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CXOのキャリアコラム

CXO・経営幹部人材が次のキャリアに踏み出すタイミングと考え方

コンサルタント 入江 祥之

公開日:2024年9月20日

転職を検討する理由があるときは、キャリアのタイミングに悩むことはない

「現職に大きな不満はないものの、選択肢が多いと人生が充実する」
上場企業の役員で、40代中盤くらいのご年齢であるAさんはそう話されました。Aさんは同社の立ち上げ期から参画した立役者の一人であり、会社は見事に上場を果たし、成長を続けています。同社での在籍期間は10年ほどとなり、次のキャリアを見据えてAさんは当社に相談に来られました。私自身、「キャリアに限らず、選択肢が多いと人生は豊かになる」という持論があり、Aさんの考えに強く共感しました。
そこで、今回は「CXOや経営幹部人材が次のキャリアを検討するのに適したタイミングはいつなのか」というテーマでお話しします。

まず、何かしらの転職を検討する理由があるときは、キャリアのタイミングを悩むことは少ないでしょう。例えば、以下のような理由です。

・経営方針が合わなくなった
・長年担当していた大きな事業を立ち上げ、ひと段落した
・今後の新たな事業機会がない
・業績が芳しくなく、明るい未来が見えない
・キャピタルゲインを行使できた、など

キャリアの売り時は、大きな実績を出して過去の栄光になる前

転職のタイミングが悩ましいのは、特に大きな不満やきっかけがない場合です。長年会社に在籍して功労者として役員に就いている方ならば、経営陣は気心の知れた仲間や同志であることが多く、居心地もいいことが多いでしょう。わざわざリスクを負って転職する必要性はないとも言えます。

こうした状態で考えておきたい点は二つです。一つはキャリアの売り時、もう一つは年齢との向き合い方です。
一つ目のキャリアの売り時で重要になるのは、自分のキャリアの絶頂期を逃さないことです。分かりやすい事例は大谷翔平です。2度目のMVPを受賞したタイミングで新たな環境を求め、メジャーリーグで過去最高の報酬で移籍しました。
彼はアスリートですが、ビジネスの世界でも同じことが言えます。企業が我々にハイクラス人材を採用したいと依頼する際は、「例えば〇〇さんのような方を採用したい」とバイネームで言われることが多いのです。そのときに名前が挙がるのは、今旬な人や、重職を担って大きなトラックレコードを残し、それが過去の栄光になっていない人であることがほとんどだからです。そのようなタイミングだからこそ、魅力的なキャリアのチャンスが多いと言えます。

キャリア人生における「今」を俯瞰的にとらえ、残りの人生の使い方を考える

転職のタイミングで考えておくべき二つめの点は、年齢との向き合い方です。やはり年齢を重ねると精神的にも肉体的にも衰えを感じ始める方が多いです。もちろん個人差はあり、30代後半で少しずつ落ち着いていきたい方もいれば、50代でもバリバリ現役で活力旺盛な方もいらっしゃいます。
そのため、自分にとって今の年齢はどのような位置づけなのかを見極めることが大切です。
今を俯瞰的にとらえて、今後のキャリア人生を以下のように考えてみましょう。

・自分の知見を社会にどのように還元したいか
・何歳ぐらいまでにどの程度のチャレンジをしたいか
・後悔しない為に何を成し遂げたいのか、何をやり切りたいのか
・過去に成し遂げたときのワクワク感をまた味わいたいのか

シンプルに言えば、残りの人生をどう使っていきたいのかを考えるということです。

そして、ライフイベントや家族構成などを踏まえて、新たなキャリアと現職に残った場合を比較して、経済的な観点も含めて検討されるのが良いと思います。

かくいう私は弊社に入社して17年以上経ちました。ここまで長く落ち着いてしまいますと、他社に転職する勇気も自信もなくなってきますので、既にゆでガエル状態かもしれません(苦笑)。しかし、私は今の会社が好きであり、この仕事を一生続けていこうとも思っておりますので、今のままで良いとも思っております。そういった意味では私のようにキャリアの選択肢が多くなくても人生を充実できるタイプの方もいるでしょう。私と同様に専門を極めていく仕事の場合、同じような志向の方は多いと考えています。

CXO・経営幹部の方々は既に何かしらを成し遂げた方が多く、ミドルクラスが転職を考えるときとはまた違う観点が必要です。ある種、贅沢な悩みでもありますが、気づいた頃には「時すでに遅し」という可能性もあります。
「最近ちょっと落ち着いてきたな」と思われる時には、今後のキャリアや生き方について少し立ち止まって検討されても良いかもしれません。

(2024年9月20日)

Author

入江 祥之

コンサルタント 入江 祥之

大学卒業後、野村総合研究所に入社。同社では主に IT コンサルティングに従事。その後、転職エージェントに転身してからは、これまで一貫してコンサル業界の転職サポートを中心に活動して参りました。