企業が面接で評価するポイントはいくつかありますが、ポテンシャルもそのひとつ。よく言われているのがコミュニケーション力、地頭の良さなどですが、業務に対する姿勢や意識も判断基準のひとつなのです。これまでの業務に対してどのような姿勢で取り組んできたか、将来の目標に向けてどのような意識を持って業務に取り組んでいるか。今回はIT業界でのケースを例に、お話させていただきます。
転職理由を伺うと、「今の仕事はやりたいことではない」「このままだと必要なスキルが身につかない」「コンサルティングがやりたかったが、システム開発しかできない」「ポテンシャルを見てもらえるうちに転職したい」など。このような答えをお聞きすることが結構あります。特に若い方から聞くことが多いのですが、とても気になります。
今後どのようなキャリアを目指すにしろ、これまでの実務経験がベースになることは間違いありません。たしかに不安な気持ちはわかるのですが、不満が先行しすぎているような気がします。もっと、足元をしっかりと見ることが大切なのではないでしょうか。
まず確かなのは、今やっていることは決して無駄にはならないということ。現職の経験は、今後も必ず活きるということです。同じ仕事をしていても、意識や取り組む姿勢からいろいろなことを身につけていけます。
例えばSEの方。開発経験を通じてしっかりと身に付けておくべきスキルが大きく3つあります。
(1)論理的思考力
プログラミングを1つ間違えれば、システムはきちんと動きません。正確なプログラミングは、論理的思考力がなくてはできません。設計も同様です。お客さまの要望をいかにシステムに落とし込むか。ロジカルな考え方が要求されます。
(2)段取り力
クライアントや協力会社との折衝など、プロジェクトを進めていくうえで様々な調整が必要。物事を効率的に進めていく力が身に付きます。また、ルーティンな業務も工夫1つで改善できます。常に考えながら仕事をしていくことで、プロジェクトや業務をスムーズに進めていく仕切りができるようになります。
(3)胆力
システム構築に携わる以上、必ずいろいろなトラブルに直面することがあります。それを乗り越えることによって物事に動じずに取り組めるようになります。どんな仕事でも、ストレスのかからない仕事はありません。そのため精神的な強さは仕事をする上でとても重要な資質であり、経験することによって強化されるのです。
このようにシステム開発ひとつとっても、単にテクニカルなスキルだけでなく、物事の考え方や仕事の進め方、人間的強さなど、業務を通じて身につけていけることは多くあります。これはSE だけでなく、どんな仕事にとっても必要な「能力」「武器」です。しかし、認識、意識しながら取り組まないとなかなか身につかないものでもあります。そしてこのような取り組みができることが「能力」「武器」であり、まさに「ポテンシャル」ではないでしょうか。
もちろん、目指すキャリアを実現できる環境とできない環境があります。将来を意識しながら、チャレンジングな環境を探すことも必要不可欠。環境というのはとても重要です。ただ、やりたいことは環境を変えることだけでなく、その環境をどのように利用するかも含めて実現可能になるのです。そして環境を利用するために、この「ポテンシャル」が必要なのです。
ポテンシャルというのは、とてもあいまいな言葉です。それ故に、しっかりと印象付けるためには根拠が必要。まずは今の仕事をとことんやってみる。「今の仕事はやりたい内容とは違う」と否定するのではなく、現状の業務に正面から向き合い、真剣に取り組む。そして、本当は何がやりたいのかという目的意識をしっかりと持ち、自分を客観的に捉えながら必要な「能力」「武器」を身に付ける。面接での説得力だけでなく、自信にもつながると思います。
(2012年6月15日)
今回の教訓&アドバイス
業務に対する意識、姿勢はポテンシャルを判断する重要な要素。
仕事への意識、姿勢によって身につくスキルは大きく変わる。
業務にしっかり向き合うことにより、経験は必ず今後に活きる。
半藤 剛
【 デジタルプロフェッショナル専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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