♯02 コンサルティングファームの採用面接で意識すべきことは?
株式会社クライス&カンパニー アドバイザー 安間裕 氏
DXインタビュー
2024 Nov 27
コンサルティングファームに転身し、大きくキャリアアップするためにはどうすればよいのか?過去、ITコンサルティングファームの経営に携わって業界で名を馳せ、現在、クライス&カンパニーのアドバイザーを務める安間裕氏に、コンサルタントへの転職成功のポイントを伺いました。
Profile
アバナードに入社する前は、国内ITコンサルティングファームの経営に従事し、その前にはアクセンチュアにおいてアウトソーシング、BPO (ビジネス プロセス アウトソーシング) の責任者を務める。また、アクセンチュアテクノロジーソリューションズ株式会社の設立に携わり、同社代表取締役を7年間務める。2014年5月からアバナード株式会社の代表取締役を務めた後、同社会長に就任。2023年退任。明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。
- Contents
- 自分の内にある、コンサルタントに必要な3要素をきちんと言語化し、それを明瞭に伝えるべき。
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論理的なコミュニケーション力はもちろん、
好感を持たれる身だしなみも実は重要。 -
チームメンバーにとっても、お客様にとっても
「一緒に仕事がしたい」と思える人材かどうか。
自分の内にある、コンサルタントに必要な3要素をきちんと言語化し、それを明瞭に伝えるべき。
―では次に、コンサルティングファームでの面接時に留意すべきポイントについておうかがいします。面接にはどのような姿勢で臨めばよいのでしょうか。
まず事前の準備として、前回お話しした「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」の3つの側面から、自分がどのような成果を上げてきたのかをきちんと言語化しておくことが大切です。そして面接の場では、その言語化した内容を相手に対して明瞭に伝えなければなりません。その際、面接官がどんな視点で候補者を見ているのか、実情を理解しておくと良いかと思います。
―コンサルティングファームの面接官は、実際にどのような観点で候補者の方を判断しているのですか。
おそらくどのコンサルティングファームもそうだと思うのですが、一次はマネージャー、最終はMDクラスの人間が面接官を務め、採用に責任を負うんですね。自分が採用を決めた人材を戦力化させることが義務づけられていて、もしアベイラブルな期間が続くようであれば、そのMDの評価に影響が出る。ですから面接にあたるMDは、目の前にいる人材が入社後に活躍できるかどうかをリアルにイメージするのです。
アサインされたプロジェクトで活躍してくれれば問題ないものの、万が一、期待したほどではないという評判が立ってしまうと、採用した自分に責任があるので、手持ちのプロジェクトで面倒を見て戦力にしていなければならない。
面接時にそこまで想定していて、自分が抱えるプロジェクトのどのポジションなら使えそうかを考えるんですね。「ビジネスオペレーター」としての資質が高いようであれば、あのチームのリーダーに就かせて顧客折衝をやってもらおうとか、「バリュークリエイター」として専門性を発揮できる分野があれば、あのプロジェクトにSME(Subject Matter Expert)として入ってもらおうとか、いろいろと考えを巡らしますが、その前提として必須なのはコミュニケーション能力。
コンサルティングビジネスも客商売なので、お客様に対して自社の価値を認めてもらう力が必要です。論理的なコミュニケーションが何よりも要求される職種であり、それは面接の場でのやりとりにも表れる。ですから、面接で何をアピールするかという内容はもちろん、それがしっかりと言葉になって伝わっているかどうかも非常に重要視しています。
―面接時から、候補者の入社後のパフォーマンスをしっかりとイメージされているのですね。
かつての私もそうでしたが、そうしたスタンスで候補者と向き合っているケースは多いと思います。説得力のない話し方ならば、あのお客様の前には出せないなとか、こんなコミュニケーションでは、いまのメンバーに対するピープルデベロップメントも難しいだろうとか、結構いろんなシーンを想定しながら面接していると思いますね。
論理的なコミュニケーション力はもちろん、
好感を持たれる身だしなみも実は重要。
―コンサルタントに転職する上では、論理的なコミュニケーション能力をきちんと磨いておくことが大切なのですね。
ええ。コミュニケーション能力というのは、実はプログラミング能力とも密に絡んでいるんです。コンサルタントへの転職を志す方のなかには、SIerでエンジニアとしてキャリアを積まれている人もいらっしゃるかと思いますが、プログラムを正しく書くこともコミュニケーション能力を鍛える訓練になる。
