INTERVIEW

INTERVIEW 019

2021 Dec 07

「想い」が重視されるプロダクト開発。
“Play Fair”で、家族の幸せを生み出す
あたらしい社会インフラを世界中で創り出す。

PROFILE

ユニファ株式会社 プロダクトデベロップメント本部 副本部長 西川 具亨 氏

大学卒業後、アクセンチュアにてITコンサルタントとして従事。その後、コーエーテクモにて「100万人の信長の野望」のプロジェクトマネジメントなどに携わる。2010年に頓知ドットに入社し開発部長 兼 UX部長 兼 社長室として新規事業立ち上げを主導。2013年にグリーへ移り、Nativeアプリ向けKPI基盤の立ち上げや、複数のゲーム開発を指揮。その後、リクルートグループ企業を経て2017年にマナボ(現SATT AI ラボ)に入社し、最高戦略責任者としてExitに貢献。ユニファには2019年に入社し、「ルクミー」の統合・刷新を主導。

家族の幸せに役立つプロダクト開発ならば、人生を捧げられる。

及川

まずはユニファという企業についてご紹介いただけますでしょうか。

西川

ユニファは、代表を務める土岐(泰之氏)が2013年に起こした企業です。土岐は以前、商社や外資系コンサルティング会社に勤務し、いつかは事業を起ち上げたいという想いを抱いていました。が、人生を賭するに値するものが見つからず、いろいろと模索していた時、「自分が大切にしたいことは何か」をあらためて問いただしたんですね。

そこで彼が強く意識したのが、家族を愛する気持ち。過去、土岐は奥さんのキャリアを優先し、それまでの自分のキャリアを投げうって名古屋に移住したこともあり、そんな彼が「家族の幸せに役立つ事業ならば人生を捧げられる」と創業したのがユニファです。

スコープとしては、家族に幸せをもたらすために、まず子育てを支える社会インフラである保育園・幼稚園・こども園(以下、保育施設)に関わるサービス開発から取り組んでいます。ICTを活用し、園での子どもたちの写真を保護者の方々に提供する業務を効率化する「ルクミーフォト」や、IoTを駆使して園児のお昼寝を見守る「ルクミー午睡チェック」などを展開。

さらに2021年7月には、こうしたサービスも含めて、子どもたちの登降園管理や保育者のシフト管理などをひとつのプラットフォーム上で提供できるよう大幅にリニューアル。その結果、各サービス間でデータ連携が可能になり、現場の保育者の方々にさらに貢献できるようになりました。

というのも、保育者の方々はいろんな書類に情報を書き込む、確認・転記コストというのが非常に大きいんですね。この負担がデータ連携によって大きく軽減され、発表以降、おかげさまで好評をいただいています。

及川

西川さんご自身のご経歴も教えていただけますか。

西川

私は新卒で外資系のコンサルティング会社に入社し、しばらくフルスクラッチ系のシステム基盤開発のテックリードを務めた後、クライアントへの戦略提案と案件獲得を担うシステムコンサルティングに携わりました。

しかし、そこで私が関わっていたのは、いわば100→1000の案件で、やはり0→1のモノづくりがしたいと転職を決意。学生時代からゲームが好きだったので、ソーシャルゲームで成長している有力企業に移り、そちらでゲームのディレクターやプロデューサーを担当。その間、子どもができたこともあって、教育系のスタートアップに興味を持って再び転職しました。

そのスタートアップがイグジットに成功し、次のキャリアとして自ら起業することも選択肢のひとつとして考えていたのですが、当時子どもが2歳で、スタートアップを起ち上げると昼も夜もなく仕事と資金繰りに追われ、家族と過ごす時間がほとんど取れなくなる。

やはり私も家族との時間を大切にしたいという想いが強く、それでしばらくはサラリーマンをしようと考えて求職活動を行ったところ、エージェントからユニファを紹介いただき、家族をテーマにした事業ならば長く情熱をもって打ち込めるのではないかと入社を決意したのです。

