♯03 コンサルタントとして活躍するためには?

株式会社クライス&カンパニー アドバイザー 安間裕 氏

DXインタビュー

2024 Dec 11

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コンサルティングファームに転身し、大きくキャリアアップするためにはどうすればよいのか?過去、ITコンサルティングファームの経営に携わって業界で名を馳せ、現在、クライス&カンパニーのアドバイザーを務める安間裕氏に、コンサルタントへの転職成功のポイントを伺いました。

Profile

アバナードに入社する前は、国内ITコンサルティングファームの経営に従事し、その前にはアクセンチュアにおいてアウトソーシング、BPO (ビジネス プロセス アウトソーシング) の責任者を務める。また、アクセンチュアテクノロジーソリューションズ株式会社の設立に携わり、同社代表取締役を7年間務める。2014年5月からアバナード株式会社の代表取締役を務めた後、同社会長に就任。2023年退任。明治大学文学部文学科フランス文学専攻卒。

Contents
能力はもとより「いい人」であることも大切。
特に「ピープルデベロッパー」の成果が重んじられる。
期待に応えるバリューを提供する、そのプレッシャーに
打ち勝つには勉強し続けるよりほかはない。
ヒトやカネをマネジメントする内向きの仕事も、
将来の自分のキャリアのために大いに楽しむべき。
能力はもとより「いい人」であることも大切。<br>特に「ピープルデベロッパー」の成果が重んじられる。 画像

能力はもとより「いい人」であることも大切。
特に「ピープルデベロッパー」の成果が重んじられる。

―コンサルティングファームに転職後、社内で評価されてキャリアアップするために求められることは何でしょうか。

まず、コンサルティングファームではどのように人事評価が行われているのか、その内情をお話しします。

これはおそらくどのファームでも共通していると思いますが、基本的にプロジェクトごとにメンバーをラダリングして相対評価を行うんですね。

突出した専門性を持つ人材以外は「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」の3軸で評価されるので、それぞれを加味してトップ評価は誰、2番目は誰……という順番をつけていく。一方、昇格枠や昇給原資は決まっているので、すべてのプロジェクトを横断して、誰を昇格させ、誰を昇給させるか、ラダリングされた結果を付き合わせながら評価会議で議論するのです。

コンサルティングファームは人材が命なので、評価会議にかけるパワーは並々ならぬものがあり、かつてはいったん会議が始まると、全員が納得するまで徹夜も辞さないような状況でした。そこで、評価が同じようなレベルの人材のなかから昇格者を決めなければならない時は、出席者がそれぞれ相応しいと思うメンバーを推すわけです。能力がだいたい同じならば、推されるかどうかは人間性にかかっている。

前回、コンサルタントの採用基準として「この人と一緒に働きたい」と思えるかどうかという話をしましたが、それは評価の場においても同じ。わかりやすくいえば、お客様やメンバーから慕われる「いい人」であることが重んじられるんですね。

―コンサルタントは、能力さえ高ければ評価されるイメージがありましたが、実は人間性も重要なのですね。

そう。いろんな意味で「いい人」のほうがコンサルティングファームで成功できる可能性は大きいと思います。

どんな立場の人の意見であろうが尊重できる方でないと、良い議論は出来ないし、結果としてプロジェクトの成功もない。
専門性が分化している今は、より一層、個人の力よりもチームの力が重要です。

従って、プロジェクトのメンバーから信頼され尊敬されることが重視されており、360度評価で部下からネガティブな声が寄せられれば、非常に大きなマイナスになる。これは「ピープルデベロッパー」としてチームにいかに貢献しているかを示すものであり、その評価は一朝一夕には得られません。

定期的に配下のメンバーと面談し、一人一人が抱える悩みに向きあってカウンセリングし、モチベーションを高めて成長を促していくことが求められる。「ビジネスオペレーター」や「バリュークリエイター」としての実績は、ビジネスに直結しているのでおのずと上がっていくものですが、「ピープルデベロッパー」は意識して継続的に取り組まないと成果は生まれません。

コンサルタントとしていかに優秀であっても、この「ピープルデベロッパー」の評価が足りないために昇格を逃すようなケースも多々目の当たりにしてきましたし、これからコンサルティングファームに参画する方も、この点に留意しておいたほうがいいと思いますね。

期待に応えるバリューを提供する、そのプレッシャーに <br>打ち勝つには勉強し続けるよりほかはない。 画像

期待に応えるバリューを提供する、そのプレッシャーに
打ち勝つには勉強し続けるよりほかはない。

―コンサルタントはお客様からの期待も高く、その要求レベルに応え続けるのは大変なプレッシャーがあるかと思います。どうすればそれを克服できるのでしょうか。

確かに、コンサルティングファームはお客様から高いフィーをいただいているので、相応のバリューを提供しなければならず、それはコンサルタントに課せられた宿命だと思います。そうした状況下で、提供できるバリューに自信のないコンサルタントが取りがちな行動が、時間を価値に変えようとすること。要は、他人より長時間働くことで何とか価値を出そうとするのですが、それは絶対にやるべきではない。

まだキャリアの浅いコンサルタントがいくら時間を費やしても、発揮できるバリューには限界がある。どうせ時間を使うのならば、自分を磨くことに費やすべき。コンサルタントの本来の役割は、お客様の相談相手になることです。

