私はIT ・コンサルティング業界のクライアント企業を多く担当していることもあり、よくその分野の方にお会いします。その中でも、SEからコンサルタントへの転職を希望される方とお話していると、イメージだけが先行してしまっていて、コンサルタントの業務がどのようなものであるかをしっかりと理解されていない方が意外と多いことに驚きます。今回は、コンサルタント職を例にとってお話させていただきます。
面接の結果がNGだった際に、下記のようなフィードバックを企業から頂くことがあります。
「良い方なのだけれど、良くも悪くもシステム開発の方なんだよね」
SEとして顧客との折衝から、顧客、協力会社を含めたプロジェクトマネジメントまでしっかりと行なっていて非常に優秀だけど、考え方がマッチしない。特に30代に入ると、ここを修正するのが難しいという判断をされるケースが多いようです。
「コンサルタントの業務を、いまひとつ理解できてないのかな?」
SEの仕事は、システムを構築することです。いかに質を上げて良いシステムを構築するか、いかに納期通りにクライアントの要望に沿ったシステムを作り上げるか、といったことが求められます。プロセスの過程でクライアントへの提案もありますが、問題、課題は明確になっており、解決のための目的や手段であるシステム構築という枠の中での業務となります。
一方、コンサルタントの仕事はクライアントの問題、課題を解決することになります。潜在している問題、課題を明確にするところから、解決のための手段をはじめ、ゼロベースで自ら考えて実行しなくてはなりません。
顕在した問題、課題を解決するための提案、実行を行なうSEと、潜在化している問題、課題を見つけて解決手法までを含めた提案、実行を行なうコンサルタント。
日常の業務から「何故このようなシステムを作るのだろう」「もっとクライアントにとってよいシステムがあるはず」といった思いを持ち、より良い提案を行ないたいといった理由からコンサルタントを目指しているSEの方も少なくないと思います。もちろん、この考え方は間違っていませんが、コンサルタントの仕事は「もっとよいシステムの提案」ではなく、もっと前の段階にあるのです。
このように、延長線上にあると思っている業務でも、キャリアチェンジといった側面が含まれます。この違いを理解しないまま面接に臨んでしまうと、冒頭に挙げたような面接結果となってしまいます。
違いを理解した上でコンサルタントを目指すのであれば、仕事の取り組み方も変わるのではないでしょうか。
たとえば、担当している業務が全体のプロジェクトでどのような役割を担っているのかなど、業務の全体像を把握するように意識する。現状の開発業務だけでなく、担当しているクライアントや在職中の企業における問題、課題点を考え、その解決策を考え行動する。「木を見て森を見る」というように、全体を俯瞰して物事を捉えるように意識して日々の業務に取り組む。こうした行動や意識を普段から持つことにより、SEとコンサルタントの違いを埋めていくポテンシャルになります。
もちろん、SEとコンサルタントは延長線上にあることも確かです。特に、経営とITが切り離せなくなった現在、SEとしての経験がコンサルタントとして役立つ面が多々あります。システムを理解した上での提案は、ITによる問題解決をより現実的なものにします。また、以前にコラムでお伝えした「論理的思考力」「段取り力」「胆力」をはじめ、ビジネススキルとしても貢献できるものは多くあります。
こうして業務の本質を理解することは、自分の強みや特性を知るだけでなく、日々の業務の取り組み方をも変えていきます。
(2012年9月5日)
今回の教訓&アドバイス
イメージではなく、業務の本質をしっかり理解する。
SEとしての経験はコンサルタントとしてもしっかり活かせる。
経験を活かすことができるかどうかは、日々の業務の取り組み方で決まる。
半藤 剛
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