公開日:2025.01.10
松尾研究所は、ディープラーニングの研究で日本をリードする東京大学大学院工学系研究科の松尾・岩澤研究室とビジョンを共有し、大学・企業・スタートアップによる産学共創のエコシステムを実現することを目指して2020年に設立された企業だ。アカデミアで生み出されたAIの先端技術を産業界に繋げ、社会実装を通じて得られた知見をアカデミアに還元することで、イノベーションのスパイラルを創出することをミッションに掲げ、現在事業と組織の拡大を図っている。そんな同社の人材採用の責任者を務める久保田氏に話を伺った。
株式会社松尾研究所 取締役 副社長 久保田 陽登美氏
【インタビュアー】コンサルタント 吉田 綾
現在、松尾研究所ではAIコンサルタントからデータサイエンティスト、さらにコーポレート部門まで、さまざまなポジションで人材を広く募集されていますが、採用選考時に共通して重視されているポイントはありますか。
大きく3つあります。ひとつは、他者へのリスペクトがあるかどうかということ。というのも、私たちの組織はさまざまなバックグラウンドを持つインターンメンバーを受け入れており、学生も社会人も、年齢や立場関係なく一線で活躍されているんですね。その背景には、松尾研究所という場を活用し、得た知見や人脈をもとに起業するなど、キャリアを拓いていただきたいという願いがあります。こうした環境ですので年齢や立場の違いで相手を上に下に判断することなく、どんな人にも等しく敬意を払える方かどうかをとても重視しています。
残りの二つの採用選考ポイントについても教えてください。
あとの二つは、私たちが大切にしている価値観である「松尾研Values」と関わっています。まず、自分の視座をメタ認知し、行動を変えることができるかということ。松尾研Valuesのひとつに、「広い視野・高い視座」という考えがあります。私たちは東京大学大学院工学系研究科の松尾・岩澤研究室とビジョンを共有する組織なので、社会から大学が付託されている責務に共鳴し、日本の産業に貢献しなければいけないという強い思いがあります。ですから、短期的な視点で浮利を追い求めるのではなく、中長期的に物事を考えることが推奨されています。一企業一個人の目線ではなく、日本の社会のどんな変革にどう貢献するのか、この仕事は自分達の在り方に適っているのか、という議論が社内で絶えず行われるんですね。みな高い視座が求められるわけですが、視座を高めていくためには、自分が社会から何を期待されているのか、それに対し自分がいまどのようなレイヤーで物事を捉えられているのかを自覚しなければなりません。自分自身をメタ認知し、自らが及んでいない範囲を明らかにして、挑戦すべきことを見出して行動を起こしていく。そうした姿勢を重視しています。
「他者へのリスペクト」「自分自身をメタ認知し行動を変えられるか」を重視されているとのことですが、3つ目の採用選考ポイントは何でしょうか。
成長意欲や挑戦意欲にあふれていることです。松尾研Valuesには「1.4倍思考」という価値観もあるのですが、当社は毎年1.4倍成長するのが当然だという感覚を大切にしています。その前提として、生物や人間というのは必ず成長するものであり、ナチュラルに過ごしていても生きていく上で何かしらの工夫を施してしまうので、1.4倍ぐらいの成長はする筈だと。私たちは社会を変革したいと志向しており、数%の成長では、社会に大きなインパクトはもたらせない。1.4×1.4で2年経つと2倍に成長し、10年経つと指数関数的に30倍に成長できる。この指数関数的な成長があってこそ、社会に認知され、大きなうねりを起こせるわけです。そうした意識で事業に臨んでいるので、これから参画いただく方にも、現状維持ではなく成長志向を期待しています。
この三つの採用選考ポイントは、面接の中でどのように見極めていらっしゃるのでしょうか。
