Webサービスの思想でゼロから構築したシステムで、斬新なオンライン証券を実現。
及川
まずは椎野さんがCTOを務めるFOLIOについてご紹介ください。
椎野
FOLIOは現在、テーマ投資型のオンライン証券を展開しています。当社のサービスは、通常100株以上の単位で行う株式取引を1株単位から可能にすることによって、10万円前後で分散投資ができる仕組みにしていることが大きな特徴です。お客様は興味や関心のあるテーマをえらぶだけです。
そして、我々がターゲットにしているのは、株式投資に興味はあるものの、心理的なハードルを感じてなかなか踏み切れない方々。そうしたみなさんに、もっと気軽に株式投資を楽しみながら資産運用してほしいというのが我々の想いです。
及川
2017年からサービスを開始されたとのことですが、いま事業はどのような段階にあるのでしょう?
椎野
2017年の7月にクローズドの招待制のベータ版をオープンし、11月から一般の方々に向けたベータ版を公開しました。2018年春以降にスマートフォンアプリにも対応したサービスを本リリースする予定であり、大々的なプロモーションも実施していきます。
及川
そのシステム開発を椎野さんが統括していらっしゃるのですね。
椎野
はい。我々は新しい金融システムを自らフルスクラッチで作り上げています。こうした取り組みは、おそらく日本の金融業界では珍しいのではないでしょうか。
加えて、私自身もそうですが、当社の技術陣には金融のバックグランドを持っているエンジニアが実は少ないんです。ゴリゴリの金融系技術者ではなく、これまでWebサービスを手がけてきた人間が中心になり、必要な機能を定期的に追加リリースしながら開発を進めているのも特徴的だと思います。
及川
証券などの金融システムに精通したエンジニアは世の中に結構いらっしゃると思いますが、敢えて専門家は採用されていない?
椎野
もちろん、証券のディーリングシステムなど特殊な知見が求められる領域の開発には専門のエンジニアを採用しています。
一方で我々が本当に実現したいのは、レガシーな金融をブレイクスルーして社会に新しい仕組みを創り出すことなんですね。サービスのコンセプトも、Webサービスと同じ世界観をユーザーに対して提供したいという想いがありますし、システムの構成も、モダンなアーキテクチャで少人数でも効率的に回せるようにという考えがある。
そうした観点で採用のターゲットを決めていることもあって、Webサービス企業の出身者が当社にフィットするのだと思います。
及川
お話をうかがっていると、従来の金融サービスとはまったく違うものを創ろうとされている印象がありますが、将来的なビジョンをお聞かせください。
椎野
FOLIOは新しい証券サービスを創ることからスタートしましたが、あくまでもそれは入口に過ぎません。FinTechという領域で考えると、それを補完する金融サービスはまだまだたくさんあります。たとえば決済とか、仮想通貨とか、そうした領域にもサービスを拡げていきたいと考えています。
そして、いま人々のお金に対する考え方に大きなパラダイムシフトが起こりつつあるなか、それに見合った新しい金融サービスを社会にもたらしていきたい。
少し抽象的な話ですが、ECやメディアなどの他のマーケットセグメントと金融を融合させて、いままでにない金融サービスを提供していく、そうしたプラットフォームをぜひ創っていきたいですし、そのための大型資金調達や業務提携も先日実施しました。
及川
プレスリリースを拝見しましたが、ゴールドマン・サックスなどから第三者割当増資で70億円を調達され、さらにLINEとも業務提携されたとのことで、御社への注目度や期待の高さがうかがわれます。
椎野
ありがとうございます。そのプレスリリースのなかでも少し触れていますが、資金調達や業務提携とあわせて、言語解析や機械学習、分散型台帳技術などの先端技術の研究を行う新しい研究機関を立ち上げ、金融を革新していく取り組みをさらに加速させていきます。
その根底にあるのは、我々が掲げる「資産運用をバリアフリーに」というミッション。日本の個人資産はまだまだ貯蓄に偏っています。貯蓄から投資へというのは、従来から指摘されている日本の大きな課題であり、それを解決しなければ日本全体の市場の地盤沈下につながり、ひいては個人の生活の質を落としていくことになる。我々はそこにチャレンジしているのであり、そのためのプラットフォームをこれから築き上げたいと考えています。