スタートアップ企業に転職しているのはどんな人か
実際にスタートアップ企業へ転職した人は、どんな理由で転職を決断しているのでしょうか。私たちがお手伝いをしている範囲では、仕事に対する思いが第一の理由になっているケースが多いです。
「スピード感を持って仕事をしたい」
「新しい事業を作っていきたい」
「世の中に対しインパクトのある事業やサービスを生み出したい」
スタートアップ企業で一攫千金、というイメージを持っている人がいるかもしれませんが、報酬のリターンを目的としてスタートアップ企業への転職を考える人は、あまり多くはありません。まず仕事に対する思いがあって、その上で報酬のリターンを得られればよいな、という人が大半です。そもそも一攫千金を狙うなら別によい方法があるでしょう。
「早く経営に近い、裁量のあるポジションで仕事をしたい」との希望もよく聞かれます。大手企業では40代になってやっと課長や部長になれるケースが多いので、「そこまで待っていられない」という人がスタートアップ企業への転職を目指すわけです。
最近はこの問題に大手企業が危機感を持ち、20代社員を課長に抜擢したり、30代前半の部長が生まれたりしていますが、スタートアップ企業では20代の役員もいますし、30代前半で社長に就任している人もいます。
大企業とスタートアップ企業では、事業と組織規模における成長率がまったく違い、スタートアップ企業では1年で従業員数が2倍になることも珍しくないので、ポジションはどんどん生まれてきます。しかし大企業は若手を抜擢する制度をつくってもポジションは限られており、一度誰かが昇格したらしばらく次の昇格はない、ということが普通にあります。要するに、やっているゲームが全く異なるのです。
やはり重要な意思決定をやらざるを得ない環境に身を置くチャンスは、スタートアップ企業のほうがたくさんあります。
スタートアップ企業の働き方に合っている人の特徴
仕事に対する思いに燃えてスタートアップ企業に転職した人たちはその後、ハッピーになっているのかどうか。これはケースバイケースで、「スタートアップ企業に行って本当によかった」という人もいれば、転職して大企業に戻る人もいます。
では、ハッピーになれるかどうかの違いはどこにあるのかといえば、その人のパーソナリティが大きいと考えています。スタートアップ企業の特徴はスピード感が速く、指示や方針は朝令暮改でコロコロ変わり、同僚もどんどん入社してはどんどん抜けていきます。非常に不確実性が高いカオスな環境といえます。
この環境に相性が合う人は「行ってよかった」と感じ、逆に社員が定着しなかったり、決まったことが頻繁に変わったりする不確実性が苦手な人は、「大企業のほうがよかった」と感じるでしょう。つまり、能力というよりパーソナリティの問題が大きいのです。
組織の状況も、スタートアップ企業は大きな組織よりダイレクトに体感することが多いと思います。うまくいっている時は高揚感があってよいですが、うまくいかなくなるとその連鎖が強まり、プレッシャーやストレスがのしかかってきやすくなります。
そのプレッシャーを「こんなものだろう」と受け入れられる人と、「うまくいかないことが増えたし、組織の雰囲気も悪くなったし……」とストレスを感じてしまう人では当然、前者のほうがスタートアップ企業に向いています。
逆境に直面したとき、「どうしよう」とうろたえるのではなく「むしろピンチを乗り越えてこそ面白い」と前向きになれるかどうか。逆境のときにいろいろもがき、最終的にクリアしていくことに面白さを感じる人はいるので、そこにスタートアップ企業の向き・不向きの境目があると思います。
意識の高い仲間と新しいチャレンジをしたいか?
逆に、スタートアップ企業で生き生きと活躍するタイプの人は、大手企業の組織がストレスフルに感じるかもしれません。
「今すぐやりたいことがあるのに、社内調整にもの凄く工数がかかって始めるまでに時間が経ってしまう」
「スタートアップ企業なら1日で判断されるようなことが、承認を得るまでに2週間かかる」
つまり、スタートアップ企業の不確実性や安定性のなさにストレスを感じる人とは別のところでストレスを感じるわけです。スピード感のなさにストレスを感じて、スタートアップ企業を辞める人はあまり見かけません。
結局、スタートアップ企業と大企業ではそれぞれ組織の特性があるので、それに自分が向いているかどうかはよく考えておくべきです。
別の観点として、スタートアップ企業で働く魅力としてはその会社のミッションやビジョンに共感した意識の高い人が集まっている点があります。「ビジョンを実現するために自分が何とかするんだ」といった気持ちで働いている人が多く、その人たちがスピード感も裁量性も高い環境で働いています。
一方、大企業は人材の平均的な水準は高いですが、めちゃくちゃ飛び抜けて優秀な人の出現率はそこまで高くはありません。もちろん大企業には日本のトップ層が集まっているのでもの凄く飛び抜けた人はいるものの、組織が大きく人数がたくさんいるので出現率でみると高くはない、ということになります。
したがって、意識の高い優秀な人と新しいチャレンジをしたい、世の中を変えるような仕事をしたいという気持ちの強い人は、スタートアップ企業が向いています。大企業のよさとして規模の大きなビジネスをできる魅力がありますが、新しいチャレンジをしたいという場合、「ある程度出世してからやってください」という話になってしまうからです。
担当コンサルタント:入江 祥之・工藤 直亮・山本 航
(2024年7月22日)
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