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CXOのキャリアコラム

キャリア・人生を考える上での時間軸と幸福感

コンサルタント 入江 祥之

公開日:2023年7月20日

「人生の最大幸福はその職業の道楽化にある。富も名誉も美衣美食も、職業道楽の愉快さには遠く及ばない」
これは本多静六氏が残した言葉です。キャリアコンサルタントである私が目指すべきは、職業の道楽化のご支援ではないかと思う機会が多いです。

先日、日本の数少ないユニコーン企業と言われる株式会社SmartHRの取締役COOの倉橋氏にインタビューをする機会がありました。そのお話がとても参考になりましたのでご紹介させていただきます。

リスクのある意思決定ができたからこそ、今がある

倉橋氏は東大大学院を卒業後マッキンゼーに就職し、その後ハーバード大学のMBAを取得という、非の打ち所がないキャリアを歩んでいました。しかし、倉橋氏は29歳の時にマッキンゼー退職の決断をします。

マッキンゼーは社費留学でMBAを取得後に早期退職すると、MBAの留学費を自己負担で返済する必要があり、倉橋氏はこの決断によって1000万以上の借金を背負いました。

倉橋氏に大胆な決断をした背景を聞いたところ、以下のようにお答えいただきました。

「私は短期的なリターンより中長期的にやりたいことを実現できるかどうかを重視しています。MBA留学時に実業をやりたいと強く思いました。30代前後の貴重な2年間と1000万円を天秤にかけ、お金より時間を選択したのです。私にとっての幸せは、日々やりがいのある仕事ができることです。生活する上で一定のお金は必要ですが、それ以上に稼ぐために働くのは幸せではないと考え、決断しました」

この話を聞いて、僭越ながらさすがだと思いましたし、なるほどと膝を打ちました。
なぜなら、私は中長期的な時間軸でキャリアを考えられること、自分にとっての幸せの価値観を知っていることがとても大事だと思っているからです。

倉橋氏は現在SmartHRのCOOとして大活躍され、仕事をとても楽しまれイキイキと語っていたのが印象的でした。冒頭でお話しした本多静六氏の「職業の道楽化」にかなり近い状態に辿り着いているのではないかと思いました。この状態になると、自ずと仕事の成果が上がり、周囲の信頼は高まり人脈が広がり、経済的な報酬に跳ね返ってくるのだと思います。本当に優秀な方はこのような生き方ができるのでしょう。

大きな意思決定がキャリアの分かれ道になる

私はこれまで多くの方のキャリアについてインタビューしてきました。
成功者と思われている方々は、キャリアのどこかでこのようなリスクを伴う大きな意思決定をされていることが多いです。出世街道や恵まれた境遇を捨てたり、年収を大幅にダウンして起業したり、ベンチャーに飛び込んだり。

リスクを伴う決断ができるかが、キャリアの大きな分かれ道になっていました。

一方で、ただ単に大胆な決断をすればいいわけではありません。大胆な決断をする際は、獲得したいことが明確か、獲得できるベストな環境であるかを慎重に検討する必要があります。

そして、リスクを取ってもいずれ自分は元を取れるはずだという自信も大事です。大きなものを失うことで、何がなんでも成功してやる、取り返してやる、見返してやる、という気持ちが強くなるからこそ、その後の成功確率も高まるのではないでしょうか。

最近リスキリングという言葉が流行っていますが、個人的には座学で得られるものは限られていて実践に勝るものはないと思っています。

現在40代の方々は長いキャリア人生を考えると、まだ折り返し地点です。若い頃の方がリスクを取りやすいことは間違いないですが、ご自身のキャリアを長い時間軸で捉え、人生の最大幸福が何であるかをしっかりと考えて、職業の道楽化を目指してみるのはいかがでしょうか。

(2023年7月20日)

Author

入江 祥之

コンサルタント 入江 祥之

大学卒業後、野村総合研究所に入社。同社では主に IT コンサルティングに従事。その後、転職エージェントに転身してからは、これまで一貫してコンサル業界の転職サポートを中心に活動して参りました。