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決定者の声 株式会社アンドパッド取締役CFO 荻野 泰弘 氏

枯れることなく水が湧き続ける泉のように。
オーナーシップを持ち、企業価値の向上に邁進する

公開日:2023年9月20日

株式会社アンドパッド取締役CFO 荻野 泰弘 氏

Profile

荻野 泰弘
慶應義塾大学経済学部卒業。
株式会社マクロミルにて財務経理本部担当執行役員として、東証一部上場企業の財務全般に携わる。その後モバイル系ベンチャーの取締役CFOを経て、株式会社ミクシィにて企業買収、合弁会社設立等、投資全般を担当。同社取締役CFO就任後は2度の資金調達、グローバルオファリングを実行。米国金融専門誌「Institutional investors」が選定するBest CFOを2年連続で受賞。2020年より株式会社アンドパッドに取締役CFOとして参画。

インタビュー写真1

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オーナーシップを持ち、この会社やサービスを我が子のように死ぬまで愛し続けられるか。

まず初めに、荻野さんのこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますか?

私は大学2年生の夏から29才まで、一度も就職をせずに個人投資をしていました。30才になる直前にマクロミルに入社して1年半後にCFOに抜擢いただき、「1年半でニートからCFOになった」と社内報でも掲載いただきました(笑)。その後、2008年にクライスの岡田さんに初めてお世話になり、ご紹介いただき転職したジェイマジックでは、2008年秋のリーマンショックの影響で売上が前年の3分の1まで落ちてしまい、膨大な資金調達が必要となる中で、最後は会社を売却して事業のアセットやノウハウを活かして成長させようという方針を決定し、買収される立場で2009年にミクシィへ参画しました。

2011年には小泉文明さん(現・メルカリ 取締役 President)からCFOをバトンタッチしたいとの話をいただき、悩んだ末に引き受けてからは、「CFOが天職なのだな」と思いながらモンスターストライク等の新規事業の種蒔きから全体的な構造改革まで、社長に近いロールで行っていました。最後の2年間はCFOロールを後任の方にバトンタッチして新規事業の立ち上げに注力していましたが、2019年に自分が命を削って創った新規事業に対して経営会議でこれ以上の投資はストップしようとの決議がなされた時に、私の中でミクシィでの役割は終わったなという思いがありました。

それまで社会人として駆け抜けて来て、ミクシィでも日本で初めての取り組みとなる資金調達を国内外で実現したことを世界中の投資家から評価いただき、「Best CFO」という賞を2年連続でいただきました。これは、例えるならオリンピックで金メダルを2回獲ったような感覚だったので、もうこれ以上の目標は無いからまた20代の頃に戻って余生を楽しく暮らそう、と(笑)。そのタイミングで岡田さんに「ミクシィを辞めることになりました。これから世界一周旅行に行ってきます」という話をしたら、「それはもったいないですよ。荻野さんがCFOとして活躍する姿をもう一度見たいです。日本中、世界中でどこか1社でも荻野さんがCFOをやりたいと思える会社があったら、私が全力でお繋ぎするから考えてみて欲しい」と言われたんです。私はアメリカ西海岸のナパバレーでブドウ畑のオーナーになろうと思っていたのですが、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と。それで、世界一周旅行に行く前に岡田さんが探してきてくれた企業リストを見たら、1社だけ興味があるなと思えたのがオクト(現・アンドパッド)でした。私もCFOとして知り合いは多かったので直接コンタクトを取ることもできたものの、最初にこのような問いを投げかけてくれた岡田さんに紹介をお願いして、社長の稲田に会いに行ったというのが転職前夜祭的な話です。

荻野さんがキャリアを築いていかれる上で、意識されていたことはありますか?

自分が常に意識しているのは、オーナーシップです。CFOは投資銀行や会計士のご経歴をお持ちの方が多いですが、そのようなバックグラウンドは何も無い自分がなぜ天職のようにCFOとして色々な会社で求められるのかというと、やはりオーナーシップだと思います。独特な表現になってしまいますが、私が会社に所属しているのは、子育てをしている親のような感覚があります。投資銀行や会計士の方は、塾講師や家庭教師、学校の先生に近いのではと思っていて、彼らは色々な子供を見ているからアドバイスもできますし、答え合わせも得意ですが、ではその人が子育てできるかどうかというと、まったく別の話だと思うんです。

私は多数の子供の中から伸びそうな子供を選抜するタイプではないと思っていて、キャリアの途中途中でベンチャーキャピタルや投資家の道を勧められたこともあったのですが、毎回考えてみてもやはりそこに興味は無いという結論になっているんですね。自分がオーナーシップを持ってこの会社やサービスを我が子のように生まれてから死ぬまで愛し続けられるかどうかを、キャリアの中では大事にしています。

Best CFOの2年連続受賞は本当に凄いことですね。なぜ受賞できたと思われますか?