いま向き合っている保育市場は、「ソロバン」よりも「ロマン」が大切。

及川

西川さんは現在、ユニファでどのようなポジションを担っていらっしゃるのでしょうか。

西川

ポジションとしてはプロダクトデベロップメント本部の副本部長で、「ルクミー」のサービス全体の実質的なプロダクト責任者を務めています。

及川

では、ユニファのプロダクトマネージャー(PdM)の役割について教えてください。何かプロダクトを例にとって、どのように業務を進めていらっしゃるのかご説明いただけますか。

西川

当社のPdMは、事業の目標達成に向けてプロダクトにどんなフィーチャーを設けるべきかを考え、仮説を検証して要件に落とし込んで仕様化していきます。そして、実装の段階に入るとプロジェクトの進捗を管理し、リリースするまでリードすることになります。

具体例をお話ししますと、2021年7月にリリースした新たなプロダクトのひとつに「ルクミードキュメンテーション」があります。ドキュメンテーションは保育業界では特殊な意味合いがあり、写真を使った保育の振り返りのことを指すのですが、そこに取り組むと代表の土岐が決め、プロダクトの開発がスタート。

私がルクミー全体のプロダクト責任者なので、まず担当のPdMを任命し、彼と二人でユーザーリサーチを実施してディスカッションを重ね、コンセプトを立てて社内で合意を図りました。その合意に基づいて大枠の設計を行い、どのようなユースケースに対応するかという仕様を決め、エンジニアに実装してもらってリリースまで併走しました。

及川

事業の目標というのは、どのように立てているのでしょうか。

西川

事業サイドである営業やカスタマーサクセス、オペレーションの部門から上がってくる要望がもとになります。加えて、私はデザイン&プロダクトマーケティング部の部長も兼ねているのですが、この部門は社内からマーケティングリサーチやユーザーテストを受託する機能型チームであり、ここで調査検証した結果も事業目標に反映されます。

現場からの要望と数値的なデータを突合しあとは顧客からの定性的なデータを勘案しながら、経営陣と私が中心となって事業目標を立て、その期のプロダクト開発のテーマを決定し、具体的な機能についてはPdMが考えて実現していく形です。

及川

ユニファがいま向き合っているのは保育市場であり、お客様が保育園や幼稚園という少し特殊な状況ですが、一般企業と比べてサービスを開発提供する上で何か違いがあるのでしょうか。

西川

想いの部分で動く比重が、保育施設のお客様は大きいと思います。一般の企業は、たとえばこのサービスによってコストが圧縮できるという「ソロバン」で意思決定しますが、園のお客様はそれだけでは動かない。子どもたちに関わる先生方は、決してお金儲けがしたいわけではありません。

そのサービスがどれだけ子どもたちや保護者の方々のためになるのかという「ロマン」が大切であり、意思決定において組織を構成する一人一人の想いが重視される度合いが、一般企業よりもはるかに高いように思います。

及川

日本の保育市場は、一つ一つの法人が収益拡大するのが難しい社会構造になっており、それが人材確保をはじめ保育の質の向上を阻んでいるようにも思います。ユニファとしては、自社のサービスを通じてそうした状況を変えていきたいというお考えもあるのでしょうか。

西川

ええ。たとえば、創業事業である「ルクミーフォト」は、保育施設でのお子さんの写真を保護者の方々に販売するネットサービスですが、保育施設には無料で利用していただき、販売収益の一部を当社がいただくモデルとなっています。

そのほか、お客様が物販で収益を上げられるサービスなども検討しており、こうした新たなビジネスモデルの導入を通して、保育施設のお客様の収益拡大にも貢献したいとも考えています。

