Column
DX転職コラム
元同期に聞いてみた・大手SIerからスタートアップの開発責任者へのキャリア・転職【後編】
【前編】で株式会社Magic Momentで執行役員開発責任者を務める高橋宏圭さんのこれまでのキャリアについてお話しいただきましたが、【後編】ではSIerとスタートアップ企業における開発の違いやSIer出身の方の強みについてお聞きします。
ーSIerとスタートアップの開発ってどんなところが違うんですか?開発環境とか、体制とか、プロセスとか、色んなことが違いそうですよね。
SIerでは統制の効いた安心安全な開発プロセスを重視することが多いですが、スタートアップではそのようなカチッとしたプロセスを取らないのが大きな違いですね。私は野村総合研究所(NRI)でミッションクリティカルなシステムを担当してきたからこそ、いかにリスクを減らして開発するかを叩き込まれてきました。逆にそういった開発プロセスがないスタートアップのような現場では、そういった安心安全なプロセスよりもその場の状況に応じてスピード感をもって開発を進めます。このようにスタートアップの現場は臨機応変に対応する能力は高いのですが、カチッとしたプロセスを決めた経験のある人が少ないと思います。臨機応変に対応する能力は高いのですが、SIer出身者からすると、時には行き当たりばったりに見えるかもしれません。
ネットや本には抽象化された方法論しか無いので、それが何故いいのか、どういうリスクがあるのか、という勘所がどうしても得られにくいのです。自分たちが行っているリリース作業一つを取っても、ダメなことはわかっていてもそれを改善するためにどのようにプロセスとして落とし込んでいけばよいか、というノウハウが少なく改善されづらいのではないかと思います。
ーどのようなシステムを開発してきたかによって、開発プロセスもだいぶ違うんですね。
プロダクトの中にも違いは現れます。
例えば、大規模システムを開発する際はオンラインとバッチを分けて開発しますよね?また、オンラインでリクエストを受けてバッチ処理する(非同期で大量処理する)こともあると思います。
以前このオンラインとバッチの概念無く設計されていたことがあり、オンラインでリクエストを受けているKubernetesのPodと同じPodでバッチを回し続ける処理を行っていたため、処理が詰まってしまうことがありました。(今はリアーキテクトしていますが。)
また、これは仕方が無いことではあるのですが、創業期スタートアップだとどうしてもシステムが冗長化する構成になっていないため耐障害性が低いなど、リスクマネジメントの観点でも違いはあります。
ープロダクトそのものにもかなり違いがあるんですね。体制や人の面ではどうでしょうか?
体制はシンプルに若い人が多いですね。入社当初私で上から2番目でした。30歳前後で、アーリーなスタートアップ企業を回ってきた方が多かったです。最近はシリーズB調達を終えた影響か、有名企業を経たシニアな方も増えてきています。
ー出身企業によるエンジニアの方の違いなどはあるんでしょうか?
SIerとか大きめの企業から転職してこられた方は品質とかセキュリティに対して、「やりたいんだけどな」で終わらない行動規範を持っているように感じます。
スタートアップ企業出身の方はコードをいかにきれいに書くか、どのようなアーキテクチャで作るか、ということへの追求心が非常に高い印象があります。
ーMagic MomentのようなエンプラSaaSだと、顧客へ提供するサービスとしてのリスクも考慮した開発が必要になりますよね。
それはめちゃくちゃありますね。エンタープライズが求めるクオリティ、セキュリティ、安定性に足るサービスを作るために、まだまだやりたいことはあります。これを仕組み・制度として構築し、エンジニアみんなのマインドとして醸成するのが私のミッションです。
ーエンジニアのメンバーの方としてはこれまでと違うことを求められると、コンフリクトが生じることもあるんじゃないのかなと想像しますが。
それは私もかなり気にしています。よく言うチェックリストとか絶対したくないんですよね。自然に仕事している中でセキュリティが担保できているとか、人ではなく自動でチェックしてくれるとか、そういう風にしないと受け入れがたいと思います。
Magic Momentのエンジニアは「GO TRUE WAY」を根底に持っており、本質的に何が必要かを感じて動ける方々なので、私も「こうするべきだ」とNRI色に染めのではなく、一個一個顕在化しそうな課題に対してMagic Momentのカルチャーに合う形で解を提示するのが大事だと思ってやっています。
フレームワークをただ使うのではなく、何故そのフレームワークがその場で機能するのかを考えられることが非常に大事です。
ーでは次に、スタートアップの開発組織で求められるスキルについて教えてください。
