ラストマイルの配送を最適化し、物流にDXをもたらす
及川
まずはハコベルという企業の概要と、御社が提供しているサービスについてご紹介いただけますか。
宮武
ハコベルは、2015年にラクスル株式会社が起ち上げた物流プラットフォームの新規事業からスタートしています。サービス領域としては、配送トラックのマッチングサービスと物流のDXシステムの大きく二つを展開。トラックのマッチングサービスは、荷主のお客様からのオーダー情報と、運送事業者や個人事業主のドライバーの方々をWebのプラットフォーム上でマッチングさせて、社会における輸送の効率化を図るものです。そして、物流のDXシステムは、荷主・運送会社の配車計画や配車・運行管理などの業務をデジタル化し、まだまだ電話やメール、あるいはFAXなどを使っている旧態依然とした物流現場を革新するためのSaaSを提供しています。2015年のスタート以来、ラクスル内の一部門としてこうしたサービスを展開していましたが、2022年にハコベル株式会社として独立し、物流企業大手であるセイノーホールディングス株式会社や山九株式会社などからも出資を得て、事業を拡大しているところです。
及川
昨今、物流業界は人手不足に加えて「2024年問題」などもあり、大変な状況に置かれていて世間からも注目を集めています。さまざまな企業が課題解決を図ろうとこの領域に乗り出していますが、そんななかでハコベルは現在、どのぐらい事業を拡げていらっしゃるのでしょうか。
宮武
たとえば荷主と配送ドライバーのマッチングサービスでは、すでに2万社近い運送事業者をプラットフォーム上に抱えており、累計ではすでに100万件以上のオーダーを捌いてマッチングを果たしています。
及川
いま2万社近い運送事業者を抱えていらっしゃるとのお話でしたが、この業界はどのような構造になっているのでしょうか。
宮武
物流業界は配送領域のセグメントが分かれており、大きくラストマイル配送と一般貨物配送の2つの領域があります。ラストマイル配送というのは、物流の最終拠点からお客様のもとに届ける配送のことであり、主に軽自動車を使用して荷物を運ぶ軽貨物運送が主流。届出制であるため参入が容易で、個人事業主の方もたくさんいらっしゃいます。一般貨物配送はトラックを使用する配送であり、国の認可が必要であるため法人格の事業者となります。こちらがいわゆる運送会社ですが、国内の運送会社の8割は中小企業であり、非常に多数の小規模事業者が日本の物流を支えているという構造になっています。
及川
いまのお話からも、物流業界を効率化できる余地はまだまだたくさんあるように見受けられます。それでは次に、宮武さん自身のご経歴を教えていただけますか。
宮武
私は新卒で広告制作会社に入社し、第2新卒でゲームアプリの開発とプラットフォームの運営を手がける企業に転職して、そこで初めてプロダクトマネージャー(PdM)のようなポジションに就きました。しばらくキャリアを積んだ後、2015年にラクスルに入社し、このハコベルの立ち上げから携わっています。最初はラストマイルのマッチング、次に一般貨物のマッチング、そして物流DXという形でハコベルの事業は拡がってきましたが、それぞれ事業開発からプロダクトマネジメントまで一貫して担い、現在はプロダクト開発部門を統括する責任者を務めています。
及川
ゲームのプラットフォーマーから、なぜラクスルに転職しようとお考えになられたのでしょうか。
宮武
前職では、コンシューマーの方々を楽しませるゲームを開発することにやりがいを感じ、またプロダクトマネジメントについて学べる機会も多く、たいへん充実したキャリアを得ることができましたが、やはりゲームのタイトルというのは3~4年の周期があり、ピークを過ぎると消えゆくサービスがほとんどでした。そこに物足りなさを覚え、自分が関与したものが未来に残り続け、価値が積み上がっていくようなサービスを手がけたいと転職を考えるようになり、なかでもゼロイチのフェーズから携われる機会を探していたところ、出会ったのがラスクルでした。創業者の松本(恭攝氏)との面接の場で、新たに立ち上げようとしているこのハコベルのコンセプトを聞き、ぜひこの社会課題解決に挑戦したいと熱量が上がって入社を決意したのです。