主語を変えれば、視座は上がる
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2023年3月20日
視座が上がると、転職活動の成果だけでなくキャリアや人生も変化する
経営幹部層の選考において、お見送りになる理由として「視座が低い」と聞くことは多いです。例えば、ある企業からお聞きした理由は、以下のようなものでした。
スキルや経験は魅力的でした。しかし、転職理由や会社選びの基準を話すときに、「自分がこういうことをしたい」「こういうキャリアを希望している」など、主語が「自分」である話が多い印象でした。
ジュニアクラスであれば問題にはなりませんが、経営幹部という非常に重要なポジションです。「もっと社会をこのように変革したい」「社会にこのようなインパクトを残したい」というパッションが欲しいと感じました。
このように、経営幹部の採用においては、経験・スキル以上に人格や考え方を重視するケースが多いです。人格で違和感がある場合は仕方ないと思いますが、考え方は意識次第で変わる部分でもあり、もったいなく感じるケースが少なくありません。
また、視座が上がれば転職活動での評価に限らず、キャリアや人生も大きく変化するのではないでしょうか。
視座を上げるために、主語を変えるというアプローチ
視座はどのように上げたらよいのでしょうか。一つのヒントになるのは、先ほどのお見送り理由にもあった「主語」です。主語を自分ではなく、「チーム・組織」→「会社」→「業界」→「日本」→「世界」と変えていくだけで、視座が上がります。視座が変われば、考え方や言動にも変化があるでしょう。
先日、非常にビジョナリーで人を魅了する経営者のスピーチを聞く機会がありました。人々を魅了していた要素に、「視座の高さ」が確実に含まれていると感じましたので概要をお伝えします。
その場では多くの経営者がスピーチをしているなか、Aさんは会場の雰囲気を一変させるほどの圧倒的に感動するスピーチを行いました。
内容としては、社会課題解決に資する事業を展開する起業家への応援メッセージです。
要点をピックアップすると、以下の通りです。
●世界情勢から見た、今の日本の課題や現状
●起業家は社会の中核的な役割を担っている
●人は2年もあればいくらでも変われる
●その典型例がJAL。JALは9500億円の債務超過で倒産したが、たった2年で再上場。3万人の会社が2年で生き返った
●その2年を仕切った稲盛さんが話した、成し遂げられた理由は2つ。
一つ目は、「動機善なりや、私心なかりしか」
二つ目は、矛盾した問題の制約条件に苦労しながらも乗り越えられるか
●JALは安全第一と言い続けて9500億円の借金を作って潰れた
●良いことをやっているだけではダメで、しっかり稼いで続けられないといけない。この矛盾を乗り越え、考えて実行することが経営者、リーダーの仕事
●皆さんが良いことをしていることは知っています。しかし、その結果潰れてはいけない
●ここにいる起業家の皆さんが、一人も欠けることなく生き残れるようにみんなで応援していきましょう
テキストではなかなか伝わらない部分もあると思いますが、このスピーチには大きな拍手喝采が巻き起こりました。世の中を動かすのは、こういう人なのだと感じた出来事でした。
そして、視座を上げるためのアプローチのひとつとして、主語を変えて、言葉(考え方)を変えていくことが有効ではないかと思うのです。
(2023年3月20日)