技術的なアプローチからプロダクトマネジメントを担うポジションを新設。
及川
宮坂さんは2018年の秋にプロダクトマネージャー(PM)としてメルカリに参画されたとのことですが、これまでどのようなタスクに取り組まれてこられたのでしょうか。
宮坂
私が入社した当時、メルカリのプロダクトマネジメントにはまだ足りないポイントがあって、そこに問題意識を抱いたんですね。
ひとつは開発フレームをきちんと整備することで、まだ採用されていなかったアジャイルの導入を提案し、3~4カ月かけて全社に展開。さらにテクニカルな側からプロダクトマネジメントをするアプローチが欠けていると感じ、新たにテクニカルプロダクトマネージャー(TPM)というポジションを設けることを提案して組織を立ち上げました。
及川
現在、メルカリにはPMとTPMの2つのポジションがあるわけですね。ちなみにTPMが導入される前、メルカリのPMはどのような役割を担っていたのですか。
宮坂
主に顧客体験側での課題の発見と解決ですね。いわゆるUI系のプロダクトマネジメントが中心でした。お客様が使ったアプリのログを自分でクエリを書いて解析し、どこに問題があるのかを見出していく。大規模な案件であればデータアナリストと協業することもあります。
そしてユーザーインタビューを実施し、なぜお客様に刺さっていないのかを明らかにしてソリューションを考え、エンジニアと一緒に解決に向けてドライブしていくのが基本スタイルです。
メルカリのプロダクトマネジメントは、出品体験や購入体験などのシナリオベースでチームを分けています。アジャイル導入後は、そのチームをさらに5~10名ほどのスプリントチームに分け、それぞれPMがいてエンジニアがアサインされている体制です。
及川
いま宮坂さんがおっしゃった、シナリオベースでのプロダクトマネジメントの具体例をご紹介いただけますか。
宮坂
最近の事例だとイメージ検索でしょうか。
これはスマホのアプリで写真を読み込むと、メルカリ上にある同じ商品や似た商品を画像検索できる機能。我々はOKRを導入しており、クォーターごとにオブジェクトを決めているのですが、そこで「お客様が欲しい商品をもっと探しやすくしよう」というオブジェクトが設定され、ディスカッションの中であるPMから出されたアイデアがイメージ検索でした。
発案者にプロダクト開発が一任され、ユーザーインタビューなどからニーズを分析し、KPIを設定してプロタイピングして検証。その成果を上層部に提示したところ、見込みがあると判断されてすぐにGOサインが出ました。
その後、デザイナーとUIを決め、成果の良いプロトタイプを選んでスペックを起こし、エンジニアとともに開発を推進し、このイメージ検索はマシンラーニングを活用するためAIの専門家とも検討。そしてA/Bテストを実施し、設定したKPIを満たすように仮説と検証のサイクルを回して最終製品に仕上げてリリースするという流れでした。
及川
根本のオブジェクトを考えるOKR策定のプロセスに、PMはどこまで関わっているのでしょうか。
宮坂
経営側が決めるのは、たとえば「出品戦略を強化しよう」などという最上位のオブジェクトだけであり、そこからカスケードされて具体的なアイデアはPMレベルが出してリードしていくことが多いですね。