「逆リファレンス=企業調査」を行う重要性
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2021年11月22日
ここ数年で、特に幹部候補を採用する際に、リファレンスを実施する企業が増えてきました。(リファレンスとは、企業が採用候補者の仕事ぶりや人となりを知る目的で、以前の雇用主などに問い合わせなどを行う人物調査のことです)
私自身、自社採用に長らく関わっていますので、書類選考や面接だけで候補者を知る限界は実感しています。
リファレンスを行う上でSaaSサービスを取り入れる企業も増えています。サービスのリファレンス結果を拝見したところ、一緒に働いた経験のある人からの情報により、採用候補者のポジティブ・ネガティブの両面を知ることができ、大変有効な選考手段だと思いました。
ただ、15年以上のキャリアの経験上、リファレンスの結果によって不合格になることはほとんどありません。あくまで参考情報であり、経歴詐称のチェックの意味合いが強いようです。
ほぼ不合格にならない理由としては、採用候補者側がリファレンス対応者を人選するのが一般的であるため、ネガティブな情報が出てきづらい点が挙げられます。
こうした採用候補者のリファレンスを行う動きがある一方で、私は、「逆リファレンス」、つまり候補者が企業側のリファレンスを行うことが重要だと考えています。特に、ハイレイヤーのポジションで入社する場合、経営者や経営幹部との相性や考え方のフィット感が非常に重要です。
実際に、経営幹部クラスで入社した方が、短期で転職を検討されることも少なくありません。その理由として非常に多いのが、経営者との相性や意思決定のプロセス、ガバナンスです。
では、どのように企業側のリファレンスを行ったらよいのでしょうか。
最も有効な方法は、実際にその会社で働いている人に聞くことです。知人がいればベストですが、知人がいなければ人脈を伝って社員に繋いでもらいましょう。特にベンチャー界隈ではFacebookを活用している人が多いので、繋がりを見つけられることも多いです。繋がりを見つけられない場合は、人事担当者に依頼して選考プロセスで会っていない人との面談をセットしてもらう方法もあります。
次に有効なのは、我々のような人材紹介会社を活用することです。
例えば、弊社ではパイプの太い企業であれば過去に数十名以上の入社実績があり、入社後のお話を聞く機会も多く、内部情報をかなり蓄積しています。
また、弊社は経営幹部の採用をメインで支援しているため、社長やCXOクラスの経営幹部とのやり取りが多く、さまざまな情報をインプットしています。
特にスタートアップ、メガベンチャー企業で人材採用の重要性を強く感じている場合は、社長自ら我々とコミュニケーションを取ることが多いため、社長のコミュニケーションスタイルや考え方などもわかっています。
それ以外にも、転職希望者からの転職理由や、実際に面接を受けた方のフィードバックなど、人材紹介会社は情報の宝庫なので、活用しない手はありません。
上記以外では、転職のクチコミサイトも有効だと思います。一昔前の「2ちゃんねる」などは批判的な情報ばかりであまり有効ではなかったのですが、メジャーなクチコミサイトは実態に即した情報であることが多いと感じます。
ただ、クチコミサイトを確認するときの注意点としては、経営幹部や優秀な人材が投稿することはほとんどありません。注意点としては、投稿者のレイヤーによって視座や経営幹部に対する捉え方が異なり、情報のバイアスがあることです。その点を理解した上でご覧になるのがよいでしょう。
また、企業は生き物であり、時間の経過に伴い変化していきます。あまり古い情報は参考にしない方がよいかもしれません。特にベンチャーの場合は、数年経つと状況が好転していることが少なくありません。
「恋は盲目」という言葉がありますが、転職においても同じことが言えます。経営陣との面談で意気投合して気持ちが高ぶり、良いところだけを見てしまうことがあります。入社を決断する前に一度しっかり立ち止まり、冷静に判断するために、逆リファレンス(企業調査)をお奨めします。
(2021年11月22日)