たとえば、他者にリスペクトできる方かどうかは、面談時での言葉の選び方ひとつとってもうかがえます。ご自身をメタ認知して行動を変えられるかどうかを見極めるために、私がよく候補者の方に伺うのは、「ご自身が弱点を自覚したエピソードについて教えていただけますか」「それを克服されるために何か取り組まれたことはありますか」という質問。その答えは、長所との裏表になっている模範解答や、格好の良い話である必要はありません。弱点を克服するために、耳の痛かった指摘をメモに残しているとか、泥臭いことでもまったく構わないんです。内省の深さが窺えるエピソードが伺えると嬉しいです。人は、自分の本質に関わる指摘からは逃げたくなるものです。指摘されて耳が痛いこと・自分が認めたくないことにも向き合い、葛藤しながらも自分を変化させようという真摯さがある方は、いつも素敵だなと感じます。
久保田さんが採用活動にあたり、候補者の方々とのコミュニケーションにおいて意識されていることは何でしょうか。
魅力的な方にお会いすれば、素直に「(あなたのことが)好きです。きっと当社に合うと思います」とお伝えしています。私もそうですが、求められると嫌な気はしないものです。そこで、お互いがハッピーになれるよう、気持ちは率直に表現しています。また、面接時には候補者の方が松尾研究所で実現したいことをできるだけ深掘りしています。その方が志向したいことと当社のビジョンや機会と結びつけていくことが私の役割だと思っていて、どうなりたい・どうありたいのか質問を重ね、候補者のインサイトを一緒に言語化していくことを心がけています。最終プロセスにおいては、候補者の方が携わる仕事に関し、現状の課題も含めてご説明するようにしています。それについてどうお考えになるかを候補者の方と議論し、具体的な仕事のイメージと納得感をもってご入社いただけるよう努めています。
久保田さんが面接時、もしテンションが下がるような場面があれば教えてください。
少し語弊があるかもしれませんが、野次馬的なご質問をいただいた時でしょうか。尚、給与など待遇に関する質問は何ら問題ないと思います。たとえば「自分は家庭を大切にしたいので、ワークライフバランスを含めて待遇についても納得できる職場を選びたい」というのは、ご自身の優先順位とすり合わせをしようとされる誠実な姿勢だと思います。一方で、ポジティブな意図のない、好奇心のみから発せられた質問だと感じられた時は、面接官として少し残念に思う時はあります。せっかくの場なので、ご自身の人生を豊かにするために知りたいことを臆せず聞いていただき、納得した上でご入社いただければと思っています。
御社にとって「志ある人材」とはどのような方でしょうか。
志というのは、誰かに焚きつけてもらうものではないと思います。ですから、志のある人材というのは、自分で自分をどう燃やせるかをわかっている人ではないでしょうか。誰が何と言おうと、自分はこれを成し遂げるのだという信念で動いている。それは何も壮大でなくていい、目の前のことを常に最良にしていく、ということも良いと思います。ただ、たとえば周囲から定期的にフィードバックを受けないと自ら動けないというのは、エンジンに着火していないんですね。自分をどんどん駆動できる方が「志のある人材」だと私は考えています。そうした自らを駆動できる力を、賛辞の意も込めて「変態」の資質、と表現することもあります(笑)。たとえば当社の研究者は、解決したい課題に向けて、別に誰に焚きつけられるわけでもなく、自分で仮説を設定しては検証を繰り返し、ひたすら研究を重ねている。その過程で先ほどお話しした、自分をメタ認知して視座や行動を変えるということを苦もなくやり続けていて、いつも物凄いエンジンが回っているんですね。そうした「変態」の資質を持つみなさんに、ぜひ仲間になっていただければと思っています。
インタビュアー / コンサルタント 吉田 綾
構成: 山下和彦
撮影: 波多野匠
※インタビュー内容、企業情報等はすべて取材当時のものです。
コンサルタント 吉田 綾
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今回のインタビューを通じて「松尾研Values」はもちろんのこと、日本の社会・産業への貢献、中長期的な視点での事業成功を一丸となって本気で実現する姿勢が伝わってきました。「1.4倍思考」、「自分で自分を燃やす」にワクワクする方にとって非常にやりがいのある環境です。