この業界は情報の透明性に問題がある。それをアンドパッドが変えていきたい。
及川
まずは御社が手がける事業についてご紹介いただけますか。
山口
アンドパッドは主に住宅建築業界に向けた業務支援ツールを開発提供しています。主力プロダクトである施工現場のプロジェクト管理ツール「ANDPAD」は、現在2000社を超える企業にご契約いただいており、この分野でシェアNo.1を誇っています。主力の施工管理以外にも、さまざまな分野でご利用いただけるサービスのリリースを計画しており、成長途上にあるベンチャーです。
及川
山口さんは過去、ヤフーやリクルートでネットサービスの開発をしていらっしゃったとのことですが、今回、住宅建築業界にフォーカスした事業を展開するアンドパッドに参画されたのはどのようなお考えからですか。
山口
この業界に興味を持ったのは、以前に在籍していたリクルートで不動産情報サイトの「SUUMO」のサービス開発に関わったことがきっかけでした。
そこで日本の住宅の流通には大きな課題があると感じ、業界構造そのものを変革して課題を解決したいと強く思うようになったのです。そんな折、古巣のヤフーでかつての上司から「その課題をヤフーで解決しないか」と誘われて復帰を決意。
当時のヤフーは「課題解決エンジン」を標榜していて、自分がやりたいことができそうだと感じたんですね。そして再入社後は「Yahoo!不動産」のプロダクトマネージャーを務め、ソニー不動産(現SRE不動産)と提携して「おうちダイレクト」という、個人が自由に不動産を売り出せる画期的なプラットフォームも開発しました。
遣り甲斐は感じてはいましたが、自身のポジション変化等により次第に窮屈さを覚えるようになり、住宅の建設や流通に関する課題を解決できる場が他にないかと探していたところ、出会ったのがこのアンドパッドでした。
及川
この業界に疎くて申し訳ないのですが、どんな課題を抱えていて、どのような解決策が求められているのでしょうか。
山口
業界の課題を一言でいえば、情報の透明性に問題があるということです。
現状、日本の住宅というのは20年で価値がゼロになるという課題があります。減価償却の考え方で住宅の価値が判断されている。一方、アメリカでは築年数が経てば経つほど住宅の価値が上がっていくケースも珍しくない。
日本とは正反対で、なぜそうなるのかといえば、アメリカでは住宅を建てたり直したりした記録が公的機関によってきちんと管理されているから。質の良い住宅なのかどうか、その根拠が明示されているので年数が経っても価値が担保される。
しかし日本では、住宅がどう作られてどんな手が加えられたかという情報が記録されておらず、管理もされていない。物件の価値に関する情報が不透明で、一般のユーザーが不利益を被っているのがいまの日本の住宅建築業界なのです。
また建築の現場においても、本当に良い住宅を作ろうと頑張っている、職人の頑張り、仕事ぶりにフォーカスが当たりづらい。そうした業界構造を変えていきたいのです。