採用コラム

Column Vol. 8

「求める人物像」は採用担当者で示せ!

現在、私がリクルートで採用に携わっていたときと同じ方法で採用活動を行っている会社が一つあります。2000年に創業したばかりでありながら、いまや一部上場企業となったリンクアンドモチベーションです。同社は就職人気企業ランキングの常連にもなりつつあります。会社の歴史と規模を考えれば、これは驚異的です。

同社では採用シーズンになると、事業の現場からエース級の若手社員を引きはがし、採用活動に専念させます。下手をすれば売上が減少するかもしれないリスクを負う措置で、経営者としては非常に勇気のいる決断です。実は、同社の小笹芳央社長と私はリクルートで7年間、一緒に採用の仕事に携わっていました。小笹社長がエース社員を採用活動に投入できるのは、リクルートでの経験を通じて採用の重要性を深く理解しているからに他なりません。

リンクアンドモチベーションは採用広報や説明会の運営が抜群に上手です。それも採用人気を集めている一つの理由ですが、単に採用広報が上手なだけでは「入社して欲しい人」を集めることはできても、そこで終わりです。最終的に入社を決断してもらうには、人の力が必要になります。ここにエース級の社員を採用担当者に置くべき理由があります。

企業がどの程度の採用力を持っているかは、次の式で表せます。

 企業の採用力=企業のブランド力×採用広報にかけた費用×採用担当者の力量

企業がブランド力を築くには膨大な時間と労力が必要です。採用広報も、ベンチャー企業や本社の制約が厳しい外資系企業では、多額の費用をかけることは難しい。現実にすぐ着手でき、効果が上がるのは「採用担当者の力量」だけです。採用に関わる方は、ぜひこの原則をご理解ください。

私は「求める人物像は採用担当者で示せ!」といつも言っています。「類は友を呼ぶ」というように、応募者が「この人みたいになりたい!」「この人と一緒に働きたい!」と思うのはそれに近いタイプが多いものです。逆に採用要件として「求めるのは地頭のいい人」と言っているのに、鈍臭くて勘の悪い人が出てきたら、応募者は興ざめしてしまうでしょう。要するに、「こういう人を採用したい」という社員を担当者に配置しないと、採用はうまくいかないのです。

先日、ある成長企業の経営者と食事をしたときに、こんな質問をされました。「最近、中途入社でくる社員の水準が今ひとつ。うちの採用担当者は大丈夫ですか?」思い当たることはないので、私は「大丈夫ですよ」と答えしました。「それならいいのですが。採用する人の数も質も今ひとつのときは、やはり採用担当者が今ひとつなんですよね」お話を聞いて、この方は採用の本質をよくご理解されていると思いました。

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採用活動は自社という商品を学生や中途の転職希望者に売り込む仕事です。その意味では、営業と同様の仕事といえます。評価に関しても営業マンの成果が売上で計られるように、採用担当者は採用者数で計ることができます。そしてリクルートの採用担当者は営業マンと同様、お互いに競争させられていました。

リクルートでは1000人採用するために100人の採用担当者を配置していましたが、当然担当者によって採用者数にバラツキがあり、その結果が厳しく評価されていたのです。仮に4月1日に新卒のリクルーターが100人配属されると、10月1日の内定式と同時に85人は異動になりました。残される15人はリクルーターとして優秀な数字を残した人たちです。各リクルーターが採用した学生の数は5人から38人まで差がありましたから、その違いは一目瞭然です。

さらに2年目には15人が10人へ、3年目には5人へとどんどん減らされていき、4年目で3人になったあたりで、生き残ったリクルーターはマネージャーに昇格されました。採用部門には新人賞や最優秀拠点賞などの表彰制度もありました。まさに営業マンと同じモチベーションの与え方をしていたわけです。リクルーターを経由して現業部門に配属されると同期社員より一歩出遅れるハンデを負いますが、それでも採用部門出身者はみんな活躍しました。

学生に対し「俺はリクルートをこんな会社にしたい」と夢や目標を語っているうちに、リクルーターはどんどん饒舌になります。当初、語っている内容は誰かの受け売りでしかありません。しかし、話し続けているうちに言葉が自分のモノになり、自分自身がモチベートされていきます。だから採用部門出身者はとてもモチベーションが高く、成果を厳しく問われる中を勝ち抜いた経験もあって、みんな活躍していったのです。

7年間にわたり採用担当者として働いた私自身、新卒にせよ中途にせよ、自分が優秀な人材を口説いて入社してもらうことで、会社がより良くなっていくという強烈な実感がありました。自分が会社の未来を背負っている感覚と言ってもいいでしょう。リクルートではそうした感覚を入社1年目や2年目の社員が味わっていたのです。

一般的な会社の新卒1年目や2年目の社員といえば、見習い的なポジションにとどまり会社のビジョンを共有するところまでいくのは難しい。この差は非常に大きいと思います。見方を変えると、社員を採用活動に関わらせるとモチベーションが高くなり、社内の活性化にもつながるということです。この原理を活かさない手はありません

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