過去のスキル・経験に頼りすぎると、キャリアは先細っていく
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2022年5月18日
20年前の事例を扱っていた研修の満足度は下がっていった
先日、人材開発会社の社長をしている友人の話を聞き、「昔のスキル・経験に頼りすぎるリスク」を感じました。今回は、そのテーマについてお話しします。
友人は大学時代に巨大サークルの代表を務め、外資系戦略ファームを経て、人材開発会社を起業しました。複数の著書を執筆し、大学で教鞭を取り、フットワークが軽く多方面の方々と情報交換しているため、新鮮で示唆に富んだ話を聞くことができます。
そんな彼から聞いたのは、パートナーシップを結んでいた外部講師との契約を打ち切ったという話でした。理由を聞いてみたところ、「以前は人気講師だったものの、研修内容が変わらなかったために、少しずつ受講生の満足度が落ちてしまった」とのこと。
具体的には、研修で日産のCOOだったカルロスゴーンが、1999年に発表したリバイバルプランを取り上げていたそうです。リバイバルプランとは、4年間で2兆1,000億円もの巨額の借金を完済するという、素晴らしい成果をあげた事例です。
今でも学べる要素はあるものの20年以上前の事例を使っていると、時代錯誤な研修という印象をもたれたのでしょう。例えば、今自動車業界の事例を扱うならば、「新興企業のテスラがなぜ老舗トヨタの時価総額を抜いたのか」というケースが適しているのではないでしょうか。
20~30代の経験・スキルだけで、長いビジネス人生は乗り切れない
私はこれまで「20~30代は成長環境に身を置き、その資産で40代以降のキャリアを安定させた方がいい」というアドバイスを求職者さんにすることがありました。しかし、先ほどのエピソードを聞いて、少し考えが変わりました。
もちろん若いうちの経験・スキルが、キャリア人生の後半において大きな土台になるという考えは変わりません。ただし、今は世の中の流れがとても早く、ビジネス人生がより長くなっています。
そのため、常に最新のビジネスやクライアントの課題に触れ続け、自社だけに閉じず社外から積極的に情報収集して、進化し続ける必要があります。
過去のキャリア資産だけで、その後がずっと安泰であることはほぼないでしょう。特に独立やフリーのコンサルタントとして働き、過去の経験・スキルを切り売りする形に留まっている場合は要注意です。
年齢を重ねると若い時のようにハードワークはできなくなるかもしれません。しかし、第一線で活躍していた方なら、経験・実績が豊富な方々との人脈が形成されているはずです。
そのネットワークを有効活用すれば、生産性の高いインプットも可能になるでしょう。実際に私の周囲を見渡してみると、一定の年齢を重ねたミドルからシニアクラスで活躍されている方々は、外部の情報資産を有効活用されている方が多いと感じます。
今回の話は、私自身が深く反省するきっかけにもなりました。というのも、ついつい自社の中で「昔は○○だった~」という話をしてしまいがちだからです。しかし、繰り返していると『昔話おじさん』になってしまうと感じました。昔話はほどほどにして、温故知新の精神を持ちながら、『今』と『未来』を大切にしていきたいと思います。
(2022年5月18日)