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DX転職コラム

生成AI時代、データサイエンティストの
役割はどう変わる?
電通総研やエクサウィザーズでデータサイエンティストとしての経験を積み、現在はAI・データサイエンス人材や、データサイエンスに関わる職種を目指す方のキャリア支援を行っている難波です。
大学では数学を学び、大学院では統計学の研究室で自然言語に関する研究をしていました。それもあり、理論的な面を含めてAI・データサイエンスの分野はとても好きです。キャリア支援の仕事に就く前は、AIに関する戦略の立案から実装まで幅広く携わってきました。そのため、データサイエンティストの方とお話しするときに「どんなプロジェクトに、どんな技術を使って関わってきたのか」を聞くのが毎回楽しみです。
ただ最近、生成AIの進化によって「データサイエンティストの仕事はなくなるのでは?」といった将来性を不安視する声や、「役割が大きく変わるのでは?」といった声を耳にすることがあります。実際に、転職活動中のデータサイエンティストの方から「3年後には仕事がなくなるかもしれないので、将来性をふまえて別の道を考えています」との話を聞いたこともあります。
そこで今回は、「生成AI時代、データサイエンティストの役割はどう変わる?」というテーマについて、私なりの考えと、今後求められるスキルやキャリア戦略、将来性についてお伝えします。
生成AIが代替できないデータサイエンティストの役割や将来性
生成AIの進化により、データ分析やモデル構築などにおけるコーディングはAIでとても効率化できるようになりました。さらに、データサイエンティストが行っていた試行錯誤の一部も、今後はAIが自律的にこなすようになるかもしれません。こうした効率化・自動化の流れは、生成AIが話題になる前からAutoMLツールによって進んでいましたが、今後さらに加速していくでしょう。
では、こうした時代においてデータサイエンティストの価値や将来性はどこにあるのでしょうか?
私は、データを価値に変えるための意思決定とステークホルダーとのコミュニケーションこそが、生成AIでは代替できない役割であり、今後ますます重要になると考えています。
ビジネスの要件に基づいて適切な指標を設定し、どの分析手法を選ぶか判断するには、ビジネスの理解とデータサイエンスの知識が欠かせません。また、データの収集・管理を担当する組織との調整や、ビジネスサイドへの説明・説得には、円滑なコミュニケーションを行うことが必須です。さらに、どんなに精度の高いAIモデルを作れたとしても、それをビジネス課題にどう適用し、どのように意思決定するかは、やはり人間の役割です。
一方で、世界初のような最先端の取り組みに対して、高い技術で挑むデータサイエンティストの価値も変わらずあるでしょう。確立されたベストプラクティスがある領域では、生成AIが活躍する場面が増えてくるかもしれません。ただ前例のない複雑な課題には世の中の公開情報の中に良い解決方法がなく、依然として専門家の知見と創意工夫が必要になると思います。
これからのデータサイエンティストに求められるスキルセットとは?
データサイエンティストに必要なスキルセットとして、データサイエンティスト協会はビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力を定義していますが、多くのデータサイエンティストはビジネス力がますます重要になるでしょう。
データを価値に変えるための意思決定とステークホルダーとのコミュニケーションを行うには、ビジネス課題を正しく・深く理解することや、円滑なコミュニケーションを取るスキルなど高いビジネス力が求められます。
もちろん一定のデータサイエンス力、データエンジニアリング力も必要です。AIやデータサイエンスの可能性・限界を理解し、運用のイメージを持つことではじめて、データサイエンスの専門家としての意思決定が可能になります。
一方で最先端の取り組みに挑戦するデータサイエンティストにとっては、データサイエンス力やデータエンジニアリング力をさらに高め、世界レベルで戦えるスキルを身に着けていくことが重要になります。
データサイエンティストのキャリア戦略
長期的なキャリアを考えると、データサイエンティストには 「ビジネス力を高める道」 と 「データサイエンス・データエンジニアリングの専門性を突き詰める道」 の大きく2つの道があると考えています。
1.ビジネス力を高めるキャリア
データを価値に変えるための意思決定や、ステークホルダーとのコミュニケーション力を高めることで、よりビジネスに貢献できるデータサイエンティストを目指す道です。経験の積み方は以下の2つがあります。
①社内外でビジネスサイドとの連携・折衝が多いポジションを探す
分析やモデリングを中心に求められるポジションではなく、ビジネスサイドとの連携・折衝が多いポジションを社内で探してみましょう。
例えば、事業企画やプロダクト開発のチームと連携しながらデータ活用を進める役割を担うことで、ビジネスの視点を磨くことができます。
また、社内に適したポジションがなければ、転職や副業でそのような機会を得るのも一つの手です。
②ビジネスサイド視点が強く求められる職種に転身する
技術的な知見を活かし、AIコンサルタントやAIプロジェクトのプロジェクトマネージャーといった職種にシフトするのも選択肢の一つです。これらの職種では、技術的な理解に加え、ビジネス視点でAIを活用するスキルが求められます。
2.データサイエンス・データエンジニアリングの専門性を極めるキャリア
技術力を高め、「世界初」「日本初」といった最先端のプロジェクトに挑戦し、活躍することを目指す道です。
データサイエンス・データエンジニアリングで突き抜けるには自己学習はもちろんのこと、日本初・世界初のような案件・取り組みができる環境や、優秀なデータサイエンティストと共同して課題に取り組める環境に入ることで、より専門性を高めることができるでしょう。
まとめ
生成AIの進化により、データサイエンティストには 「データを価値に変える意思決定やステークホルダーとのコミュニケーション」、または 「データサイエンス・データエンジニアリング力を活かした最先端の課題解決」 のどちらかがより求められるようになるでしょう。
今後のキャリアを考える際には、自分がどちらに対応する道を目指すのかを考え、適切な環境やポジションを選ぶことが成功の鍵になります。
今回は、「生成AI時代、データサイエンティストの役割はどう変わる?」というテーマでお伝えしましたが、いかがでしたか?今回の内容が、今後のキャリアを考えるうえで少しでも参考になれば嬉しいです。
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(担当コンサルタント:難波 光太郎)