世界の投資家の方々は、恐らくスナップショットでその年の私の活躍を見てくれたのではなくて、動画で私の動きを見ていただいていたのだと思います。2012年6月の株主総会でミクシィのCFOに選任された際、売上高130億円、営業利益20億円、時価総額は200億円を下回る水準の会社でしたが、選任約1ヶ月前からの私の動きとしては、当時ブラウザのエンジニアが大半だった中で、ネイティブアプリのエンジニア組織を4名から50名体制まで拡大し、1年間かけてモンスターストライクをリリースしました。投資が先行し、2013年に上場来初の赤字となったところから翌年の期末決算発表では売上高450億円、営業利益200億円、時価総額3,000億円まで持っていくことができました。世界の投資家の方々には、運よくホームランを打てたということではなく、会社の構造変革からやり切ったところを見ていただいたのだろうと思います。

そこからゲーム事業で得た収益をもとに、さらなる事業拡大や新規事業の立ち上げ、海外展開などを加速し、2年後には売上高2,000億、営業利益900億、時価総額5,500億円に。私の場合は、CFOとしてというよりも、インオーガニック(非連続)な成長を生み出していくことで企業価値を上げ続けていった点が評価されたのではないかなと思います。

インタビュー写真2

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アンドパッドをカテゴリーリーダーにしたい。
圧倒的なスピードで世界を変えて行く。

荻野さんがコミットしたい企業かどうかは、どのような点を見ておられるのでしょうか。

これは当然のことながら、上場して一儲けするという私利私欲ではなく、未来に誰を幸せにしたいのかを考えて、明日無くなったら困るというぐらい世の中の人達から価値を感じてもらえるサービスを創ろうと思っているかどうか。その経営者が目指す高みがどれだけ大きいものなのかどうかは直接会話をすれば一目瞭然なので、見ている点としてはその点が大きいですね。

CFOを採用するために重要なのは、CFOの要件定義を正確にすることでも誘い方でも給料でもなくて、「世界を変える子供(のようなサービス)を一緒に生み出そう」ということを、その理由も含めていくらでも語り合える経営者かどうかだと考えています。そういう経営者は魅力的ですし、逆にその事業が解決できる対象が非常に限定的な課題であったり、個人のやりたいことだったりすると、そこに魅力はなかなか感じにくいなと思いますね。

アンドパッドの稲田社長と初めてお会いされた時のご印象はいかがでしたか?

私はこれまでマクロミルの杉本哲哉さんやミクシィの笠原健治さんという、対照的とも言える創業者の方々のもとでCFOを務めてきました。マクロミル創業者の杉本さんはビジネスやお金に対して研ぎ澄まされた感覚を持ち、人間的な魅力で人を動かすことに非常に長けた方です。言葉の選び方のセンスや、全社総会で話す内容にしても、皆がこの人のためにやろうと思うような魅力がある。

一方で、ミクシィ創業者の笠原さんはサービスやユーザーに対する愛情が物凄く深い方です。ユーザーが1ミリでも傷つけられているのが許せないというぐらい、繊細なガラス細工をつくる職人のような感じですね。そういう特徴的で天才的なお二方を間近に見ていたので、世の中の経営者とはこのような2つのタイプがあるんだなという印象があったのですが、初めて稲田に会って10分20分話した時に、「ビジネス系とものづくり系の両方の要素を兼ね備えている経営者が存在するのか」という衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。

荻野さんが描いておられる、アンドパッドの未来についてお聞かせください。

私が目指しているアンドパッドの未来は明確であり、カテゴリーリーダーです。ミクシィ時代に世界中の投資家からは「何のカテゴリーリーダーを目指すのか」と常に問われていて、私がアンドパッドに参画した時にも強烈に意識していたのはカテゴリーリーダーでした。カテゴリーリーダー不在という状態は、消費者・ユーザーに対して不誠実だなと思っています。カテゴリーリーダーが生まれる未来は、企業がユーザーを無視したシェア獲得の争いではなく、真の社会変革に向けて動けるので、より多くの人を救えるはずです。

