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決定者の声 Chatwork株式会社
上級執行役員CHRO 兼 ピープル&ブランド本部長
鳶本真章氏

他人が敬遠する選択肢の中から、自分の仕事を選ぶ。
それが、将来CXOになるための糧となる。

公開日:2024年6月17日

Chatwork株式会社<br>上級執行役員CHRO 兼 ピープル&ブランド本部長<br>鳶本真章氏

Profile

鳶本 真章
大手自動車メーカーにてマーケティング領域に従事した後、京都大学大学院でのMBA取得を経て、大手外資系コンサルティングファームへ。その後、複数のベンチャー企業での経営支援を経て、2018年に株式会社トリドールホールディングスに入社し、同グループ全体の組織・人事戦略をリード。2019年より、同グループ執行役員CHRO兼経営戦略本部長に就任。2023年10月、Chatwork株式会社上級執行役員CHROに就任。

インタビュー写真1

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人がやりたくない仕事を敢えて選べば、すぐに自ら采配できる機会を得られる。

鳶本さんは新卒で日産自動車にご入社されています。就職先に日産自動車を選ばれたのは、どのようなお考えからですか。

それは私の家庭環境が大きく影響しています。私の実家は祖父の代から建設業を営んでおり、跡を継いだ父親が事業を拡大し、一時はとても成功を収めていました。しかし、バブル崩壊のあおりを受けて経営が悪化し、高校生の時に倒産してしまったのです。私は大阪の企業城下町の出身で、地元には町工場がたくさんありましたが、同じように経営に失敗し、倒産の憂き目に遭っている会社も数々目の当たりにしました。そんな体験から、経営の力が足りない中小企業を支援する参謀のような存在になりたいという志が湧き、そのために必要なことは何でもできる人材を目指そうと思ったのです。そして、事業の基本はモノを売ることだと考え、まずはそれを理解しようと大学でマーケティングを学び、卒業後は職種別採用を実施していた日産自動車にマーケティング職で入社。自動車という生活者にとって価値の高い商品を扱い、川上の企画から川下の販売まで一貫して関われるので、マーケティングを究めるのに絶好の場だという思惑もありました。

その後、日産自動車を退職されて京都大学の大学院に進学し、修了後、コンサルティングファームに転職されています。それはどのような経緯だったのでしょうか。

日産自動車のことはいまでも好きで、私の基礎を作ってくれた会社だと感謝していますが、自動車産業の中でマーケティング力をつけたいという考えで入社したこともあり、そこでキャリアを全うすることは考えていませんでした。私としては、常に自分が成長できる環境に身を置きたいという思いがあって、日産自動車でマーケティングに携わるうちに、経営には会計なども含めて総合的な知識やスキルが必要だと強く感じ、京大の大学院に通ってMBAを取得したのです。その後、コンサルティングファームに入社したのは、経営参謀になるための次のステップとして、ロジカルに物事を考えて説く力や、クライアントからのプレッシャーのある環境で案件を成し遂げていくプロフェッショナリズムを会得したいと考えたから。なかでも、戦略から実行まで関われる外資系の大手コンサルティングファームを選び、そちらでまた新たなキャリアを重ねました。

コンサルティングファームでキャリアを積むなかで、意識されていたことはありますか。

私は、自分が楽しいことと自分がやるべきことのバランスが重要だと考えていて、好きなことばかりを追求していると、有意義なキャリアは築けないと思っています。他人が選ばない選択肢を敢えて選ぶことで得られるものがあり、その先のキャリアに繋がっていく。ですから、コンサルティングファームで得たことをベースに、新しい環境の中でまたゼロからキャリアを作っていくこと、いまで言うところの“アンラーニング”を当初から意識していました。

他人が選ばない選択肢を選ぶことで得られるものがある、というのは、具体的にどのようなことなのでしょうか。

たとえばAとBという仕事の選択肢があって、Aのほうが一般的に魅力的とされる内容だとすれば、普通はAを選びますよね。しかし、Aの仕事には多くの人が押し寄せるので、順番待ちになるんです。一方、やりたい人があまりいないBの仕事なら、すぐに自ら意思決定できるポジションに就ける。コンサルティングファームでいえば、たとえば人事戦略ならば制度を作って検証し、オペレーションに落としていくという愚直なプロセスは敬遠されがちなんですね。でも、やりたい人がいないからこそ、敢えてそれを選択すると、アサインされた翌日からある程度の裁量を委ねられ、自分で采配を振るうことができる。そこで結果を出せば、他の案件でも「あいつに任せておけば問題ない」と認められるようになり、自分の仕事の幅が広がっていた感じですね。

インタビュー写真2

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自分がやりたいことではなく、会社にとってやるべきことを愚直に実行していく。

