若手採用やキャリアチェンジ採用によく出てくる言葉にポテンシャルがあります。人柄や向上心、マインドなど抽象的な基準が多いのですが、現職の実績や仕事振りも重要なポイントです。今回は、そんなポテンシャルにまつわるお話です。
Aさんは大学時代に広告代理店への就職を強く希望して就職活動を行っていましたが、残念ながら失敗。グループ内に広告事業を行うC社を持つ、大手サービス業のB社に入社。B社で現場の経験をした後にC社へ進むことも十分可能ということで、滑り止めとして受けていた企業です。入社して2年目が終わろうとした頃、入社時と話が違うということで転職を決意し、既にいくつかの企業への応募が進んでいる状態で当社に相談にいらっしゃいました。
「現場を経験したらグループ会社へ行けるということで入社したのですが、いつまで経っても異動することができず、社内での異動はもう無理だと思い転職することにしました。」
Aさんは社内公募はもちろん、ことあるごとに異動の希望を上司に伝えたそうですが、なかなか希望が通らず、モチベーションが下がる中、ある紹介会社から異業種への転職は早い方が良いと聞き、早々に転職を決意したようです。そこで実際にAさんのご経験を伺うと、結果はそこそこ出しているものの仕事に対しての前向きさが今ひとつ足りないように感じました。
既に応募している企業は、書類選考を通過したものもあるようですが面接でNG。
「紹介会社からは、企業は人物面とポテンシャルを重視してくるので、そこを上手くアピールするようにアドバイスされていたため、やる気を全面にだしているのですがどうも結果がついてこないんです。」
Aさんは、経験はないがすぐに適応できるという印象を持ってもらえるよう、積極性を一番に面接に臨んでいたようです。
「確かに、ポテンシャルの評価は重要なポイントです。ただ、企業がポテンシャルを判断するポイントはもっと違うところにあると思いますよ。」
「違うというと?」
「これはキャリアチェンジに限ったことではないですが、やる気があるのは当り前です。それよりも、すぐに適応できる能力があると判断できる根拠を見出せるかどうかだと思います。」
「でも、能力があるかどうかは実際に会社に入って働いてみないとわからないですよね。どうやって見分けるのですか?」
「優秀な方や能力がある方は、どんな仕事であれ結果を残すことができると企業は考えています。また、実績と同じように仕事への取り組み方をとても重視します。どのように取り組み、どれだけの実績を出しているかという点から、自社でも活躍してもらえるポテンシャルがあるかどうかを判断するのです。」
もちろん、それだけではなくいろいろな視点で判断されます。熱意や意欲も大切です。ただ、どのように仕事をしてきたのかが具体的に語れないと、単に「はったり」という印象しか与えない危険性もあります。
「失礼ですが先ほどAさんのご経歴をお伺いした際に、仕事への取り組み方に積極性や主体性が感じられませんでした。この辺が問題のような気がするのですが…。」しばらく思いつめた顔をしてから、Aさんが口を開きました。
「なるほど…。そうかもしれませんね。実は上司にも似たようなことを言われたことがあります。広告希望の熱意はわかるけど、もっと今の仕事で経験を積まなければ推薦できないと。そのときは適当に流されていると思ったのですが、仕事への前向きさが足りなかったのかもしれません。」
その後、Aさんはもう一度今の会社に残るという選択をしました。もちろん、広告事業への思いはまったく薄れていません。ただ、今の会社での異動と転職の両方をふまえ、改めて今の仕事に真剣に取り組もうという結論になったようです。まだ若いので、この先も転職の可能性は十分あります。今やるべきことを見つけ、目標に向け頑張って欲しいと思います。
(2012年3月20日)
今回の教訓&アドバイス
優秀な方はどんな仕事でも実績を出せる→自社でも実績がだせる優秀な人材
本気で仕事に取り組んでいること→自社でも本気で仕事に取り組める人材
裏付けの無い自信は過信。「はったり」は見破られます
半藤 剛
【 デジタルプロフェッショナル専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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