法務に必要な業務をすべてサポートする「LegalOn Cloud」をリリース
及川
まずは谷口さんがCPOを務められるLegalOn Technologiesについてご紹介いただけますか。
谷口
LegalOn Technologiesは、2017年に弁護士である角田と小笠原が共同で起ち上げた企業です。基本的な事業内容としては、法務業務に関するさまざまなソフトウェアの開発・提供を行っており、2019年4月には日本で初めて契約書のレビュー業務をAIでサポートする「LegalForce」というサービスをリリースしました。続いて2021年1月には、締結済みの契約書をAIで管理する「LegalForceキャビネ」というサービスを提供し、この2024年4月にも「LegalOn Cloud」という新たなAIプラットフォームサービスを発表しています。
及川
ありがとうございます。続いて、谷口さんご自身のご経歴を教えてください。
谷口
私はもともと日本の大学院では半導体チップの研究に携わっていました。半導体チップにシリコンではなく有機物質を用いて、言わば人間の脳のような形で情報を処理させる研究に取り組んでいたのですが、個人的に法律と経済についても勉強していて、社会に出るにあたっては国家公務員総合職(旧I種)試験を受けて経済産業省に入省しました。経産省では法令審査業務を担当し、また、当時の小泉純一郎総理の秘書官補としてさまざまな政策の立案にも従事。その後、2つの海外大学院留学を経てIT業界に転身し、楽天でコンテンツ事業の責任者を務めたり、スマホ向けAR/VRアプリを開発するベンチャーを率いるなどいろんな経験を重ねた後、2022年にLegalOn Technologiesに参画しました。こうしてキャリアを振り返ると、半分は行政でリーガルに関わり、もう半分は民間でアプリ開発などのITに関わってきて、それが融合する場がLegalOn Technologiesでした。
及川
お話をうかがっていると、谷口さんのキャリアはかなり変遷しているようにお見受けしますが、ご自身の中で何か「軸」のようなものがあるのでしょうか。
谷口
確かに、いろいろなことを手がけて大きく変わっているように見えるかもしれませんが、もともと私が志していたのは「ITで社会を幸福にしたい」ということ。学生時代に半導体チップの研究に取り組んだのも、先端技術でITがもたらす価値を最大化したいという思いからでした。そして、成果が出るまで長期間を要する基礎研究よりも、社会が抱える課題をリアルに解決したいと官僚を志し、経産省に進んだのですが、中央官庁でも自分が企画したことが法律になって施行され、社会に影響を与えるまで数年かかるという時間軸なんですね。もっとスピーディーに自分の企画をローンチし、社会からフィードバックを受けて改善していく仕事がしたいと、民間のIT企業に移籍。学生時代はハードウェア側からのアプローチでしたが、社会人になってからはルールやソフトウェア側からのアプローチに変遷してきたという感じでしょうか。
及川
なるほど。谷口さんの中で、ITで世の中を良い方向に変えていきたいという思いは一貫されているのですね。それでは、谷口さんがLegalOn Technologiesに入社されてから、どんな業務に取り組んでこられたのか教えていただけますか。
谷口
私が入社した時には、先ほどご説明した「LegalForce」と「LegalForceキャビネ」の二つのサービスがすでにリリースされていて、私は「LegalForce」のプロダクトマネージャー(PdM)を務めることになりました。我々が関わるリーガルテック業界は新しいドメインであり、昨今さまざまなベンチャーが参入し、企業法務の特定の局面を切り取って、そこで抱えているペインを解消するソリューションを提供しています。まだまだ1社1プロダクトという形態であり、お客様である企業の法務部は複数のサービスを契約しているのが実情。ひとつひとつのサービスは業務効率化に繋がっているのですが、サービス間の連携が面倒で手作業に依っているところが多く、そこにユーザーの方々はストレスを覚えていたんですね。その課題を解決するべく、私がリードPdMとしてローンチしたのが「LegalOn Cloud」。これは法務に必要な業務をすべてサポートするもので、「LegalForce」と「LegalForceキャビネ」も内包し、契約書のレビューや管理はもちろん、お客様の事業部門が新規事業を起ち上げる際の法務相談まで、このプラットフォーム上で一元的に実行できます。当社ではこの「LegalOn Cloud」というプラットフォーム上で提供するサービスそれぞれにPdMが配置されており、二桁の数に及ぶPdMを擁しています。その全体を統括するポジションをいま私は務めています。