コンサルティングファームを経て鳶本さんはLIXILに転職されています。LIXILでの経験はご自身にどのような影響を与えましたか。

当初から、コンサルティングファームで3~4年キャリアを積んで事業会社に移る考えでした。実家が建設業を営んでいたので、住まいに関する事業を展開するLIXILに興味を持って入社し、こちらでもさらに貴重な経験を得ることができました。LIXILは複数の事業会社が統合して生まれた企業で、多様な企業文化が混在しているんですね。そうした組織を動かすのは本当に難しくて、意図がそれぞれ勝手に解釈されて、まず正確には伝わらない。方向性をひとつに定め、明確な判断基準を示しても、それでもミスコミュニケーションは絶対に起こる。それを想定してプランを立てることの重要性をLIXILで学び、それが私の基本姿勢になっています。また、事業会社でのマネジメントを初めて経験したのもLIXILでした。自分でチームを持って数十人の部下を抱え、全社横断のイニシアティブをリードする責任者を務めたことも。そこで、自分一人でゴールを達成するよりも、チームのメンバーとともに大きな目標を成し遂げるほうが気持ちいいと実感し、もっと大きな単位をマネジメントしてみたいという志向がいっそう強くなりましたね。

そしてトリドールに転職し、そちらで役員を務められています。トリドールではどんな学びを得られたのでしょうか。

トリドールには経営企画部の一般社員として入社し、9か月後には執行役員に昇格しました。上場企業の役員というポジションには、やっぱり憧れもありました。でも、実際にその立場に就いてみると、役員など偉くも何ともなく、ひとつの役割に過ぎない。LIXIL時代から感じていたことですが、自分一人の力では結局何もできなくて、同じ思いを持ったメンバーが集うチームを作り、彼らの力を引き出すことで大きな仕事が成し遂げられる。役員になって管掌範囲が広がっても、それが変わることはなく、どんなに優れた経営戦略を描こうとも、それを実行するのは現場の従業員たちであり、その助けなくして私のポジションは成り立たない。そんな当たり前のことをあらためて学び、上場企業の役員にただ憧れていた私を恥じましたね(笑)。

入社9カ月で執行役員に昇格するのは、異例のスピードだと思います。鳶本さんのどんなところが評価されたのでしょうか。

自分がやりたいことではなく、あくまでも会社のためにやるべきことを愚直に実行していったからでしょうか。これは私のポリシーでもあるのですが、自分のことなんてどうでもよくて、一緒に働く人のために力を尽くしたい。そちらのほうが私自身も気持ちがいい。ですから、会社とそこで働く人たちにとって必要な取り組みだけれども、みな敬遠して手をつけてこなかったことを見つけ出し、どんどん提言して実行に移していきました。店舗の現場で困っていることが見受けられれば、実際に足を運んで現場のスタッフとともに解決にあたりましたし、そうした姿勢が信頼を得て、CHROのポジションを委ねてくれたのだと思います。

鳶本さんは、「会社としてやるべきこと」を徹底的に実行することで役員に昇格されたとのことですが、一般社員のレベルではそれを見出すのは難しいようにも思います。どのようにして経営が抱える課題を見つけ出していかれたのでしょうか。

とにかく会社のことを理解しようと努めました。普段からIRをつぶさに見ていましたし、中期経営計画などもしっかりと把握し、就業規則もすべて読み込むというマニアックなことも(笑)。また、ネットの株価の掲示板なども絶えずチェックしていて、そこで何か反応があると自社の経営状態と照らし合わせて分析するなど、自分なりに結構いろいろなことをやっていました。そうして会社の現状をリアルに理解することで、経営への提言にも説得力が出る。私は会社に対してモノをはっきりと言いたいタイプなので、発言に力を持たせるためにも、日常的に情報収集することを強く意識していましたね。

そして現在、鳶本さんはChatworkに参画されてCHROを務められています。Chatworkに移籍された経緯を教えてください。

当時、自分が置かれた立場に何か不満があったわけではないんですね。CHROとしてトリドールの成長に貢献することができ、そのことにはとても充実感を覚えていました。ただ、ちょうど30代が終わるタイミングで、あらためて自分の生き方を思い直したんですね。私としては、20代は必死に自分に投資し、30代は自分の周りの環境に投資し、40代はそれを社会に対して還元するような生き方をしたいと考えていて、自分がもともと志向していたのは実家のような中小企業の経営に貢献することだと。それをより直接的にできる場はないかと思っていたところ、クライス&カンパニーのコンサルタントの工藤さんからChatworkをご紹介いただいたのです。CHROを担う人材を探しているとのことで、そのポジションへのオファーでした。

インタビュー写真3

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「自ら意志決定する」「内省する」「自分を認める」を重ねていくことが大切。

