Column
DX転職コラム
DXリーダーとして活躍する人に共通する「3つの素質」とは?
今回は、キャリアコンサルタントでありながら、日頃様々な企業のデジタルプロフェッショナル(CIO・CDO・DX統括責任者の方々)に直接取材してリアルなお話を記事にまとめているライターでもある私なりの視点で、
「DXをリードする人財に共通する3つの素質」
についてお伝えしたいと思います。
①「DX」「デジタル」ありきで考えず、事業戦略や顧客のペイン解決を目的に取り組んでいる
株式会社三井住友フィナンシャルグループの執行役員でありデジタル戦略部長を務めておられる白石直樹氏は、このようにおっしゃっていました。
「CEOの太田(純氏)やCDIOの谷崎(勝教氏)も常々言っているのですが、そもそもSMBCグループに「デジタル戦略」なるものは存在しないんですね。
所属する部署名にデジタル戦略というワードは入っているものの、デジタルありきで新しいビジネスを創ろうとしているわけではない。
デジタルというのは手段に過ぎず、SMBCグループが取り組んでいるのはお客様のペインポイントの解決であり、その方法がたまたまデジタルだというのが我々の認識です。」
DXレポート:金融の枠を超えてお客様に価値をもたらす、 SMBCグループのDXとは >
また、ソニーグループ株式会社の執行役員CIOであり、ソニーグローバルソリューションズ株式会社の代表取締役社長も務められている樋田真氏に、「CIOとマネージャーの違い」について伺ったところ、こんな興味深いお話をいただきました。
「CIOに求められる要件として最も重要なのは、経営トップの描く事業戦略をIT戦略にコンバートできる能力だと思います。
換言すると、自分達の考えるIT戦略が経営者の考える事業戦略と如何にマッチしているかについて、相手に伝わるプロトコルで説明できる能力ということです。
また、CIOとマネージャーとの違いという観点で言えば、CIOが事業戦略をコンバートしたIT戦略をもとに、実行推進するのがマネージャーだと考えています。
そのため、マネージャーがビジネスを理解し、オーケストレーション能力を磨いていけば、CIOになれるはずです。」
DXインタビュー:ITを軸に、オーケストレーション能力を磨く。ソニーCIOに聞く、キャリアヒストリーとDX推進の軌跡 >
②好奇心が強く、自ら積極的に新しいテクノロジーやサービスに触れてみる
東急ハンズの執行役員やメルカリCIOを歴任され、ロケスタの代表取締役社長を務めておられる長谷川秀樹氏は、デジプロ人材に求める素質として
「改革魂」
「ITに苦手意識を持たず、PaaSやSaaS等のツール群を使ってビジネスをドライブできる」
の2つを挙げられていました。
この後者の例として、こんなエピソードも語っておられます。
「僕は某社会福祉センターから飲食店チェーンへの発注システム案件の依頼を受けた際に、Shopifyに3つほどコンポーネントを追加してわずか半日程度で納品したことがあります。
従来は要件定義フェーズだけで数百万の見積が発生するような話ですが、今はPaaS、SaaSを活用してビジネスをドライブできるツールが揃っており、プログラミングしなくても容易に実現できるので、
“ITは特別な人たちがやるもの”
という苦手意識を捨てて自分事として取り組むことが大事です。」
DXインタビュー:ロケスタ 長谷川 秀樹 氏に聞く、「デジタルプロフェッショナルとして 活躍するために」 >
また、サイバーエージェントやグーグルでキャリアを積まれた後パイオニアのCDOを経て小林製薬のCDOに就任された石戸亮氏も、こんなエピソードをお話してくださいました。
「私はキャンプが好きなのですが、家具屋を営む友人が暇な時間でキャンプのギアを作るというので、私がShopifyでページを作ってECサイトを運営しています。MiroやNotionなど使いやすい新しいサービスはどんどん使います。
デジタルの世界は、士業と師業のように資格も無くても、良くも悪くもそんなに畏まらなくても日常でいくらでも触れられるんです。」
DXレポート:老舗の電機メーカー パイオニアが挑む変革とは >
③既存事業や企業が培ってきたカルチャーにリスペクトを持ち、周囲を巻き込んで行ける
青山学院大学教授であり、アバナードのデジタル最高顧問を務めておられる松永エリック・匡史氏は、“共感コミュニティ”をつくることの重要性について語られていました。
その際に過去に下記のような事例があったとお話くださっており、とても印象的でした。
・近寄りがたいイメージの社長が同期の人事部長と気さくに対談する動画を公開することで新たな一面が見えて、社員との距離が一気に近づいたケースがありました。
・年配の技術者の方は扱っていた技術も古いと敬遠されがちですが、実は豊富なスキル経験を持っています。レジェンドな人材として情報共有の場を設けて若手社員が彼らの話を聴くことで、リスペクトが生まれた事例もあります。
DXインタビュー:松永 エリック・匡史 氏に聞く、「デジタルプロフェッショナルとして活躍するために」 >
また、カインズのデジタル戦略本部本部長として小売×デジタルの融合を力強く推進されている池照直樹氏のお話からも、店舗スタッフの方々や同社の歴史に対する深いリスペクトが感じられました。
採用で求める人物像について伺った際に、こんなことをおっしゃっています。
『少数のデジタルの人間だけでは会社は良くならないので、パートやバイトの人達も巻き込む必要がありますが、
「CX」「DX」とパートの方に言っても
「私は何をすれば良いですか?」
と聞かれるだけで距離は縮まりません。
40年商売をやってきた会社のオペレーションには敬意を払うべきですし、彼らが理解できない言葉を使うのは失礼な話です。』
面接官の本音 vol.138 株式会社カインズ デジタル戦略本部本部長 池照直樹氏 >
今回は、第一線で活躍されているデジタルプロフェッショナルの方々のリアルな声をご紹介しながら「DXをリードする人財に共通する素質」について紐解いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
「DX」「デジタル」という言葉からは、今まであったレガシーなものを新しいものに置き換えていくとか、生身の人間から遠いイメージを想起しがちかと思いますが、
お話を伺った各デジタルプロフェッショナルの方々からは、むしろその対極である
人やカルチャーを愛する姿勢 と、可能性を信じるエネルギー
を共通して感じました。
それぞれ当然ながらバックグラウンドやキャラクターは異なるものの、どの方も人間的な魅力に溢れ、イキイキと楽しんでいらっしゃいます。
私たちクライス&カンパニーのデジタルプロフェッショナルチームは、このようにワクワクしながらDX推進やIT・デジタル領域で企業や事業の成長をリードしていけるようなデジタルプロフェッショナルの方々をもっともっと世の中に増やしていけるよう、日々ご支援に努めています。
この記事を読んで「自分も一歩踏み出してみたいな」と心が動いた方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
https://www.kandc.com/digital/entry/
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