首位打者・打点王・ホームラン王が生え抜き
セリーグは、2年連続の最下位であったスワローズが優勝。ペナントレース終盤での粘り勝ちでしたね。FAで即戦力のエースを獲得したとか、大リーグからホームランバッターがやってきたというチームではなく、前年とあまり変わらないメンバーでの優勝。しかも首位打者・打点王・ホームラン王を揃えての優勝は堂々たるものでした。
誰が、彼らを育てたのか
もともと、今年就任した真中監督が打撃コーチでしたから、真中監督に注目が集まっていますが、実は、現打撃コーチの杉村繁コーチがすごいと聞きます。選手時代の成績はそれほど目立たないものだったようですが、杉村氏の指導法が独特。ティーバッティングやトスの活用の仕方がかなり研究されていて、選手によって様々な方法を取り入れているようです。
力は「情熱×能力×考え方」。能力は買えても、情熱とノウハウは買えない
お金を出して、海外や他球団からスター選手を集める。ビジネスの世界ではヘッドハンティングや中途採用がそれにあたると言えます。組織の力をあげるためには有効な手法であり、「金で選手を買う」という非難は不適切かと思います。
しかし、実際のパフォーマンスは、「情熱×能力×考え方」の掛け合わせで出るものです。能力のある人材の獲得には、それに見合った報酬やポジションは必要ですが、いかにして情熱を湧きたてるのか、いかにして力を引きのばすかは別です。採用投資がすなわち業績結果に結び付かない事は、ビジネスの世界でもありえることなのです。
以前のチームでは活躍できたのに
前のチームで活躍していたスター選手も、行った先でのチームメイトと馴染めず、情熱をあげられない可能性もあります。前職よりも高い報酬や周囲の期待に押しつぶされるかもしれません。「前の会社では、こうだった」という発言が、決して歓迎されない事もありますし、違う文化やルールに戸惑うジレンマもあります。
「育成する力」
個人の成長に対するコーチの役割は本来大きいものです。スワローズでプロパー選手が伸びたとするならば、マネジメントにこそ躍進のキーがあったのではないでしょうか。信頼できるコーチの存在は、重要なファクターであり、プロ野球ではそこが軽視されてきた傾向があったのかもしれません。
だとすれば、育った選手を引き抜くよりも、育てた杉村コーチを引き抜くほうがチーム力は上がるのかもしれません。個の力を引き上げるコーチのケーパビリティは重要であり、それは企業の採用においても同様です。いかに売れる営業マンを採用するのか、いかに売れる営業マンを育てる力を持つ人材を採用するのか。育成する技術力をもっと評価すべきでしょう。
私がヘッドハンティングをする際は、転職する本人の力だけでなく、彼が組織に加わることでの化学反応まで想像します。単なる欠員補充ではないのです。新卒・年功序列の経験が長いと、なかなかここがわからないのかもしれませんが、組織の中で、どうシナジーを生むのかを想定して、提案をしています。今、必要な人材は目先の数字をあげている人材とは限らないもの。経営者は視座をあげて、チーム編成をしていかねばならない時代なのです。
丸山貴宏
大手就職情報会社の人事採用担当を約7年経験後、クライス&カンパニーを設立。前職からの候補者面談者数は10,000名を超え、その経験と実績に基づいたカウンセリングは業界でも注目されている。単に企業情報の提供に留まらず、「候補者の根っこのエネルギーを発掘する作業が我々の使命」がモットー。 1963年生まれ。
- 著書
- 「そのひと言で 面接官に嫌われます」 / 青春出版社 2014年5月9日発売
「キャリアコンサルティング」 / 翔泳社 - 共著
- 「転職後、最初の1年にやるべきこと」 / 電子書籍(Kindle版)
- 連載コラム
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