一番はスピード感ですかね。また、SIerからスタートアップという観点だと、コーディングスキルも必要になります。
スタートアップではスピーディーにものを作ることが前提です。私は自分でコーディングを仕事でやることもあったのでなんとかついていけたと思っていますが、SIerの方がスタートアップに転職するとなると、ある程度コーディングできないと難しいと思います。
ただ、すごいスーパーエンジニアみたいにコーディングできないとダメかと言うと、そんなことはありません。企業によってはコーディングスキルが非常に高いソフトウェアエンジニアを求めている会社もありますが、私はコーディングそのものはめちゃくちゃ得意な訳ではなく、じっくりリファレンスを見ながらやりたいタイプなんです。
私のようなSIer出身のエンジニアの価値はジェネラリストであることだと思います。設計やコードやプロセスなど、あらゆる視点で見てリスクを洗い出して、リスクを減らすための動きができ、自分でコードを書ける。SIerのSEの方が少しコードを書けるようになるだけで、スタートアップにはあまりいない人材として非常に市場価値の高い人材になれると思います。
特にプロダクトの初期開発を終えて拡大期に入り、エンプラの顧客が増えたり、個人情報の取り扱い等何らかのレギュレーションを必要としたりするフェーズのスタートアップ企業では、そういった方々に対する需要が顕在的にも潜在的にもある可能性が高いです。スタートアップへの転職を考えられている方はそういったフェーズの企業を中心に検討してみるのもいいかもしれません。
いくら創業期の初期開発でスピード感を求められていても、最低限統制を効かせた開発を行わないとプロジェクトそのものが崩壊して、結局顧客に提供したい価値を届けることができなくなってしまいます。エンタープライズ向けのセキュリティに対する勘所が無いと、折角セールスが頑張って受注しても、すぐに解約してしまうリスクがあります。
ー最後に、これからスタートアップ企業への転職を考えている方に向けたアドバイスをお願い致します。
スタートアップに向いている人は、変化を楽しめる人です。逆に難しい人は、過去の成功体験を引きずる人だと思います。僕は過去の失敗体験を引きずるタイプなのですが、
失敗体験を引きずって凹みながらも前を向こうとあがいて糧にできる人なら大丈夫だと思います。
スタートアップは変化が激しくてアンラーニングしないといけないことが多いんです。職種が変わるならただ変化を受け入れればいいのですが、連続性のある職業をすると、過去の経験をどう活かすかということに固執しがちになります。でも、それってあまり意味が無いよなと思うんです。
本質的に何が必要かを考え、技術やスキルも含めて自分をいかに変えて、変化を恐れずに楽しむことが大事です。
ー本日は貴重なお話ありがとうございました!
~おわりに~
前後編通して、高橋さんの生の経験から得られる非常にリアルで学びの多いお話を聞かせていただきました!私が今回のインタビューで印象深かったのは以下のポイントです。
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SIerでSEをやっている方がスタートアップ企業のエンジニアを志す場合、少なくとも自分でコーディングをできるように技術力を磨いておく必要がある。ただし、現職でチャンスが無い場合はハッカソンなど、業務外の機会も活用することでチャンスを引き寄せることができる。
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SIer出身のSEの方が得意としている、統制の効いた開発プロセスを必要としているスタートアップ企業も実はある。大手企業向けのシステムを提供している企業や拡大期の企業では比較的経験を活かしやすいと思われる。
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新たな環境で働く時、これまでの成功体験を引きずらず、アンラーニングする姿勢が重要。
おそらくSIerの方からするとスタートアップ企業は未知のことも多く、敷居の高さを感じられる方も多いのではないでしょうか。
今後スタートアップに興味があり飛び込んでみたいという方は今回のお話を参考に、是非チャレンジしてみてください。
キャリアの相談はこちらからお申込みください。
https://www.kandc.com/digital/entry/
なお、高橋さんの所属するMagic Momentでは、エンジニアを積極採用中です!
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。
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(担当コンサルタント:和田智行)