ビジネスパーソンのメンタルモデルを転換した“Sansan”
及川
まずはSansanがどのような事業を営み、どのようなプロダクトを開発されているのかをご紹介いただけますか。
西場
当社は設立して17年になるベンチャーで、営業DXや経理DX、法務DXなど、働き方を変えるDXサービスを提供しています。主力のプロダクトは、社名にも掲げている営業DXサービス「Sansan」で、もともとは名刺管理からスタートしました。現在は、名刺管理から収益を最大化する営業DXサービスとして、さまざまな機能やデータを蓄積する仕組みを搭載したプロダクトに進化しています。
及川
Sansanが究めていらっしゃる営業DXの領域において、具体的にどのようなサービスを提供されているでしょうか。
西場
Sansanというプロダクトは非常に抽象度が高い領域をカバーしており、このなかにさまざまな機能が追加されています。当初、Sansanは名刺管理のサービスとして有名になりましたが、現在は人脈管理や行動管理などの領域にまでサービスが広がっています。もう少し具体的にお話しすると、当社が最初に手がけた名刺管理は、ビジネスパーソンのメンタルモデルを転換したことに大きな意義があったと認識しています。それまで外部の人と交換した名刺というのは、それぞれ個人が管理するものであり、同じチーム内でも他人が交換した名刺に触れることは憚られました。ましてや社長が交換した名刺を自由に見ることなどあり得ない状況でした。それがこのSansanによって、社員全員が交換した名刺をデータ化してクラウドで共有することで、誰もが自由に閲覧できるようになり、そこから新たなビジネスチャンスを探り出せるようになったのです。さらに、名刺以外の接点を管理していくことにも取り組み、メールのやりとりも共有できるようになっています。こちらも、以前なら他人のメールボックスなんて見られるわけがないと思っていましたが、Sansan上で設定すれば、同僚がどの企業のどんな方といつメールをやりとりしたのかがわかるようになります。結果、より効率的な営業活動が可能になるとともに、上司が部下の行動を管理しやすくなり、マネジメントの向上にもつながっています。
及川
いままで知りえないと思われていたことを見えるようにすることで、ビジネスパーソンの意識や行動を変えたことに、Sansanの大きな意義があるというわけですね。
西場
ええ。さらにSansanに企業データベースを組み合わせることで、自社が持っている名刺の企業情報が紐づく仕組みも構築しています。そこでは、担当している企業の人事情報や財務情報などが絶えずアップデートされ、また新たなニュースがあれば通知されるので、わざわざ自分から情報を取りに行く必要がない。このデータベースに登録されている企業情報はすでに100万社以上に及んでおり、誰でも自在にその情報を入手できる。こうして組織全体で情報を共有しているからこそ、Sansanは大きな価値を生み出せるプロダクトになっているのです。
及川
Sansanが提供しているサービスというのは、CRMやSFAとは異なるものなのでしょうか。
西場
我々が携わっているのは、CRMやSFAよりも広い概念の領域だと捉えています。Sansanが担うのは接点管理や人脈管理であり、企業における広義のあらゆる営業活動を進めていく際に役立つものです。たとえばSFAは案件管理のソリューションですが、Sansanは案件単位ではなく、幅広く人脈を管理していくソリューションなので、共存することができ相乗効果も高いと思っています。さらに我々が溜めているデータは非常に特徴的で、企業が何かアクションを起こした時、人の行動レベルでわかりやすいログが蓄積されていくんですね。人と人が出会って名刺交換した時にその名刺が残るとか、外部とメールをやりとりした時にその履歴が残るとか、きわめて明確なログが蓄積されてデータベース化されていく。そこに我々のサービスの源泉があると思っています。たとえばいま、請求書のやりとりが発生する時に残るログから、その処理業務を効率化するBill Oneというサービスも起こしていますし、あるいは契約書をやりとりしたログを共有し、全社で契約情報を活用できるContract Oneというサービスも立ち上げています。つまり、その企業が何らかの営業活動をすると残るログがすべてデータベースとして集約されていくことに当社は価値を見出しており、そこから我々ならではの営業DXを実現したいと考えています。