人生後半のキャリアで大事なことは「成功依存症」から抜け出すこと
コンサルタント 入江 祥之
公開日:2025年3月21日
一定の成功を収めている人ほど、「成功依存症」になりやすい
最近、知り合いの経営者のご紹介で『人生後半の戦略書(著:アーサー・C・ブルックス)』という本を読みました。私自身、40代中盤を超えてから少しずつ体力の衰えを感じていたところでもありますし、自身の職業柄、テーマ的にとても興味深く読ませていただきました。
その中で、特に印象に残ったポイントをまとめてみます。
・成功者の多くは、人生の前半は単純な成功法則に従っていることが多い
・プライベートを犠牲にして一心不乱に働き、出世階段を上り続ければ、仕事も人生もうまくいくと考える
・成功者は成功者であり続けたいという「成功依存症」から抜け出せないことが多い
・幸福になることよりも特別な存在であることにこだわる人が多い
・若いうちの成功の源となっている暗記力、直感力、計算力、論理思考力などの流動型知能は、実はかなり早くピークアウトしてしまう
・その対応策として、益々ハードに働くことで、衰えと弱さをカバーし、年々明らかになる変化を否定し、悪循環に陥りやすい
・人生の後半になってから脚光を浴びない状態になると、その時のショックは非常に大きく、怒りや恐怖、落胆に見舞われ、当初想像していたような、喜びや満足や誇りに満ちた人生は叶わずに終わってしまうことが多い
この本を読んで共感したのは、一定の成功を収めた方は多くの割合で成功依存症になりやすい傾向にあることです。一定の成功を収められている方は学生時代から相応の努力を積み重ねていることが多く、だからこそ、なかなか過去の成功を捨て去って、右肩上がりの成長・成功から右肩下がりになることを受け入れるのは難しいでしょう。「人はあるものを得るより、それを失うことにはるかに敏感」という一節もありました。
加齢によって衰えにくい「結晶型知能」を習得したり、執着や欲を減らす
早くにピークアウトしてしまう「流動型知能」とは対照的に、経験や学習などによって長年にわたって獲得されやすい「結晶型知能」があると書かれています。
結晶型知能とは、言語能力、理解力、洞察力、判断力など、知識や知恵を指します。
この観点を踏まえると、「結晶型知能」を活かしやすい、伝える、書く、判断する、教える仕事は加齢による能力が衰えづらいので、例えば、経営者/経営幹部、投資家、アドバイザー/顧問、コーチ、教授/講師、執筆家などの仕事は歳を重ねても活躍しやすいのではないかと思います。
成功依存症からの脱却方法の一つとしては、信仰を深めることも有効だそうで、例えば仏教でいう、執着や欲を減らすことも勧められています。
若いうちは足し算の考え方で良いが、「50代を超えてからは削ることが幸せに繋がる」とも言われています。特に晩年は、「本当」の友達の有無がウェルビーイングに大きく影響し、「50歳のときに最も人間関係に満足していた人々が、80歳のときに最も健康だった」という研究データもあるようです。
また、「履歴書向き」の美徳よりも「追悼文向き」の美徳を、というメッセージもとても響きました。おそらく大半の方はキャリアのためにキャリアを築いているのではなく、自らの幸福や社会貢献のためにキャリアを重視しているはずです。
何かを成し遂げるためには当然ながら自己成長が必要であり、特に若いうちはそのための努力は欠かせません。歳を重ねても常に努力はし続けるべきでしょう。
ただ、年齢には抗えないところもあるため、貢献の仕方は年齢に応じて変わってくると思います。皆さまにおかれても、ご自身の年齢に応じて数年おきぐらいのスパンで中長期のキャリアや人生を見つめ直すことをお勧めいたします。
(2025年3月21日)