面接官の本音 vol.126   PwC Japan合同会社

PwC Japan合同会社

公開日:2019.01.10

PwC Japanグループ(以下PwC)は、複雑化・多様化するクライアントの課題解決のため、グループ内の各法人の総合力を結集し、多種多様なサービスを提供している。PwCとしてのマーケティング戦略および営業推進の役割を担うClients & Industriesのリーダーを務める今井俊哉氏に、現在、同部署で最も採用を強化している「クライアント・ドライバー」のポジションについてお話を伺った。

PwC Japan合同会社 マーケット部 Clients & Industries リーダー 今井 俊哉氏

Contents

【インタビュアー】コンサルタント 神田 昭子

クライアント・ドライバーに求められる三つの重要なミッション。主要顧客・主要業界担当パートナーの右腕として活躍して欲しい。

Q

「クライアント・ドライバー」とは、初めて聞くポジション名なのですが、どんな役割なのでしょうか。

今井

まず背景からお話しますと、これまでの私たちのビジネスは、コンサルティング・監査・M&A・ディールズ部門などが個別に得意としているサービスを持ってクライアントのところに行くという、プロダクトアウトのスタイルでした。しかし、最近はクライアントが抱える課題が複雑化・多様化しており、個別にサービス提供していくだけでは、最適な課題解決につながらないケースが増えてきました。特に大企業の場合には、ある程度長い時間軸で、クライアントの問題意識等を深く理解し、全体を俯瞰してクライアントとの関係性をマネージしていかないといけません。例えば、GDPRなどの新しい規制に対応するための体制の構築が必要になった際に、組織、営業の方法、モニタリングの方法等について、クライアントのそれぞれの部門から、PwCのそれぞれの部門に相談が入るのですが、私たちはそれに対して、PwCとして全体像を捉え、クライアントの各部門と向き合いながら多面的に解決方法を考えて、ご支援していく必要があります。そこで、私たちは、このコントロールタワーの役割を担うパートナーをアサインし、その後方にPwCのさまざまなサービスを提供できるチームを適時オンデマンドで編成しています。このコントロールタワーとなるPwC側の責任者の右腕となるのがクライアント・ドライバーです。

Q

なるほど。「主要顧客・主要業界担当パートナーの右腕」としての、クライアント・ドライバーの具体的な業務内容についても教えてください。

今井

クライアント・ドライバーには2種類ありまして、主要クライアントを担当するメンバーと、主要業界を担当するメンバーがいます。例えば私の場合、某日系IT企業の担当パートナーであると同時に、TMT(Telecommunications, Media and Technology)業界のパートナーも兼務しているので、それぞれの立場に対して、クライアント・ドライバーがいます。個社担当、業界担当に共通して、クライアント・ドライバーには大事な三つの役割があります。 一つ目は、主要顧客・主要業界担当パートナーがクライアントへの提案や戦略を考える際に必要となる基礎情報や経営課題のたたき台となる仮説を提供すること。例えば、現在の経営環境・事業環境において、こういう課題がホットトピックになっているけれども、隣接する業界などの動きをみていると早晩こちらの課題の方がより重要になってくるに違いないという仮説等を一緒に考える役割です。また、主要業界担当であれば、もう少し俯瞰して、この業界の付加価値を伸ばすための業界共通の課題、あるいは共通の事業機会とはどういうものかを考えていくことが役割になります。 二つ目は、社内のさまざまな組織からテーマに即した適切な専門家を招集して会議体を設定すること。議論を活性化させることで、クライアントに対する提案内容をブラッシュアップしていくのですが、より適切な専門家が参加してくれることで提案内容の質が違ってくるので、地道ですが非常に重要な役割です。 三つ目は、クライアントや業界に対するPwCグループとしてのマーケティング・営業戦略の進捗確認です。担当パートナーは複数のクライアントを担当しており、必ずしも個社ごとのすべてのパイプライン状況を把握しきれているわけではないので、ツールやデータを活用して、目標に対する進捗をリアルタイムでモニタリングし、もし遅れている場合は、パートナーにアラートをあげる必要があります。業界担当であれば、業界担当のパートナーと個社ごとの担当パートナーをつないで、忙しくて怠りがちな情報連携を図るのも重要な役割です。

Q

クライアント・ドライバーは、クライアントだけではなくてパートナーの方にもドライブをかけていくことが求められているのですね。では、どういう方が本ポジションにマッチするのでしょうか?

