CXO・経営幹部採用の決め手となるキャリアストーリーの裏付けとは?
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2024年11月20日
弊社では2年ほど前からCXOや経営幹部層の方々をお招きして「ネットワーキング会」を定期的に開催しています。この会を始めたきっかけは、クライアントの経営幹部とお話しした際に「人材をご紹介する以外に、弊社で何かお役に立てることはないでしょうか」とお聞きしたことでした。
「クライスさんは経営幹部層とのネットワークが広いので、ぜひ他社の経営幹部と繋いでほしい」というリクエストをいただき、それ以来、月に一、二回開催しています。好評をいただいて、これまで30回ほど開催しました。
ネットワーキング会ではアイスブレーキングを兼ねて、参加者の方々に自己紹介をしていただいていて、非常に盛り上がります。
自己紹介は2~3分/人ほどですが、参加者の皆さんが興味のあることを次々に質問されるので、質疑応答だけで10分以上に及ぶことも珍しくありません。
その理由は、皆さんの自己紹介が非常に面白く、聞いてみたいことが溢れてくるからです。
この様子を見ていて感じたのは、幹部人材の採用面接(面談)でも同様ではないかということです。
幹部クラスの面談で重視される、価値観や考え方のフィット感
以前、経営幹部の面接において重要な「自己紹介」のポイントというコラムにも書いていますが、私の感覚では自己紹介の段階で7~8割の合否が決まっているように感じます。
なぜなら、幹部クラスの面談で重視されるのは価値観や考え方のフィット感であり、それらは自己紹介で語られるキャリアストーリーや、大きな転機における意思決定で何を考えてきたかに色濃くあらわれるからです。
幹部クラスの方は、何かしらの領域で確かなご実績(トラックレコード)をお持ちのことが多いです。面談や面接で確認されるのは大きく二つあり、一つは候補者の経験、スキル面でのフィット感、もう一つが価値観や考え方(人物面を含む)がフィット感です。ただ、スキル面のフィット感は応募書類の時点である程度の確認が取れているため、面接の場ではサラッと確認する程度で終わることも珍しくありません。リファラルの場合は特にその傾向が強いです。
それより重視されるのが価値観や考え方のフィット感です。ある程度のキャリアや人生経験を積まれた方であれば、ご自身のモチベーションの源泉や大切にしている価値観、残りのキャリア人生において何を重視したいのか、何を成し遂げたいのかという考えをしっかり持たれている方が多いです。
その方の価値観や独自性とのフィット感が高ければ入社後のアンマッチを防げる可能性が高まり、採用する側も安心感をもてます。
例えば、以下のような自己紹介があったとすると、組織へのフィット感があるとイメージしやすいです。
●学生時代にアートを学び、プライベートでは障害のある子供を授かり、今後のキャリアはアート×社会福祉の道へ
●大学時代にサイエンス分野でPhDを取得し、その後、戦略ファームのヘルスケア領域でパートナーまでご活躍、今後もサイエンス領域で日本を元気にしたい
●大手消費財メーカーのブランドマネージャー経験があり、モノが溢れる時代に、大量生産・大量消費を促すのではなく、これまで培ってきたマーケティングのスキルで社会を前進させたいと考えている
具体例として紹介したいのが、五常・アンド・カンパニーCFOの堅田氏のキャリアヒストリーです。以下は「民間版の世界銀行を目指す五常・アンド・カンパニーに入社しました」という堅田氏のnoteから抜粋した、五常からのオファーを受諾した際のメッセージです。
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言葉にすると陳腐になってしまうのですが、「選んだ」「選んでもらった」というよりも、自分が五常ではたらくのはとても自然なことのように感じています。大げさに言えば、自分のこれまでの職業人としての人生は五常との出会いのためにあったのかもしれないなぁ…なんてワクワクしています。
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キャリアヒストリーから価値観のフィットを確認する
弊社でも、以下のような事例がありました。
彼女は大学時代にキャリア支援に携わり、新卒でコンサルティング会社に就職し、コンサルティングに携わっていました。一方で人生における選択や意思決定にずっと興味があり、業務外でキャリアコンサルタントの資格を取得していました。
私は面接でこうしたキャリアストーリーや、個人がいきいきと働く支援がしたいという志望動機を聞いて、「これはもう間違いない!」と確信めいたものを感じたことをよく覚えています。
経営幹部層の採用は良くも悪くも会社に大きな影響を及ぼします。特にスタートアップやベンチャー企業は相応しくない幹部人材を採用してしまうと組織崩壊を起こし、大きなダメージを被るケースもあります。
一方で、キャリアヒストリーとのフィット感が高いと、大きな困難に直面したときにも強い信念によって壁を乗り超えられることが多い印象です。
つまり、個人のキャリア選択においてベストな選択をするにはこれまでの人生を振り返り、自分の根っこの価値観や信念をしっかり分析することが欠かせません。採用する企業側も経験、スキル以上にキャリアヒストリーから価値観のフィット感をしっかりと確認していただくのがよろしいと思います。
(2024年11月20日)