INTERVIEW

INTERVIEW 006

2020 Feb 12

未知の顧客体験を創り出し、社会に大きなインパクトを与える。
メルカリだからこそ経験できるプロダクトマネジメント。

宮坂氏(メルカリ)のプロダクトマネージャーインタビュー

PROFILE

株式会社メルカリ Director, PM Office 宮坂 雅輝 氏

野村総合研究所のTechnical Engineerとしてキャリアをスタート。その後マイクロソフト、楽天、ファーストリテイリングでさまざまな国内及び、グローバル向けの製品のプロダクトマネジメント行うとともに、開発組織強化のためにアジャイル開発の導入、オフショア開発拠点の立ち上げなどに従事。2018年9月にメルカリに参画し、プロダクト組織の拡大に従事している。

技術的なアプローチからプロダクトマネジメントを担うポジションを新設。

及川

宮坂さんは2018年の秋にプロダクトマネージャー(PM)としてメルカリに参画されたとのことですが、これまでどのようなタスクに取り組まれてこられたのでしょうか。

宮坂

私が入社した当時、メルカリのプロダクトマネジメントにはまだ足りないポイントがあって、そこに問題意識を抱いたんですね。
 
ひとつは開発フレームをきちんと整備することで、まだ採用されていなかったアジャイルの導入を提案し、3~4カ月かけて全社に展開。さらにテクニカルな側からプロダクトマネジメントをするアプローチが欠けていると感じ、新たにテクニカルプロダクトマネージャー(TPM)というポジションを設けることを提案して組織を立ち上げました。

及川

現在、メルカリにはPMとTPMの2つのポジションがあるわけですね。ちなみにTPMが導入される前、メルカリのPMはどのような役割を担っていたのですか。

宮坂

主に顧客体験側での課題の発見と解決ですね。いわゆるUI系のプロダクトマネジメントが中心でした。お客様が使ったアプリのログを自分でクエリを書いて解析し、どこに問題があるのかを見出していく。大規模な案件であればデータアナリストと協業することもあります。
 
そしてユーザーインタビューを実施し、なぜお客様に刺さっていないのかを明らかにしてソリューションを考え、エンジニアと一緒に解決に向けてドライブしていくのが基本スタイルです。
 
メルカリのプロダクトマネジメントは、出品体験や購入体験などのシナリオベースでチームを分けています。アジャイル導入後は、そのチームをさらに5~10名ほどのスプリントチームに分け、それぞれPMがいてエンジニアがアサインされている体制です。

及川

いま宮坂さんがおっしゃった、シナリオベースでのプロダクトマネジメントの具体例をご紹介いただけますか。

宮坂

最近の事例だとイメージ検索でしょうか。
 
これはスマホのアプリで写真を読み込むと、メルカリ上にある同じ商品や似た商品を画像検索できる機能。我々はOKRを導入しており、クォーターごとにオブジェクトを決めているのですが、そこで「お客様が欲しい商品をもっと探しやすくしよう」というオブジェクトが設定され、ディスカッションの中であるPMから出されたアイデアがイメージ検索でした。
 
発案者にプロダクト開発が一任され、ユーザーインタビューなどからニーズを分析し、KPIを設定してプロタイピングして検証。その成果を上層部に提示したところ、見込みがあると判断されてすぐにGOサインが出ました。
 
その後、デザイナーとUIを決め、成果の良いプロトタイプを選んでスペックを起こし、エンジニアとともに開発を推進し、このイメージ検索はマシンラーニングを活用するためAIの専門家とも検討。そしてA/Bテストを実施し、設定したKPIを満たすように仮説と検証のサイクルを回して最終製品に仕上げてリリースするという流れでした。

及川

根本のオブジェクトを考えるOKR策定のプロセスに、PMはどこまで関わっているのでしょうか。

宮坂

経営側が決めるのは、たとえば「出品戦略を強化しよう」などという最上位のオブジェクトだけであり、そこからカスケードされて具体的なアイデアはPMレベルが出してリードしていくことが多いですね。

画像1

いまメルカリは、本質を見つめ直して顧客体験全体を再構築するフェーズに。

及川

TPMというポジションを新たに設けられたのは、どのような背景からでしょうか。

宮坂

以前は、アプリより後ろのバックエンドはPMが直接関わっていなかったんですね。
 
リクエストを出してエンジニアが解決していくスタイルで、プラットフォームのエンジニア側からすると「なぜそんな要求が来ているのか」という本質を理解しないまま開発が進められていました。
 
