オープンプラットフォームのビジネスチャットで、利用者数国内NO.1(※)を獲得。
及川
まずは御社が手がける事業とプロダクトについてご紹介いただけますか。
山本
社名にも掲げている“Chatwork”というクラウド型のビジネスチャットツールを開発提供しています。ビジネスのコミュニケーションツールは、時代とともに電話、FAX、メール、そしてチャットとシンプルで効率的な手段に移り変わっています。我々は、このチャットをビジネスの世界で当たり前にすることを目指してChatworkを開発しました。
リリースしたのはいまから10年ほど前の2011年3月で、すでに導入社数は27万7000社以上(2020年7月末日時点)、登録ID数は356万人以上に及び、日本国内では利用者数NO.1のビジネスチャットの座を獲得しています。このコロナ禍で、リモートでコミュニケーションできるビジネスチャットの需要がさらに伸び、業績もきわめて好調です。
及川
ビジネスチャットの市場は近年、SlackやTeamsなど有力な競合も現れています。どのように差別化されているのでしょうか。
山本
そもそも市場におけるポジションが違います。
我々のメインターゲットは中小企業で、従業員数300名以下の中小企業が有料契約の86%を占めています。なかでもノンテックの業界、具体的には介護や建設、弁護士や税理士などの士業などのマーケットに強いのが特徴です。
あと技術的なアーキテクチャーの違いとして、Chatworkはオープンプラットフォームを採用しています。他社のビジネスチャットは、基本的に社外とやりとりする時にはゲストIDを都度発行して自分たちの世界に入ってもらう形で、ゲストはいろんなIDを切り替えながらコミュニティを渡り歩くことになります。
一方、ChatworkはひとつのゲストIDで社内と社外でシームレスにやりとりできるため、外部のパートナーやお客様とのコミュニケーションに使いやすいんですね。中小企業はビジネスが社内で完結せず、いろんなパートナーと組んで業務を進めるケースが多く、またお客様との距離も近い。そうした社外の方々も利用しやすい仕組みとして、Chatworkのオープンプラットフォームのアーキテクチャーが受け入れられています。
及川
実は、私の会社が契約している税理士事務所がChatworkのユーザーで、私も税理士とやりとりする時はChatworkを使っていますが、まさにオープンプラットフォームの利便性を実感しています。
私はテック系の企業とおつきあいする機会が多いので、通常はSlackを活用していますが、山本さんがおっしゃる通り、SlackはIDをすべて別々に持たなければならず、私は20個ほどのIDを駆使してコミュニケーションを取っているような状況。Slackもそれを改善すべく努力しているようですが、Chatworkとは根本的に思想が違うので、利便性の面ではやはりかなわない。
山本
Slackのようなアーキテクチャーは、閉じた世界でコミュニケーションする時には、各々のコンテキストに合わせていろいろと最適化できるので便利ですが、社外とやりとりするオープンなコミュニケーションはChatworkのほうが向いていると思いますね。
とはいっても、SlackやTeamsを敵視してはいません。ビジネスチャットはレッドオーシャンで競争が激しい業界だと言われていますが、実は日本企業の導入率は20%前後で、まだマジョリティではないんですね。真の競合は、会議やメールなどの旧来型のコミュニケーションであり、それを変革していくためにビジネスチャットを提供している各社が、それぞれ強いポジションで市場を開拓している最中。
ですからビジネスチャットを手がける企業とは、ともにマーケットを拡大していくパートナー関係にあると思っています。
(※)Nielsen NetView 及びNielsen Mobile NetView「2019年5月調べ 月次利用者(MAU:Monthly Active User)」より。調査対象サービスはChatwork株式会社にて選定