プライドという言葉について、皆さんはどんな印象をお持ちでしょうか?
「プライドが高い」「プライドが邪魔している」といったようにネガティブな要素を持って使われることも多々あります。一方で、プライドは仕事をしていく上で、また生きていく上でも重要なものであることは間違いありません。
ある意味で自分自身を支えている基盤であったり、原動力であったり。今回は、そんなプライドにまつわる話です。 34歳のAさんは新卒で大手商社に入社。4年前にベンチャー企業へ転職しました。
現在は、ひとつの事業部を責任者として統括しています。ゼロから事業部を立ち上げ、その後業績も好調。担当している事業も安定してまわるようになったので、新しいチャレンジの機会を求めて相談にいらっしゃいました。とても礼儀正しい、誠実な方だと感じました。
「実はずっと転職したいと思っていましたが、決心がつきませんでした。ここに来てようやく自分自身の中でもけじめがつき、今が転職するタイミングだと思ったのです。」
Aさんは大手商社で実績を出し、自信と希望を胸に現在のベンチャー企業へ転職しました。ところが、入社してみると常識と思っていたことが社内で受け入れられなかったり、仕事の進め方がこれまでと違ったりと、かなり戸惑ったそうです。仕事内容や組織・環境など入社前に聞いていた話と違ったこともあり、正直騙されたという思いもありました。
「当時は本当に辛かったですよ。ボロボロでした。」
「なぜ、その時に転職を考えなかったのですか?」
「一言で言うと、プライドですかね。」
「このままでは終われないと?」
「それもあるかもしれませんが、少し違います。自分にプライドを持つことができなかったんだと思います。」
当時のAさんは精神的にも追い込まれ、自分を見失っていたとのこと。これが一番辛かったようです。壁にぶつかって混乱し、自信も持てない。そんな状況では、きっと転職しても上手く行かないとAさんは考えました。そこでAさんは自分自身と徹底的に向き合い、自分の能力や限界、性格、モチベーションなどを客観的に知る努力をし、ありのままの自分を受け入れることからはじめました。そして目標を達成するためには何をすべきかを整理し、ひとつずつ実行していきました。やがて結果や実績を残すことで自信と誇りを取り戻し、今の自分に納得することができたので転職を決意したのでした。
「今考えると、20代の頃は根拠のない自信でがむしゃらに走ってきたと思います。生意気だったかもしれませんが、それはそれで良かったと思います。ただ、自分にとって当時のプライドと今のプライドでは、まったく意味合いが違うのです。
根拠の伴った揺るがない自信があってこそ、はじめて誇りを持てるようになりました。言い換えれば、より確かな等身大のプライドが持てるようになったというところでしょうか。今だから言えるのでしょうが、初めは挫折を味わった前回の転職も、結果としては良い経験だったと思います。」
Aさんは壁にぶつかり、自分と正面から向き合った結果、より確かなプライドを持てるようになったと話してくれました。目の前のAさんは、芯の強さを感じさせました。しかし、プライドが高いといったネガティブな印象は全くなく、むしろ好印象を与えるものでした。これはAさんが自分を客観的に理解し、根拠のある自信と誇りを持っているからだと思います。 人それぞれ形は違っても、プライドは誰もが持っているものです。まさに、人の根幹にあるものだといえるでしょう。
このプライドをどうコントロールするかにより、ポジティブにもネガティブにも作用するのではないでしょうか。ポジティブに活かすことができれば、大きなパワーを生み出せます。折に触れて自分と向き合い、プライドと実力とのバランスを確認することが大切です。私も、自分を見つめなおす時間を定期的に持ちたいと思いました。
(2012年8月5日)
今回の教訓&アドバイス
プライドはパワーの源になります。ポジティブに活かし有効活用を。
自分と向き合い、知ることが大切。
自信・誇りを持つためには結果、努力、周囲からの評価・認知といった根拠が必要。
半藤 剛
【 デジタルプロフェッショナル専門チーム 所属 】 プロフィールをみる
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