また、プラットフォームも確かな成長戦略のもとでプロダクトとして成長させることが重要ですが、それを仕切るPMがいなかったため、漠然と規模が拡大し、全体として整合性が取れていなかった。
 
そのような状況は拙いと判断し、プラットフォーム側からユーザーシナリオを定義したり、成長ビジョンを掲げられる人材をTPMとして採用して新たな体制を築いているところです。

及川

現在、メルカリでPMとTPMは何名ほどいらっしゃるのですか。

宮坂

全社でPMは約40名、TPMは約10名で、エンジニアは500名ほど擁しています。
 
現状、PMは顧客体験側からの課題発見を担い、TPMはエンジニアリングの視点から課題を発見していくという位置づけになっています。プラットフォーム上のデータから、たとえばサーチやレコメンデーションなどに関してこんな顧客課題を解決できるのではないか?と新たなソリューションを立案して実装していくのがTPMです。
 
フォーカスするエリアが違いますが、課題を発見して対応するソリューションを作り上げていくことは同じなので、将来的にはその境界をなくし、どちらも担えるようなPMの組織にしたいと考えています。

及川

メルカリのプロダクトはすでに世の中に浸透しており、スタートアップ期の仮説検証を終えて、さらなる成長段階に入っていると思います。そんななか、いま御社の事業はどのようなフェーズにあり、次は何を目指しているのでしょうか。

宮坂

メルカリは創業して7年経ちましたが、この間、猛烈な勢いで成長し、いまや非常に多くのお客様にサービスをご利用いただいています。
 
一方でここまで規模が大きくなると、これまでのように急成長を続けるのは難しいのも事実。スタートアップからずっと走り続けてきましたが、ここに来て「メルカリのバリューとは何か?」という本質をもう一度見つめ直すフェーズに入っています。
 
本当にお客様に喜んでいただくためには何が必要なのかという観点から、オンラインだけではなくオフラインも含めて顧客体験そのものを作り直していこうとしています。

及川

いま顧客体験全体を作り直すというお話がありましたが、そこにPMやTPMはどのように絡んでいくのでしょうか。

宮坂

その体制をいま再構築しているところです。ユーザーのお客様から寄せられるフィードバックは何もアプリやプラットフォームに関することだけではない。お客様が思いついたタイミングで何のストレスもなく出品したり購入できる環境は、オンラインの世界だけでは実現できないとプロダクトマネジメント側も認識しています。
 
たとえば、シニア層に向けて登録や出品の仕方などのアプリの使い方が学べる「メルカリ教室」の開催や、郵便局やコンビニで簡単に出品物を梱包して発送できる「つつメルすぽっと」の設置など、オフライン施策にも力を入れており、こうしてCtoC全体を見渡して顧客課題を発見して解決していくスタンスがPMやTPMにより求められています。

画像2

PMは究極のゼネラリスト。これを極めれば将来どんなキャリアも実現できる。

及川

メルカリのPMに必要とされるのは、どのようなスキルでしょうか。

宮坂

やはりお客様視点で課題を正しく発見し、ソリューションを考える能力ですね。さらにメルカリのカルチャーとして、ソリューションを考える時には一歩先行く大胆な手を発想することが求められる。あとは人を巻き込む力でしょうか。PMはレポートラインの上司ではないので、PMの人間力でチームを動かしていかなければなりません。

及川

この質問に対してはどの企業もだいたい同じ答えで、PMに必要なスキルは共通しているように思いますね。いま宮坂さんがおっしゃられた、お客様視点で課題を発見・解決する能力というのは、採用時にどのように見極めていらっしゃるのですか。

宮坂

面接の時にケースをおうかがいすることが多いですね。「あなたがメルカリの社員なら、このアプリをどう改善するか」とか。また、その方がお好きなアプリをお尋ねし、そのアプリのどこに課題を感じているのかなどをお聞きして判断しています。

及川

御社ではPMに対してどのような育成プランを設けていらっしゃるのでしょうか。

宮坂

入社後に最低限の教育は実施しています。今後はPMのキャリアラダーを示すことで成長を促す環境を整えていきたいと考えています。

及川

PMの評価体系についてもおうかがいします。PMは評価が難しいポジションだと思いますが、御社ではいかがですか。

宮坂

KPIはもちろん重視していますが、そこに至る取り組みもきちんと評価しています。我々は失敗も後に繋がる財産だと考えており、けっしてネガティブには捉えていません。事実、いま社内で高い評価を得ているPMは、過去に顧客課題の発見と解決に何度も挑み、そこで失敗を重ねている人間が多い。
 
