注目のアルゴリズムベンチャーから派生し、SaaSモデルで対話エンジンを提供。
及川
最初に森さんが執行役員を務めるBEDOREについてご紹介いただけますか。
森
私が在籍するBEDOREは、PKSHA Technology(以下、PKSHA)から派生した企業です。PKSHAはご存知の方も多いかと思いますが、東京大学の松尾研究所出身の機械学習技術者によって起ち上げられたアルゴリズムベンチャーです。
PKSHAは、エンタープライズ企業の個別の課題に対するソリューションとしてのアルゴリズムを提供していますが、そのアルゴリズムをSaaSで広く展開するために新たに起ち上げられたのがBEDOREです。現在はエンタープライズ企業のコールセンター向けの対話エンジンを主に提供しています。
PKSHAは課題を発掘するコンサルタントと、その解決策を編み出すアルゴリズムエンジニアが中心となって運営されています。一方でBEDOREはSaaSモデルでプロダクトを提供しているため、いわゆるプロダクトマネージャー(PdM)と呼ばれる人が所属しています。
及川
森さん自身のご経歴も教えていただけますか。
森
私は大学卒業後、ERPパッケージベンダーでプログラマーからスタートし、その後、プロダクト開発に関わるようになりました。PdMとしてのキャリアは10年以上になります。
実は私、大学時代は純文学の小説家を志していて、作家の先生に師事していました。小説家としては芽が出ませんでしたが、その先生から「良い物語というのは、登場人物たちのキャラクター設定が明確で、彼らの関係性の中から勝手にシナリオが生まれる」という指導を受け、登場人物を深掘って想定し、描写する訓練をひたすら繰り返しました。
その経験がいまPdMとしてユーザーを想定し、ユーザーの感情を理解するのに活きています。
及川
森さんがもともと小説家を志望されていたとは驚きました。そこで培われた表現力も、PdMを担う上でも役に立たれているのでしょうか。
森
PdMはある意味ドキュメントを書く仕事であり、その点では役立っています。あと、私が出会うPdMのなかで『この人は面白いな』と感じるのは、いわゆる芸術家肌で、テクノロジーを手段にして自分のやりたいことを表出している方が多いように思いますね。
及川
確かに優秀なPdMというのは、ロジカルな思考をつかさどる左脳と、アーティスティックな感性をつかさどる右脳のバランスが取れた人であり、森さんのようなユニークな素養をお持ちの方ほど活躍されている印象があります。社会に出てからは、森さんはどのようなキャリアを積んでこられたのでしょうか。
森
小説家になるのは諦めましたが、大学時代はちょうどインターネットの黎明期で、Webに興味を持ってホームページの制作を独学でやっていました。それでソフトウェア技術を究めたいとERPパッケージベンダーに就職し、運良く新規プロダクトの起ち上げに関わるチャンスを得て、そこからPdMとしてのキャリアがスタート。建設業向けのソリューションを自ら企画して市場開拓までリードし、大きな成果を上げることもできました。
その後、一度転職してデジタルマーケティングのソリューションを提供する企業でプロダクト開発に携わり、2018年にBEDOREに参画しました。入社後はPdMとしてBEDORE Voice Conversationという製品を起ち上げ、それが評価されて執行役員に昇格し、現在プロダクト開発の責任者を務めています。