客観的なデータで意思決定。自分の考えと違う意見も認めあう風土。

及川

現在、ユニファではPdMが何人いらっしゃって、どのような組織になっているのでしょうか。

西川

いま10名ほどのPdMを擁しており、チーム制をとっています。一個人が一つのプロダクトを担当すると、誰かが体調を崩して離脱すれば開発が止まってしまうので、そのリスクを回避するために複数のチームで複数のプロダクトを担う体制になっています。

1チーム2~3名のPdMで構成されて互いに不得意な部分補いつつ、そこにエンジニアやデザイナーがアサインされて開発を進めています。

及川

プロダクト開発においては、先ほどお話のあったユニファのパーパスを組織全体で共有することが重要ですが、これがなかなか難しく、多くの企業が苦労しているのが実情です。

特に御社は、家族の幸せを追求する「想い」を重視されているので、パーパスをしっかりと腹落ちさせることがとても大切だと思いますが、そのために何か工夫されていることはありますか。

西川

絶えず「北極星」が見えている状況にするというか、社員全員が進むべき方向を明らかにすることがまず重要だと考えています。その上で工夫している点としては、プロダクト開発のインセプションデッキを作成する際、担当チームのPdMに自らエレベーターピッチを書いてもらうようにしています。

ただ、ゼロからエレベーターピッチを起こすのは言語化能力に長けていないと難しいので、まず私がたたき台を作り、そこに手を加えてもらう形をとっています。

先日発表した「ルクミー」の新サービスも、ファーストバージョンは私が書きましたが、担当PdMに「あなたの考えで書き直してほしい」とお願いしてエレベーターピッチを作り上げました。

及川

西川さんが書いたエレベーターピッチをベースに、PdMの方々がそれぞれ色付けしていくのは、とても面白い取り組みだと思います。

一方で、ユニファは「家族の幸せを生み出すあたらしい社会インフラを世界中で創り出す」というパーパスを掲げていますが、家族の幸せというのは抽象度が高く、たとえば子育てひとつとっても、人によって理想形が異なるのではないでしょうか。

みな思い入れのあるテーマであるだけに、プロジェクト開発の場で意見の対立も起こるかと思いますが、その時はどのように対処されているのでしょうか。

西川

おっしゃる通り、「家族の幸せ」というのはきわめて抽象度の高いテーマであり、それぞれ強い想いを持っています。

一人一人の「私が考える最高の家族の幸せ」はもちろん尊重していますし、多様な考えがあることで、いろんな方向から「北極星」を目指すことができる。が、それだけでコミュニケーションしていると「想いVS想い」なので決着がつかず、どちらかが不満を抱えたまま折れざるを得なくなる。

そこで客観データを重視し、「あなたが思う最高の幸せは、お客様がお金を払ってでも手に入れたいものなのか」を判断基準に置いています。

ユニファでは、パーパスを達成する上で大切にすべき価値観として3つのバリューを設けており、そのひとつが“Play Fair”。すなわち、「あなたの意見のほうが良いとマーケティングデータが示しているので、あなたのプランを採用しよう」というフェアなコミュニケーションをみな心がけており、たとえ自分の意見と違っていても、ユーザーがそれを評価しているのならば認めようという風土です。

及川

そうしたマーケットデータを重視する環境において、プロダクト開発に求められるのは業界ドメインに対する深い理解だと思います。幼稚園や保育園のオペレーションは、子どもがいる方でもなかなか見えにくい世界です。このドメイン理解はどのように行っているのでしょうか。

西川

新たに入社されたPdMの方は、まず前提となる基本情報をしっかり学んでいただくことになります。保育業界の動向を年度ごとに解説している本を入社者に貸し出し、それを読み込んでもらってドメイン理解を促しています。

加えてユニファでは、実際に園に訪問して理事長や先生方から直接話をうかがうユーザーテストを定期的に実施しており、早いうちからそこに同席できる場も設けています。コロナ禍が終息したら、園に赴いて保育者を体験していただく研修も実施し、現場の課題を身をもって学ぶ機会も作っていきたいと考えています。