また、PMはハブとして機能することが求められるため、周りの人をサポートしているか、あるいは周りからサポートを得られているかという点も評価しています。

及川

PMを志向するエンジニアの方々から、よく「PMのキャリアの先に何があるのか」という質問を受けるのですが、メルカリでの経験はどんな可能性につながるのでしょうか。

宮坂

お客様の課題を見出す力とソリューションを考える力が大いに鍛えられるので、それを転用することでエンジニアセントリックのスタートアップを起こすことも十分可能。
 
また、その力をもって事業会社に行けば、サービスの企画から開発まですべて担えるポジションで活躍できる。メルカリでPMとして経験を積めば、いろんなオポチュニティがあると思いますね。

及川

PMといのは究極のゼネラリスト。ゼネラリストというとネガティブなイメージを持たれがちですが、実はそうではなく、どんな職種にも就ける万能のポジションなんですよね。

宮坂

おっしゃる通りです。私もよく社内で話しているのですが、PMというのはいろんな職種の要素があり、チームを率いるプロジェクトマネジメントの力も求められれば、顧客視点でマーケットを分析する力も求められる。まさに総合格闘技で、どこでも通用する人材になれると思います。

すでにエンジニアの過半数が外国籍。グローバルなコミュニケーション力も必要。

及川

メルカリはいま企業としてのステージが大きく変わっている最中だと思います。成長のフェーズによって求められる人材は異なりますが、現時点で御社はどんなPMを必要としているのでしょうか。

宮坂

いまメルカリは、スタートアップ的なカルチャーと大企業的なカルチャーが混在しており、一義的に「こんなPMが必要だ」とは言えないのが実状です。
 
新規領域に取り組むPMはベンチャーマインドが求められますし、本体のフリマサービスでは全体像が見えるPMが必要。スタートアップ段階だと、自分一人ですべてに関わってサービスを作って大きくすることができますが、いまのメルカリのサービス規模だとそれは難しい。スタートアップ時とはまた異なる資質がPMに求められます。

及川

後者のPMの場合、どんな業界でどんな経歴を持つ人がメルカリで成功しそうだとお考えですか。

宮坂

中堅企業でPMを務めた経験をお持ちの方のほうが、現在のメルカリでは価値を発揮しやすいと思いますね。サービスの規模が大きくなると、スタートアップ時のように「とにかくチームを盛り上げて勢いだけで乗り切っていく」というスタイルでは通用しない。
 
特にメルカリは外国籍の社員も増えているので、取り組むテーマの背景をきちんと説明できる能力も求められ、そうした経験を持つ方が望ましいですね。

及川

これからはPMにもグローバルコミュニケーション能力が求められるというわけですね。

宮坂

PMはまだ90%が日本人ですが、TPMは外国人が増えていて8割を占めています。エンジニアもすでに過半数が外国籍の人材です。なぜ日本のマーケットを攻めているのに外国籍の人材を増やしているのかと言えば、それはダイバーシティをより深めるため。
 
日本のコンテキストだけではなく、いろんな価値観を持つ人材が関わることで思わぬ課題の発見がある。こうしたダイバーシティを今後いっそう推進していく考えであり、確かにPMにも言語や文化を相互理解する力がよりいっそう求められていきますね。

及川

では最後に、メルカリでPMを務める醍醐味をおうかがいできますか。

宮坂

自分が出したアイデアが実現する可能性がとても高いことですね。マネージャーやディレクターが「いいね」と言えば、すぐに実行に向けて動き出す。スタートアップ企業ならそれも容易でしょうが、メルカリのサイズでそれができるのは珍しいと思いますね。
 
そして、打ち手が社会に及ぼすインパクトが桁違いに大きい。CtoCの領域では日本屈指であり、たとえばJP(日本郵便)と共同開発した「ゆうパケットプラス」(メルカリ専用の包装箱による配送)はすでに全国の郵便局やコンビニに展開されています。
 
こうした社会の新たなインフラになるような、影響力がきわめて大きなサービスを自ら創り出せることが、メルカリの最大の醍醐味だと思いますね。

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

OTHER INTERVIEW

CLOSE