お客様が真っ先に相談したくなるような存在になるためには、先方が知らないことを教えて差し上げたり、先方ができないことをかなえて差し上げなければならない。そのための知識やスキルの習得に時間を投じるべきであり、ひたすら学び続けることがプレッシャーに打ち勝ついちばんの方法だと思います。

―コンサルティングファームには優秀な人材がひしめいており、そんななかで高いパフォーマンスを上げ続けて昇進していくのも、なかなか厳しいように思います。キャリアの壁にぶつかった時にどう対処すればいいのか、何かヒントがあれば教えてください。

冒頭、コンサルティングファームを志望するにあたって、「ビジネスオペレーター」「バリュークリエイター」「ピープルデベロッパー」としての能力や実績を自問自答してほしいとお話ししましたが、入社後も絶えず自問自答し続けることが大切です。コンサルタントとしてキャリアを重ねるうちに、もしかしたら「これだけ成果を上げているのに、なぜ評価されないのか」と不満に思う瞬間が訪れるかもしれません。でもそこには確かな理由があって、きっと何かが不足している。

それを見出すためには、たとえばコンサルタントとしてこれまでしてきたこと、逆にまだできていないことを3つの軸で言語化してみるのも有効です。そして、もし可能であれば、社内で自分のライバルだと思える存在で、自分よりも評価されているコンサルタントの仕事ぶりを分析し、同じように言語化してみる。それを二、三日寝かせておいて、第三者的な視点を取り戻した後で両者を比べてみると、自分の足りないものを冷静に捉えられるはずです。

その際、絶対にしてはいけないのは、主語を自分以外の他者に据えてしまうこと。人は期せずして不利な状況に置かれると、その原因を誰かのせいにしがちです。でも、その瞬間に自分を変えるチャンスを逸することになる。常に自分を主語にして思考し、自らに足りないものを謙虚に追い続けていく。

壁や失敗は成長のチャンスです。失敗は何度してもいい。失敗を「うまくいかない方法を見つけただけ」と捉え、次の進化につなげていければ、必ずキャリアアップにつながっていくと思います。

デジタルプロフェッショナル支援チームの転職支援とは?
ヒトやカネをマネジメントする内向きの仕事も、<br>将来の自分のキャリアのために大いに楽しむべき。 画像

ヒトやカネをマネジメントする内向きの仕事も、
将来の自分のキャリアのために大いに楽しむべき。

―コンサルタントを志向される方のなかには、お客様と相対してデリバリーすることにやりがいを感じ、ずっと現場の第一線で活躍したいという方もいらっしゃいます。一方で、社内のポジションが上がると、ヒトやカネのマネジメントなどの内向きの仕事がどうしても多くなり、キャリアップしていくことに魅力を感じないという声も聞かれます。そうした意見に対して、安間さんはどのようにお考えですか。

最近はコンサルティングファームもキャリアパスが複線化しているので、ずっとデリバリーを手がけていきたいという意思をお持ちなら、それを究めることも十分に可能だと思います。

ただ、その方がコンサルティング経験をもとに将来、経営者を目指しているのであれば、内向きの業務を疎んじてはいけないと思っています。ヒトやカネのマネジメントというのは、企業を運営する上で欠かせない要素であり、それを理解せずして経営は担えない。

個人的には、やはりデリバリーがコンサルティングファームにおける最強のセリングツールであり、お客様に確かな価値を提供することがレピュテーションを高め、リピート案件を生んでいくのだと考えています。

しかし、それぞれの案件がどのぐらいの収益を上げているのかを把握し、事業の舵を取る会計業務も重要、周囲を味方につけビジネスを成功させるための社内調整も、同様に重要です。
企業を成功させるための要素を一通り理解し、経営者としての能力を身につけていくためには、自分のリソースの半分ぐらいは内向きの仕事に投じる必要がある。

コンサルティングファームも企業です。
コンサルタントとしてさまざまな能力を磨き、ゆくゆくは事業会社で経営に携わりたいというキャリアビジョンを描く方もいらっしゃいますが、内向きの仕事は、コンサルティングファームの経営をとおして企業の経営を学ぶ貴重な機会でもあるので、それを活用しない手はないと思いますね。

―自分の価値を高めるためには、人のマネジメントも避けては通れないということですね。

そうです。チームのメンバーに仕事を任せてマネジメントするのは、とても我慢のいることで、仕事ができる人であればあるほど自分でやってしまいがちです。

でもそれでは、自分がリーチできる範囲内でしか成果を出せず、自分の能力値を超えることはできない。
メンバーに任せると、こちらが委ねた範囲を超えて、目的に向かってそれぞれが知恵を絞って挑んでくれる。自分が思いもよらないアイデアを出してくれて、チームのなかに大きな化学反応が起こる。しかも、いつの間にか成長もしてくれる。
それはとてもエキサイティングなことだと思います。

任せることを学び、健全にぶつかり合える環境を作ることを学ぶ、それらもマネジメントの醍醐味のひとつです。

現時点で経営者になりたいという意思がなくても、将来興味が湧くかもしれませんし、自分のキャリアを長い時間軸で捉えれば、内向きの仕事もきっと無駄にはならない。だからコンサルタントになるからには、そこで味わえる経験を思う存分堪能していただきたいですね。

構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

この記事を書いたのは・・・

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