だからこそ私は、アンドパッドをカテゴリーリーダーにしたい。とは言え、建設・建築業でこれだけテクノロジーカンパニーとして伸びると様々な会社がこれは儲かりそうだと次々に出てきて、不幸な利用者が増えてしまうので、その前に圧倒的なスピードで世界を一気に変えていかなければいけない。最短最速でどうすれば圧倒的なカテゴリーリーダーに辿り着けるのか、日々ずっと考え続けているところですね。

インタビュー写真3

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CFOに必要なのは、スキルやテクニックではない。
企業価値を上げることへの執着心と情熱。

荻野さんと、人材紹介エージェントとの関係性についてもお伺いできますでしょうか。

私はエージェントの方とのお付き合いはほとんど無いですね。私は企業に入ったらそこを自分から辞める気が無いので、エージェントに会う理由が無いんですよ。ただ、自社の採用ではエージェントにお会いしますが、会社が大きくなって人事部の組織体制も確立してくると、採用も直接私がダイレクションするわけではないのでその機会も無くなるんです。

岡田さんとは毎年恒例のようにお会いしていますが、私も岡田さんから元気をもらっているので、ビジネス目的というよりも友人として会っている感覚ですね。岡田さんの良いところは、マイナスオーラが無いところだと思います。私もマイナスな言葉は極力使いたくないと思っていて、自分は雨男だとは決して言わず、どんな時でも私は晴れ男だと言うようにしています。その点で、岡田さんはいつ会っても晴れているなというイメージがあります。

とてもありがたいです。初めてお会いした時に個人投資のお話などを伺って「こんなに面白い方がいるのか」と思ってから今に至るまで、不思議なご縁が繋がっていますよね。

ジェイマジックでのキャリアは、自分の人生でなくてはならないものだと思っています。経営者として最も大事なオーナーシップをジェイマジックでリアルに学んだと感じていて、経営者の目線と覚悟を持てるようになりました。そこで生きる喜びを覚えてしまったが故に、ミクシィで小泉さんからCFOをバトンタッチするというお話を受けた時にも、ジェイマジックのハードシングスを乗り越えてきた自分ならば何とかできるかもしれないと思えたのだと思います。本当に、岡田さんには人生を変えていただいて感謝しかないですね。

最後に、エグゼクティブを志す方に向けて、ぜひメッセージをお願いします。

よく「どうしたら荻野さんみたいになれますか?」と聞かれますが、一貫して伝えているのはスキルやテクニック等は必要ないということです。私は、この会社の企業価値が上がることに対して絶対に執着心と情熱だけは失わないと思っていて、周囲がどんなに砂漠で水一滴出てこない状況であっても私の中からはオアシスが滾々と湧いてくる感覚があり、何があっても次の一手を生み出せる自信があります。未来に対するアイデアの風呂敷が広がりすぎて、これでどれだけ社会課題を解決できるんだろうと考えた時に、ワクワクが止まらず泉から水が湧き続けている状態なんです。周囲の人達は砂漠で疲弊していると思いますが(笑)。そこで水を欲している人達に元気を与えることで、小さな泉が周りにどんどんできてくると私としても嬉しいですね。もし今後自分の執着心と情熱の泉がふと枯れてしまう瞬間が来たら、その時には自分からバトンタッチしなければいけないと思っています。

企業の面接に行く時に、「この会社は自分に何の仕事をくれるんだろう」「自分をいくらで雇ってくれるんだろう」という感覚で臨む方もおられると思いますが、その姿勢はむしろご自身のマーケットバリューを落としているのではないかと感じます。そうではなくて、自分はこの会社をどれぐらいの企業価値にできるんだろうと考えてみる。企業価値が上げられれば、当然ながら自身の報酬や役職も上がりますし、逆を言えば、その絵が描けていないのにどうしてその会社に行こうと思えるのかということです。私は入社前に稲田と3ヶ月にわたりディスカッションを重ねた時に、「アンドパッドを3兆円企業に持って行けるイメージがついた」と言い切りました。アンドパッドに入る前の段階から、既に自分の中では「この会社をこれぐらいの価値にしたい、できる、すべき」との思いがあったんです。エグゼクティブを目指す皆さんには、ぜひそういうワクワクする形で参画して欲しいですし、自分がどれだけ企業価値を上げられるのかを明確にイメージできる会社に人生を捧げて欲しいと思います。

構成:神田 昭子

撮影:波多野 匠

  • ※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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