Column
DX転職コラム
コンサルファームのパートナーに聞く、「営業」という壁の乗り越え方
先日、総合ファームでシニアマネージャーをされている方との面談の中で、「営業責任を求められるようになり、苦しい時間を過ごしている」というご相談をいただきました。
コンサルティングファームでは、マネージャーになるまでは、デリバリーを品質高く完遂することが求められますが、マネージャーあるいはシニアマネージャーになると(※)、営業責任を求められるようになります。
※ファームによって営業責任を求められる職位は異なります
「品質の高いデリバリーを行うスキル・能力」と「セールスをするスキル・能力」は異なるため、マネージャー以降になって急に後者を求められるコンサルタントの多くの方が苦労されていると思いますし、実際、マネージャーやシニアマネージャーの方との面談の中では、「営業責任」に関する話題がしばしば挙がります。
コンサルティングファームにおいて営業で辛い思いをされている方に対して、何かお役に立つことはできないかと考え、今回のコラムでは、現在、外資系総合ファームでパートナーをされているSさんのお話をお届けします。
Sさんは、新卒でSIerに入社し、外資系総合ファームへ”コンサルタントのハイクラス”で入社。その後、マネージャーに昇進し、営業も経験した上で、現在はパートナーとしてご活躍されています。
SIerからファームへの転職を10年ほど前にご支援させていただいたご縁で、Sさんにセールスに関するインタビューのお願いをしたところ快諾いただきました。営業との向き合い方について、とても参考になるお話をお聞かせいただいたので、是非ご覧ください。
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ー現在のファームで営業責任を求められるようになり、苦労されたことなどあればお聞かせいただけますか?
苦しみましたね。
デリバリーは、お客様のニーズやテーマが分かった状態で、如何に対応するかが求められますが、営業は、お客様のニーズやテーマを特定するところから入らなくてはいけない。営業しなさいと言われても、何をやれば良いかがまず分からない状況でした。ニーズやテーマを特定するとはどういうことなのか。そこで苦労しました。
お客様のニーズやテーマが分からないので、まずは自分ができるソリューションを持っていって、こんなことできますという話をするものの、大外ししましたね。
とにかく場数を踏まないといけないと思い、苦しみながら場数を踏んでいったところ、傾向が分かってきました。こういうところが何となくの課題ではないか、ということが分かってきて、こちらから水を向けると「実はそうなんだよ」という話になってくる。そこで、次のステージに上がることができたかな、という風に感じました。
ちなみに、上位のパートナーになり、管理に対するウェイトが高くなり、お客様先に行かなくなってしまうと、ニーズやテーマを捉えるのは大変という話を聞くことがあります。パートナーもお客様には行き続けないといけないんですね。パートナーであってもそうなので、いきなりセールスしなさいと言われた人は特に分からないはずで、ここが一番苦労する点だと思います。
ー既存のお客様に対する営業と、新規のお客様に対する営業という観点ではいかがですか?
既存のお客様は、信頼関係を築けていれば、提案を聞いてもらいやすいですね。それでも最初はニーズやテーマを掴むのは難しいものですが、デリバリーをしているときに信頼関係を築けるかは1つのポイントです。
新規のお客様は、更にニーズやテーマが分からないので、とにかくお客様先に行き、場数をこなすしかありませんね。
既存のお客様・新規のお客様に共通して苦労したことがもう1つありました。当初は、持っていくネタが自分に専門性がある分野しかなく、お客様のニーズがそこ以外にあるときに、困ってしまいました。お客さんから「それも大事なんだけど、XXで困っている」と言われたときに返せない。自分が専門性を持っているところだけで勝負して、そこにニーズがなかったら、帰るしかありません。
お客様に対する提案の精度を上げるためには、社内の有識者と如何につながっておけるかが重要です。ネットワークがあれば、例えば「類似するお客さんはこういうところに困っているので、このお客様はここに困っているんじゃないか」という情報を得られるので、提案のコンテンツが幅広く深くなっていきます。
自分自身で専門性を広げるには数年かかるので、色んな人を巻き込みながら営業をしていきましたが、最初はかなり苦労しましたね。
ー未知の領域にチャレンジすることになるので、場数を踏んだり、誰かに聞くなりする必要がありますが、いずれにせよ、苦しい期間を過ごすことになるのですね。
そう思います。営業にマジックはないですし、スマートにできる人はいないと思った方が良いです。
自分は、経営者が書いている本を読んで、経営者の視点をよく勉強しましたし、パートナーにも相当レビューを受けました。結局、自分が分からない世界なので、誰かに教えてもらったり、先駆者から学ぶしかないですし、経営者の視点を掴むなら、経営者と話すほうが良いんです。場数を踏むと、「みんな言っていることは同じなので、そういうことなんだな」と、だんだん気づけるようになっていきます。
苦しい期間を乗り越えるためにはモチベーションリソースが大切で、私は、経営者と話すことが楽しくなっていきました。最初は全然分からない中で営業していましたが、ネットワークができて、専門家を連れて一緒にディスカッションできるようになると、良い循環になっていきます。最初、車輪を漕ぎ出すまでが、凄く苦しかったですね。
ー営業で悩んでいる方に対して何かアドバイスをいただけますか?
部下には「営業は楽しい」という話をしています。
最初は誰しもできないのですが、できるようになれば経営者と話せる訳です。「数字をあげなさい、会社のノルマを達成しなさい」では苦しいですが、そうでなくて良いと思っています。達成は結果であり、やっていけばいつかはできるから、まずは失敗しても良いのでやってみたらと伝えています。
営業をし続けていると、お客様に対して「こうじゃないですか」と伝えて、「そうなんです」と言われたときの快感があるんですね。あぁ、ここまでこれたんだと実感できます。その瞬間はやっていれば必ず訪れると思います。
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Sさんへのインタビューは以上となります。
コンサルティングファームへ入社した当初は、コンサルタントの仕事ができないのは当たり前ですが、マネージャーの職位にプロモーションした以降は、上司からも部下からも期待を背負う中で、営業という未知の領域にチャレンジしなくてはならないことも、苦しさを助長する要因と感じました。
マネージャー・シニアマネージャーとして、担当プロジェクトのデリバリーを行いながら、加えて営業を行う必要もあり、大変な状況が続くこともあると思いますが、営業は誰しも場数を踏むしかないということと、いつかはできるようになると自分を信じることが大切と思います。
今回のコラムが、コンサルティングファームで営業をされている方のエネルギーに繋がれば嬉しいです。
Sさん、お忙しいところ本当にありがとうございました!
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(担当コンサルタント:永田憲章)