SGシステム株式会社
物流×ITのリーディング カンパニーを目指す SGシステムのDXとは
SGシステム株式会社 代表取締役社長 谷口友彦 氏
DXレポート
2021 Aug 25
SGシステム社は、佐川急便を中心とする総合物流企業グループであるSGホールディングスグループ(以下、SGHグループ)の「ITの統括会社」です。グループのITをリードするとともに、そこで培ったノウハウや知見を活用し、現在物流業界で起きている様々な経営課題を解決すべく、新しいソリューションの提供へ常に挑戦を続けています。勉強会では代表取締役社長の谷口氏にお越しいただき、現在高く評価されているDXの取り組みをたっぷりお伺いしました。ここでは弊社の視点でその全容をレポートさせていただきます。(以下の内容は、2021年5月勉強会実施当時の内容になります。)
Profile
SGシステム株式会社
代表取締役社長
谷口友彦 氏
SGシステム株式会社代表取締役社長。大学院修了後、2002年、フューチャーシステムコンサルティング株式会社(現フューチャー株式会社)に入社。2005年からは佐川急便の基幹システムダウンサイジングに尽力。2016年、SGシステム株式会社代表取締役社長に就任。2019年よりSGホールディングス執行役員IT戦略担当、佐川急便株式会社取締役を兼任。
1. SGホールディングス・SGシステムのDXとは
デジタル化が目的ではなく、「持続可能な社会の発展に貢献すべく、社会・顧客課題を解決すること」を目的としている。そのために持続的な競争優位性の確立にむけ「経営課題を技術力/テクノロジーで解決する」という方法で推進する。
(1)1985年~2004年 システム化によるサービスレベル強化
[経営課題]
サービスレベルの強化による、事業拡大/シェア拡大
[取り組み]
荷主のニーズに応えるべく、システム化を加速してサービスレベルを強化
(例)
- 「今どこに荷物があるのかリアルタイムで知りたい」→ お荷物問い合わせサービス
- 「商品が届いたときに代金を支払いたい」→ 代金引換サービス「e-コレクト®」
(2)2005年~2017年 共通プラットフォーム化によるITコスト削減
[経営課題]
ITベンダへの依存により増加したITコストの削減
[取り組み]
Ⅰ.メインフレームからオープンシステムへのダウンサイジングプロジェクトを遂行
<ヒト>
若手社員をプロジェクトに参画させ、社員をIT人材化することにより、開発/保守、運用を内製化
<モノ>
オープン化されたグループ共通プラットフォームにグループ各システムを整理統廃合し、レガシーシステムを撤廃
<カネ>
開発/保守、運用の内製化及び共通プラットフォーム化により、ITコストを約35%以上削減
Ⅱ. グループ共通プラットフォームへの統合により集中して蓄積された各システムのデータ(ビッグデータ)を活用/分析し、経営のデータドリブン化を推進
(例)
- 荷物1個当たりの原価管理を行い、可視化された荷物の採算性に基づき適正運賃収受に取り組むことによる安定的な事業成長への貢献。(SGHグループ営業利益 2013.3月期:310億円 ⇒ 2021.3月期:1,017億円)
(3)2018年~現在 AI等を活用した効率化/省力化
[経営課題]
EC増加等による荷物量の増加等によりビジネス拡大の機会が増加する一方、労働人口の減少が見込まれることから、業務の生産性向上を図りつつビジネスを拡大
[取り組み]
共通プラットフォーム上でAI/ロボティクス/IoTといった新技術を活用し、業務全体の効率化/省力化及びサービス強化を推進
(例)
- AIを活用した手書き伝票の入力自動化
(https://www2.sagawa-exp.co.jp/newsrelease/detail/2019/0802_1473.html) - AIを活用した伝票情報のデジタル化、ドライバーの配送ルート最適化
- ロボティクスを活用した庫内作業自動化
- TMS(Transportation Management System)プラットフォームの開発など
