Column
DX転職コラム
生成AIによってデジタルプロフェッショナルのキャリアは変わるのか?
昨年の11月21日に、29回目となる弊社主催の汐留アカデミーを開催しました。
今回は下記の方々をお迎えし、「生成AIによってIT人材のキャリアは変わるのか?」をテーマに、ものすごく面白く、中身の濃いディスカッションが繰り広げられました。
- ・ウルシステムズ株式会社 代表取締役会長 漆原 茂 様
- ・株式会社エクサウィザーズ 常務取締役 大植 択真 様
- ・株式会社cross-X 代表取締役 古嶋 十潤 様
是非、レポートもご覧ください。
https://www.kandc.com/academy/report/029/
生成AIは急速に拡大しているなか、デジタルプロフェッショナルはどのようにキャリアを形成していくべきか
ChatGPTをはじめとする生成AIの出現が、社会に大きなインパクトをもたらそうとしています。
登壇いただいた大植さんがいらっしゃるエクサウィザーズが経団連に所属している大手企業約500社にアンケートを実施したところ、生成AIをビジネスで使っている(日常および週数回程度)企業が、2023年4月末では35%程度だったところ、同8月末では60%を超えていたとのことです。
4か月程度で4割もなかったのが6割を超えており、企業の関心の高さがわかります。
このように、生成AIがビジネスに実装されるケースも急速に拡大しているなか、この環境変化に対応してITコンサルタントやSE(システムエンジニア)などのデジタルプロフェッショナルはどのようにキャリアを形成していくべきなのでしょうか。
今回のセミナーをふまえて思ったこと・考えたことのひとつとして、エンジニアはビジネスに対して、ビジネスサイドはテクノロジーに対しての理解やキャッチアップが必要だと強く感じました。
エンジニアはテクノロジー視点だけでなく、ビジネス・業務の視点も重要
2023年は「生成AI元年」と言われました。多くの企業がLLMの開発に乗り出したり、既存サービスに組み込んだりしました。ただ、現状として、生成AIの使われ方は汎用的な用途が多いと考えます。大量の社内既定・マニュアルなどのドキュメントから欲しいものを抽出する、音声データから議事録を完成する、FAQ、などなど。現時点では社内の業務向けに適応・活用されているのがほとんどではないでしょうか。
今後は、事業・サービスへの適応・活用が進むことになります。
2024年、SAPは「ビジネスAI元年」、日本オラクルは「エンタープライズ生成AI元年」になると言っています。
漆原さんもおっしゃっていましたが、今関心が高いのは、業種業界ごとにバーティカルに生成AIを活用して価値を生み出そうとする試みです。生成AI視点から入っているだけではダメで、ドメイン視点から入っていかないと広く使われるようにならない。そのためには、テクノロジーサイドとビジネスサイドがいっそう連携することが必要となり、エンジニアも事業側へ積極的に越境していかなければならないと。
ビジネスサイドとテクノロジーサイドが上手くリレーションをとりながら開発することが更に不可欠となり、そのためのハイブリッドな立ち回りができることが大事になってきます。
この視点は、今後のキャリアを考えた際に、とても重要な要素になると思います。
テクノロジーの進化や普及は凄い速さで進んでいます。これまでアルゴリズムを社会実装するための人材が必要でしたが、今後は一気にローコード、ノーコードで実装できるようになっていくでしょう。
開発の生産性も格段に向上しているので、全体の設計がすごく重要になってきます。そのため、言われたプログラムを部分的に作るだけのエンジニアは需要が減っていく一方で、業務からシステム全体を理解し、上流から設計できるエンジニアが発揮する価値は今後も高いと思います。
ビジネスの課題を解決するために価値を提供するのか、それを実現するために最適なテクノロジーは何か、といった点をしっかり考え、組み合わせて社会実装することが重要になってきます。
これからは、エンジニアをはじめとしたテクノロジーサイドのデジタルプロフェッショナル人材もテクノロジー視点だけでなく、ビジネス・業務の視点を持っていることが必要になると思います。そして、ビジネスサイドと連携をとるコミュニケーション力も益々求められるようになるでしょう。
これからはビジネスサイドもテクノロジーに対しての理解やキャッチアップが必要
また、企画職やビジネスコンサルタントをはじめとしたビジネスサイドの人材も同様に、今後はテクノロジーの視点や知識・理解が求められるようになってくると思います。
多くの企業で、経営陣とテクノロジーサイドには大きなギャップがあります。テクノロジーの視点や知識・理解を持った経営陣は少なく、このギャップを埋めることができるのはビジネスサイドの人材としてのValueのひとつです。DX全盛の時代、このような人材ニーズは市場でも高まっていますが、経営の言葉を理解し、経営・事業にインパクトのあるテクノロジーを含めたアーキテクチャの設計ができる人材はまだ多くありません。
最新のテクノロジーをキャッチアップし続けて、課題に対してのアーキテクチャ設計ができることは市場価値を高めることにつながります。
テクノロジーとビジネスの両方を掛け合わせ持つことがキャリアを強くする
大植さんは、大谷翔平選手みたいな二刀流を目指すというのもキャリア形成で有効だとおっしゃっています。エクサウィザーズにも特定のドメインのスペシャリストでテクノロジーも操れる方がいらっしゃるとのことですが、今後のテクノロジー人材は、テクノロジーだけではなくドメインの知識も身につけて、ベン図でいうところの掛け合わせの部分を持つことが大きな強みになると。ビジネス人材も同様に、ドメインの専門性だけでなく、テクノロジーの知識も身につけて、掛け合わせの部分を多く持つことでキャリアの軸を強く、太くできると思います。
漆原さんは、数年後にはExcelが使えるのと同じように生成AIを使えるのが当たり前になる、だからこそ、「元年」である今のうちから、好奇心を持ってどんどん生成AIを使っていって欲しいとおっしゃっています。使えないことへの危機感を持って使うのではなく、面白いものなので楽しみながら使って欲しい。まずは試してみて、どんどん使っていくことで詳しくなっていくものである、と。ビジネスの肝がわかっているからこそ、生成AIを使ったイノベーティブな活用アドバイスができるようになると思います。
ここのセンサー、アンテナがあるかどうかは、今後のキャリアに影響してくるかもしれません。
テクノロジーの進化・環境の変化が速いなかでのキャリア形成を考えると、テクノロジーに対する感度や好奇心、チャレンジマインドが大事であると同時に、ビジネス・業務やコミュニケーションなど不変な要素も重要だと改めて感じました。
今後も、ITコンサルタントやSE(システムエンジニア)などのデジタルプロフェッショナルのキャリアについて考え、発信していきたいと思います。
キャリアについてお考えでしたら、お気軽にご相談ください!
https://www.kandc.com/digital/entry/
(担当コンサルタント:半藤 剛)