昨今景況感から先が見えずに不安を感じていらっしゃる求職者が増えていて、転職のご相談時に、『安定した企業』という希望条件を挙げられる方が多くいらっしゃいます。そこで、今回は『安定したキャリア』というテーマについてお話します。
先日某大手外資系IT企業の採用担当者と話をしていたところ、「今後、日本人は大丈夫ですかね・・。」と嘆いていらっしゃいました。少し詳しく聞いてみると、「最近転職先を選ぶ際に、安定した会社が良いと考える人が本当に多いのです。今は韓国メーカーが日本の主戦場であるテレビ市場に参入する時代なのに、最近の日本人は英語に自信がないであったり、定着率が高くなさそうなので不安です、といった求職者が非常に多い」とのことでした。
私も振り返ってみると、ここ数年、外国籍の求職者とお会いする機会も多いのですが、外国籍の方に『安定した会社に行きたい』と言われた事は記憶にありません。外国籍の方の傾向は単純明快で、年収を上げたい、キャリアアップしたいという方ばかりです。日本は少し前まで年功序列で終身雇用が前提という会社が多かったこともあり、海外とは文化が異なるのかもしれませんが、外国籍の方と比較すると日本人は草食系が多いのではないかと感じます。
ここで『安定したキャリア』について考えてみたいと思います。たしかに一般的には外資系より日系、中小企業よりは大企業の方が定着率は高いかもしれません。ただ、リーマンショック以降は東証一部上場企業でも上場廃止になったり、大規模なリストラを実施する事も珍しくありません。
また、大手企業で15年、20年と1社で長くキャリアを積まれた方が急遽転職活動をしないといけない状況になり、実際活動を始めてみると、仕事のやり方が染み付いてしまって転職先で適応できないのではないか、業務経験がニッチでなかなかこれまでのキャリアを活かせる場所がないという理由などで、転職活動が非常に難航するケースがあります。
このように考えてみると、現職に限らず、どこに行っても通用する経験、スキルを身につけておくことがもっとも安定したキャリアに繋がるのではないかと思われます。分かりやすい例で言うと、最近ですと、海外事業の立ち上げ、IFRS対応、スマートフォン、クラウド、電子書籍などのキーワードに関連するキャリアを積んでいる方はマーケットバリューが高いです。
このように、世の中のトレンドに応じて自ら新しい仕事にチャレンジしていると安定したキャリアを築きやすいと思います。あるいは、新しい事でなくても、常に問題意識を高く持って、日々業務改革や仕事に工夫を凝らして成果を残されてきた方などもキャリア採用の選考では高い評価を得られやすいです。
グローバルで垣根のなくなった今、新興国には安価な人的リソースが溢れていて、今後益々アジアを中心に外国籍の方が日本企業に就業する機会も増えてくるかと思います。グローバル展開している企業の中では新卒社員の半数以上を海外で採用する会社も出てきています。このような時代の中では大手企業にいるから安心という常識は少しずつ薄れていくのではないでしょうか。
もちろん既に意識の高い方は沢山いらっしゃいますが、日本の企業が今後もグローバル市場で勝ち抜いていくために、また日本人が安定したキャリアを築いていくためには、日本人全体の意識レベルを少しずつ変えていかないといけないのではと感じます。
このような事を書いている私自身も、弊社で昨年中国籍の社員が二名入ったのですが、この二人の貪欲さ、成長スピードの早さに日々刺激を受けております(笑)。
(2013年1月5日)
今回の教訓&アドバイス
どこでも通用するスキルを身につけておくことがキャリアの安定に繋がる。
時代の流れでキャリアの市場価値は変わってくる。
自分のキャリアの市場価値を意識して仕事することが大事。
入江 祥之
【 CxO専門チーム / ポストコンサルタント専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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