このように「2025年の崖」問題からは完全脱却。また、SGHグループのDXの取り組みは外部からも高い評価を受けている。経済産業省と東京証券取引所が選定する「デジタルトランスフォーメーション銘柄」において、2019年、2020年と2年連続で「DX注目企業」に選定、2021年には「DX銘柄2021」に選定されている。
2. SGホールディングス・SGシステムのDX施策
SGHグループでは、主に3つの戦略に基づいて施策を推進
【AGILE】
SGシステムのIT人材がグループ全体の各担当部門と一体となり、スピーディーに企画/開発を推進
(例)
- 営業担当×スーパープログラマーによる高速開発
- 庫内業務担当×ロボットエンジニアによる物流センター自動化
- BPO担当×AIエンジニアによる業務自動化
- 経営企画担当×データサイエンティストによるデータ分析
【BPR/SERVICE】
AI/ロボティクスといった新技術を活用し、フロント業務/バックオフィス業務の業務改革を推進
(BPR:例)伝票情報デジタル化による、配達ルートの最適化
- 佐川急便では、現状は手書き伝票が残っており、翌日の配達先情報がデータ化できていない。その為、配達順序に応じた車両への荷物の積み込みや伝票の並び替えは手作業で行われている。これには数十分の時間を要するほか、作業者の熟練度に応じて業務品質にも差が生じる
- そこでAIによる文字認識で手書き伝票をデジタル化し、配達先情報をデータ化した上で、最適な配達順序、配達ルートをAIで計算する取り組みを推進中
- 加えて、約16%と高い水準にある日本の不在再配達率への対応として、在不在/再配達希望を事前把握することにより、更に配達ルートを最適化する取り組みも推進中
- 宅配事業者として従業員や協力会社の負担を軽減することはもちろん、サービス品質やお客さまの利便性を高めることが重要と考えている
(SERVICE:例)TMS強化に向けたプラットフォーム構築
- TMS(Transportation Management System)は、SGHグループの幅広い協力会社のネットワークを活用し、お客さまのニーズに対しオーダーメイドで輸送を提供することで、お客さまのあらゆる「運ぶ」に対応するサービス
- このTMSビジネスを更に拡大すべく、TMSプラットフォームを構築中
- このTMSプラットフォームを活用し、宅配便では運べない大型/特殊貨物の輸送やJIT(Just In Time)納品、共同配送、小口チャーターサービスなど、お客さまのビジネスのあらゆる求めに応じて、お客さま固有の「物流」を総合的にプロデュースしていく
【R&D】
毎年R&D予算を確保し、AI/ロボティクス/IoT等の新技術の検証や新規開発を推進。それらの技術を活用してフロント/バックオフィス業務の抜本的な業務改革や新規サービス構築を促進
(例)
- 既存のロボティクス製品の現場業務適用検証
- 新型AGVや荷積み/荷降ろしロボットなど、まだ世の中に無いものを新規開発
- 帳票の画像文字認識や配送ルート最適化など、様々なAIの開発/検証
3. SGホールディングス・SGシステムのDX推進における要諦
《Strategy》
- SGHグループでは経営戦略とデジタル戦略が一体となって推進
- レガシーシステムの撤廃、開発/保守、運用の内製化によるITコスト低減の実現により、IT投資をランザビジネスからバリューアップに移行
- オープン化されたグループ共通プラットフォーム上で、AI/ロボティクス/IoTを活用することで、業務改革/サービス強化を推進
《Execution》
- AGILE:IT人材が現場部門と一体となり、スピーディーに企画/開発を推進
- BPR:AIやロボティクスの新技術を活用し、業務全体の生産性向上及びサービスの強化を推進
- R&D:新技術の検証/開発を行い、業務改革/サービス強化を促進
(こちらのレポート内容は、2021年5月勉強会実施当時の内容になります。)
構成:神田 昭子