プロダクトの成功に最も責任を持つことが、PairsのPdMのミッション。
及川
まずはエウレカという企業についてご紹介いただけますか。
金田
エウレカは2008年に創業しました。当初は広告代理店などさまざまな事業を手がけていましたが、2012年にマッチングアプリのPairs(ペアーズ)を日本で起ち上げました。
現在、日本・台湾・韓国でサービスを展開し、累計会員数は1000万人を超えています。さらに2019年7月にPairsエンゲージを新たにスタートし、これらの2つのプロダクトを主軸に「かけがえのない人との出会いを生み出し、日本、アジアにデーティングサービス文化を定着させる。」というビジョンを掲げて事業を繰り広げています。
及川
金田さんはPairsのプロダクト責任者を務められているとのことですが、エウレカではプロダクトマネージャー(PdM)をどのように定義されているのでしょうか。
金田
エウレカのPdMの最大のミッションは、プロダクトの成功に最も責任を持つことだと捉えています。「成功に責任を持つ」というと漠然としていますが、私はプロダクトの方向性を正しく示し、そこに至る道筋を正しく定めるということと理解しています。
社内のPdMに対しては、プロダクトバックログを達成すべきテーマに向かって正しく優先順位をつけることにフォーカスしてほしいということに加えて、エグゼキューションにもしっかり目を光らせ、デザイナーやエンジニアとのコミュニケーションも日々気を配ってほしいといつも伝えています。
及川
現在、金田さんの下にPdMは何名いらっしゃるのですか。
金田
Pairsを担当しているのが4名。Pairsエンゲージはまだ起ち上がったばかりのサービスということもあって、事業責任者と兼任で1名で運営しています。
及川
エウレカのPdMのみなさんは、どんなバックグラウンドをお持ちなのでしょうか。
金田
エンジニア出身のPdMはいなくて、みなビジネスサイド出身の人間です。ビジネスのベクトルと、テクノロジーとクリエイティブのベクトルと合わせていく役割を担っている感じです。エウレカでは、デザイナーやエンジニアもビジネス目線を持った人材を採用していますので、PdMはそれを束ねられるようにビジネス寄りのバックグラウンドを持つ傾向があります。
及川
日本では御社のように、事業開発などの経験があるビジネスサイドの人間がPdMを務める傾向が強いのですが、一方で同じようなビジネスのバックグラウンドを持つPdMを目指す方から、テクニカルな部分をどこまで理解すべきかという相談をよく受けます。PdMを担う上でエンジニアとどこまで会話できればいいのか、お考えを聞かせていただけますか。
金田
難しい質問ですね。まず前提として僕自身、コード書くのは好きなんです。業務で経験したことはありませんが、趣味でAndroidのアプリを作ってみようとJavaでプログラミングしたことがありますし、PerlやPython、Rubyなどの言語を触ったこともあります。型通りでもいいので、自分で一度コードを書いてみると、アプリを動かすのはこういうことなんだというのが理解できる。それを体感しておくことは、ビジネスサイド出身の人間にも必要だと思いますね。
及川
プロダクトの開発においてビジネス側とテクノロジー側は対立しがちなのですが、エンジニアからすると、PdMがコードを書けるというだけである種の信頼が生まれます。
金田
テクノロジー側とビジネス側が衝突するのは、プロダクトの価値を上げることと、それを届けるためのコストを抑えることのトレードオフに起因することが多いと思うんですね。
トレードオフが生じた時、誰にも伝わる共通言語でテクノロジーがもたらす価値とビジネスから見た価値を説き、みんなが理解できる状態にまでもっていくコミュニケーション能力が必要なんじゃないかと。
僕も最初できませんでしたが、経験を重ねていく中で技術負債が生まれやすいケースをたくさん知り、また、専門的な技術用語に出くわしても翻訳することをあきらめない姿勢を持ち続けたことで、ここまで成長できたと思っています。