私たちが解決したい課題は世界共通。グローバルでの事業展開も視野に。

及川

それでは、ユニファが求める人材についておうかがいします。PdMを採用されるにあたって、必要とされるスキルやマインドセットについて教えてください。

西川

最低限、必要なスキルとして挙げるとすれは、モノをしっかりと作れることですね。エラー処理をきちんと考慮したコードが書ける力とか、プロジェクトの進捗を円滑に管理できるスキルとか、モノづくりをリードできることを前提として採用したいと考えています。

あと、マインドセットとしては、プロダクト成功へのコミットメントを求めたいですね。プロダクトを成功させるためなら、良心と法律に背かない限りは何でもやるというぐらいの気概が欲しい。

そして、先ほどお話したように“Play Fair”の精神で、成功の確率が高くなるのなら、自分の考えとは異なる意見でも、すぐに乗り換える姿勢を持っていてほしいですね。

及川

モノを作れる力を求めているということは、過去にITのシステム開発に携わった経験が前提になるのでしょうか。

西川

中途で採用する場合には、その経験は求めたいと思っています。ただ、社内では開発経験のまったくない営業担当者が、本人の強い希望でPdMに転身したケースもあります。

私としては、開発経験ゼロでPdMを務めるのは厳しいとの考えでしたが、本人がどうしても挑戦したいと訴えてきて、ならば短期間でPdMに必要な力を身につけられるのなら機会を与えようと判断。

データ分析やモデリング、確率統計の知識、さらにはPyhtonのスキルを一週間で習得する「虎の巻」を作成し、これらをやり遂げられるのならPdMになれると告げたところ、彼は見事にすべてマスターし、こちらが驚かされたほどです。

そうしてPdMにキャリアチェンジした彼は、いま、プロダクト開発の第一線で活躍中。ユニファは人事に関しても“Play Fair”であり、本人に強い意欲があればチャンスを提供しますし、誰もがやりたいことが実現できる環境だと思います。

及川

御社の場合、PdMはテクニカルな部分を重視されているようにお見受けしますが、ビジネスに関する知見も必要ではないかと思います。ビジネスの面については、どのような育成を行っているのでしょうか。

西川

PdMにはいろんなスタイルがあっていいと思っています。ビジネス面に疎い方でも、テクノロジーに長けていれば、それを強みにプロダクト開発に貢献していただければと考えています。

ビジネスに関することは、チーム内で補って担保すればいい。もちろん、ビジネスについても究めたいという意思をお持ちなら、私も含めて周囲が支援します。当社の人間はみな教育熱心で、教えを請えば丁寧に応えてくれるので、いくらでも知識が吸収できるはずです。

及川

では最後に、ユニファでPdMとしてキャリアを積む醍醐味について、御社に興味をお持ちの方々にメッセージをいただけますか。

西川

ユニファはお客様に向き合うことを何よりも大切にしており、その点に関して不満を抱かれるようなことは絶対にないと思います。

また、先ほど「ソロバン」と「ロマン」の話をしましたが、私たちのビジネスはやはり「ロマン」の比重が大きい。お客様のコストが削減できれば何でもいいというのではなく、お客様に寄り沿って気持ちを同じくして、現場で一緒に課題を解きほぐしていくという、とても泥臭い世界。だからこそ面白くて楽しい。

テクノロジーを使って社会課題を解決したいという志向の方には、それを果たせる機会は本当にたくさんある企業だと思います。私たちが向き合う子育てなどに関する課題は、けっして日本に閉じたものではなく、世界共通のもの。中長期的にはグローバル展開も考えており、未来に向けても伸びしろのある企業です。

そして、私たちが築きあげたプラットフォーム上で得られるデータで、保育や教育の質の向上にも挑戦していく考えであり、こうしたビジョンに共鳴してくださる方にぜひ参加していただきたいと思っています。


構成:山下 和彦
撮影:波多野 匠

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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