ企業を見極めるポイントを6つに分けてまとめてみました。
スタートアップ企業への転職が増えたことで、転職の選択肢が拡がったことはとてもいいことです。
だからこそ、イメージと違ったなどといった残念な理由で後悔することがないよう、人材紹介会社の目線でお役に立てることをお伝えできればと思います。スタートアップ企業への転職を視野に入れている方は是非ご相談ください。
(2024年5月20日)
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