Chatworkのどこに魅力や可能性をお感じになられたのでしょうか。

「Chatwork」というプロダクトはまさに中小企業全般が抱える、社内コミュニケーションの課題を解決するものでした。あとはお会いしたCOOの福田(升二)さんが本当に優秀で、これまで私が接してきた経営者の中でも一、二を争うぐらいの方でした。あまりに優秀すぎて、私は「福田さんがCHROも兼務したほうがいいのでは?」とお伝えしたのですが、「確かにできないこともないが、私がやると超合理的な会社になる。人材というのは非合理的なもので、それを合理性をもってマネジメントすることが重要で、その役をより専門性を持った人材に託したい」とおっしゃられて、感銘を受けたんですね。面談自体も本当にとても楽しくて、あっという間に時間が過ぎていきました。創業者でCEOの山本(正喜)さんとの面談も大きなインパクトを受けました。Chatworkは『働くをもっと楽しく、創造的に』というミッションを掲げており、私も大いに共感しましたが、山本さんは本気でこのミッションを達成しようとしている。すでに上場も果たし、満足されていても良さそうなのに、ミッション達成への志がまったく衰えていない。山本さんとの面談も大いに盛り上がって、時間が全然足りないと感じました(笑)。そして終了後、すぐに工藤さんに「こんな機会を提供してくださって感謝します」と興奮して連絡したのを覚えています(笑)。すごく偉そうな言い方になってはしまうのですが、「この人を日本一の社長にしたい」と心から思えて、それもChatwork入社の決め手になりましたね。

Chatworkでのキャリアはいかがですか。

本当に毎日が楽しいです。会社が成長すれば、ここに集う社員たちの喜びが高まり、成長できる可能性も高まっていく。そうした状態を目指していきたくて、社員にはみな楽しく働いてほしいんですね。そうした環境をつくるのが私の使命だと捉えていて、本来は私がいちばん仕事を楽しんでいるようではダメなんですけどね(笑)。

Chatworkへの転職をクライス&カンパニーがご支援させていただきましたが、弊社をどのようにご評価されていますか。

コンサルタントの工藤さんとは、もう10年以上のおつきあいになります。以前からも折に触れて相談に乗っていただいていました。もはや転職エージェントではなく、私にとっては大切な親友、仲間という感覚です。工藤さんが素晴らしいのは、適切なアドバイスをいただける一方で、けっして転職をあおるようなことはしない。私がどういう軸でキャリアを歩もうとしているのかをきちんと理解していただいて、寄り添ってくださるんですね。私はこれまで何度も転職を重ねており、こうした人材は企業側も「入社してもすぐに離れてしまうのでは?」と嫌がると思うんですが、それでも工藤さんは企業と掛け合って私に合ったポジションを見つけてくださる。Chatworkは工藤さんにとって重要なクライアントのひとつだったと思うのですが、敢えてそこに私を紹介してくださったことにはたいへん感謝しています。そもそも、自分自身の力でポジションを見つけ出してキャリアを拓いていける人など、世の中には1割もいないと思っていて、残りの9割は第三者の力を借りなければ、おそらく希望するキャリアには近づけない。ですから、エージェントは非常に重要な存在だと私は捉えていて、エージェント選びを誤ってしまうとキャリアが台無しになりかねないと思っています。

ありがとうございます。では最後に、CXOを志す方々に向けて、ご自身の経験から何かご教示いただけるものがあればお聞かせください。

私自身、CXOになることを目指してキャリアを重ねてきたわけではないのですが、それでも意識していたのは、可能な限り自分で意思決定できる仕事を担うということ。先ほどもお話ししましたが、みながやりたいと思う人気のある仕事だと、関係者がとても多いんですよ。大企業だと、ひとつの稟議を通すのに数十人の決裁を取らなければならない。でも、みなに敬遠されがちな仕事だと、自分と責任者だけで決められたりするんですね。自分で意思決定する経験を重ねていくと、部下を持ってマネジメントする際、どこまで委ねられるのかを肌感覚で理解できるようになり、組織をきちんと機能させてメンバーの成長も促せる。私は比較的若い頃から自分で意思決定できる場を選んできたので、それはいまの糧になっているように思います。あと、絶えず内省はしていますね。実は、私はずっと三行日記を書いていて「できたこと」「できなかったこと」「もっとやるべきこと」を毎日記し、それをひたすら振り返っているんですね。そして、できなかったことの責任はすべて自分にあると捉えて、できるようになるためには何をすべきなのかを考え抜く。これを社会に出てからずっと繰り返してきました。一方で、自分を認めることも大切だと思っていて、過去の自分と現在の自分を比較して、客観的に成長している部分は自己評価し、モチベーションを高めています。この「意志決定をする」「内省をする」「自分を認める」の3つを積み重ねていくことが大切なのではないかと私は思っています。

構成:山下 和彦

撮影:波多野 匠

  • ※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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