今井

もちろん同業他社でクライアント・ドライバーの経験者がいればベストですが、なかなかマーケットにはいないというのが現実のようです。以下三つのうち二つ以上該当すれば早期にキャッチアップが可能かと考えています。また、海外とのコミュニケーションも多いため、流暢に話せることは必須ではないですが、メール対応や簡単な電話会議ができるレベルの英語力は必要です。 ① 法人向けセールスアカウントリーダー(ラージアカウント担当) ② ターゲット業界・企業に対して何らかの接点があること ③ プロフェッショナルサービスファームにおける経験があること ①については、管理職である必要はありません。③について補足すると、クライアントの悩みを聞いて「大変ですよね」と言うだけなら誰でもできますが、それでは何の解決にもなりません。その課題に緊急性があるのか、会社の経営に対するインパクトがいかに大きいのかを定義する必要があります。例えば、「戦略立案」を実際に行うのはクライアントであり、私たちの仕事は「戦略立案の支援」です。この「支援」の内容について、成果物をクライアントの要望に応じて具体的に定めていくのが私たちのコンサルティングビジネスです。その辺りのことをよく理解しているという観点で、③の要素を挙げています。

Q

そういうことですね。スキル・経験とは別に、求める人物像としてはいかがでしょうか。

今井

クライアントの状況は刻々と変わり、それに応じて私たちも柔軟に対応していかなければならないので、セルフスターターの方を求めています。また、新聞などに掲載された瞬間から海外からの問い合わせへの対応等を行っていく必要があるので、知的好奇心が高く、学び続けることが自然にでき、そういったことが苦にならない人がマッチします。それから、社内の各部門と連携して動くためのコミュニケーション能力や、アウトプット志向も求めたいところです。例えばパートナーが話したことをすぐにパワーポイントでドキュメント化できる方等、完成度は80%でも構わないので、スピード重視でアウトプットを出せる方が向いています。さらに言えば、自分がサポートしているパートナーの時間の価値をどう最大化するかを考えられる方でしょうか。

PwC Japan合同会社

10年前倒しでパートナーの仕事を疑似体験できる仕事。将来のキャリアの幅も広がる。

Q

貴社でクライアント・ドライバーの仕事を次のキャリアとして選択する魅力について教えてください。

今井

この仕事は、パートナーの中でもよりシニアなパートナーの思考を理解し、時には先導し、その右腕の役割を担います。これは、通常のコンサルティングワークでは得難い経験ですし、個人のラーニングカーブも上がります。また、先端のマーケット情報など、普通は知り得ないような情報に触れられるという点も挙げられます。トップがどのように決断を下しているのかを比較的早い段階から間近に見られるのは、貴重な経験だと思います。

Q

確かにそうですね。入社後のキャリアパスとしてはいかがでしょうか。

今井

これまでのご経験にもよりますが、まずは主要クライアント担当、その後主要業界担当、業界全体統括と広げていただける可能性があります。その他にも、クライアント・ドライバーとして経験を積んだ後、CRE(Client Relationship Executive)という営業職やコンサルタントなど志向に応じてPwC内で多様なキャリアを選択することも可能です。営業職の場合は、話が上手だから売れるというものではなく、クライアントに刺さる言葉を二つ三つ言えるかどうかも重要となります。クライアント・ドライバーの経験があれば、クライアントの状況を俯瞰して客観的に見る癖がついているはずですので、ロジカルシンキングや分析力を身に着けて営業にキャリアチェンジするというのは非常にプラスになると言えるでしょう。また、コンサルタントになりたい方には、トレーニングコースも用意されています。良い意味で、クライアント・ドライバーの経験を将来のキャリアに向けたステップと捉えていただき、活用してほしいですね。

Q

他では得られない経験を積むことで、より個人のキャリアの可能性も広がるのですね。最後に、この記事を読んでおられる候補者の方にメッセージをお願いします。

今井

このポジションでは、業界に対する洞察力が磨かれ、業界戦略や大企業に対する戦略立案を経験豊富なパートナーと一緒に考える機会が数多く用意されています。また、部門ごとに異なるカルチャーが存在する中で、さまざまなメンバーの力を活用する経験が得られます。事業会社であれば、ご自身のポジション内での付き合いが中心となることが多いですが、業界やクライアントの状況に応じてPwCの多様なサービスを学ぶ機会があるため、PwCではどういうことができるのか、自ずと語れるようになるでしょう。組織全体を俯瞰してその力を最大化することができれば、他の企業に行ったとしても、その力を活用して活躍できるはずです。そして、クライアント・ドライバーというのは事業会社のスタッフに近い業務内容であるため、その後のキャリアでの汎用性も高いと言えます。私自身、若い頃から常に次のキャリアに移るかどうかを考えていましたが、選択の基準はいつも「次のキャリアの幅が広がるかどうか」という点でした。それは非常に大事なことだと考えていて、どんなに給料が高くて華々しい仕事であったとしても、それ以外の仕事ができなくなるというのはつらいと思いますね。主要顧客・主要業界担当パートナーの強力なサポート役として動くことによって、通常は40代後半から50代前半で経験するような仕事を10~15年前倒しで疑似経験できる環境ですので、ぜひご自身の能力を存分に高めていただき、その先のキャリアに向けて羽ばたいて欲しいと考えています。

インタビュアー / コンサルタント 神田 昭子

構成: 神田 昭子

撮影: 櫻井 健司

※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。

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