コンピュータというのは、基本的に指示されたことしかできないマシンなので、プログラミング言語を使って明確に伝えなければ、意図したとおりに動いてくれない。主語述語がちゃんと揃っていないとコンピュータは理解してはくれないのです。
つまり、プログラミングのスキルを磨くことは、人にものを伝える言語能力を磨くということ。私はインフラの技術者でしたので、かつてはアセンブラでプログラムを必死で書いていました。アセンブラは、いま主流となっているプログラミング言語よりも複雑で、論理的な思考がいっそう求められる。プログラムを書くことが、私にとってはコミュニケーションを訓練するいい機会になったと感じています。
普段のコミュニケーションにおいても、論理的に成立している内容を自分が喋っているかどうかを、たとえば友人とのたわいのない会話でも常に考えたほうがいいと思いますね。そうした経験を重ねていくと、ロジカルなコミュニケーションが習慣となり、面接の場で何か突発的な質問をされても、論理的な応答がおのずとできるようになると思います。
ただ、先ほど「バリュークリエイター」として突出したスキルを持っていれば、その他の資質は不問になるというお話をしましたが、それは面接の場でも同様ですね。本当に高いバリューを発揮できる人材であれば、口下手でコミュニケーションに難があっても問題ない。むしろ、変に取り繕ってコミュニケーション力をアピールするよりも、潔く「私はこのバリューで勝負する」と開き直ったほうが、かえって良い印象を与えるように個人的には思います。
―そのほか、面接時に気をつけておくべきことはありますか。
これは面接時だけではなく、入社後にも求められることなのですが、身だしなみには十分に配慮すべきですね。ごく常識的なことに思えるでしょうが、初対面の相手をいかにリスペクトしているかという意思を示す上で、見た目というのは実は非常に大切。
これは入社後、お客様に相対する時も同様で、不快感を与えるような身なりだと、いくら正しいことを訴えても生理的に拒絶されてしまう恐れがある。かっこいい必要はありません。不快感を与えない身だしなみを常に整えておくことも、コンサルタントにとって重要なマナーのひとつです。
また、面接で話すスピードも速すぎないほうがいいですね。頭が切れる方によく見られる傾向ですが、自分の考えをマシンガンのように喋り続け、付け入る隙を与えないようでは相手の意見を聞こうというリスペクトが感じられない。
コンサルタントの仕事は、お客様が欲していることを正しく理解し、それに応えていかなければならないため、聞き上手であることも大切。相手とコミュニケーションする上での対話のリズムなども、面接でチェックされていると意識しておいてください。
チームメンバーにとっても、お客様にとっても
「一緒に仕事がしたい」と思える人材かどうか。
―安間さんがかつてコンサルティングファームを率いられていた時、コンサルタントを採用する上で重視していたことがあれば教えてください。
「この人と一緒に働きたい」と思えることですね。私の場合、能力よりも人柄を重んじていて、いくら素晴らしいバリューを持っていても、お互いを尊敬尊重できない人とは一緒に仕事をしたくない。お客様が受ける印象も良くないと思うんです。
ちなみに私がコンサルタント時代に必ず実行していたのは、お客様先にプレゼンで訪れた際、先方がどんな立場の方であろうと、その場にいらっしゃったら起立して元気に挨拶すること。そのプレゼンのコンペで競合と拮抗し、もし提案内容にそれほど差がなければ、お客様は「一緒に仕事をしてもいい」と思えるチームを選ぶでしょう。だから、人間的に魅力のあるチームを作ることを努めていました。
かつて企業の経営に携わっていた時は主に最終面接を担当していましたが、その場に上がってくる候補者の方々の能力は、すでにマネージャークラスがしっかりとチェックしているので、私は、お互いを尊敬尊重できる人なのか、仲間になって欲しいと思える人なのかを判断することに注力をしていました。
―先ほど「バリュークリエイター」として尖った人材は、従来のコンサルタントの採用基準が当てはまらないというお話がありましたが、そうした方々も同様な資質が求められるのでしょうか。
「バリュークリエイター」としてプロジェクトに大いに貢献できる人材は、テクニカルアーキテクトやSMEとしていろんなプロジェクトに関わり、主に技術的な問題を解決していくことになるでしょうから、お客様と直に接する機会はそれほどない。チームメンバーとともにお客様の前に出る場面もあるものの、お客様への説明などはリーダーが担うので、彼に託されるのは、お客様とのリレーションビルディングではなく、提供するソリューションに磨きをかけること。
その本来の使命を果たせる人材であれば採用される可能性は大いにあるでしょう。
ただし、仲間であることに変わりはないので、身だしなみを整え、お互いを尊敬尊重できる人であることは、同様に大切だと思います。
構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。
この記事を書いたのは・・・
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