「よい人」を採用するプロセスを分解して見ていくと、最初には必ず「出会い」があります。
企業にとってこの出会いは、人材紹介会社や募集広告を通じてもたらされることが一般的ですが、
それだけとは限りません。
たとえば業界の集まりによい出会いがあるかもしれませんし、
自社に出入りしている取引先の社員や、社員のプライベートな付き合いのなかに
潜んでいるかもしれません。
私たち人材紹介会社にとって、知人の結婚式の二次会は格好の「出会いの場」です。
新郎新婦が優秀な人であれば、その友人も優秀な人たちが多い。
「この人は良さそうだ」と感じる人がいれば必ず声をかけ、仲良くなっておきます。
私の場合、スピーチを頼まれることが多いので「ヘッドハンティング会社を経営しています」
という話をからめてあいさつをします。
そうすると他の参加者と名刺交換をするときに「実は転職を考えておりまして……」
という話になったりもします。
人材の獲得競争が激しくなっている現在、よい人を採用するにはまず、
よい人と出会う機会を増やすことが大切です。
それには人材紹介会社や募集広告だけに頼らず、マネージャー以上の人たちは
意識的にいろいろな場に出かけていくことです。
出かけた場でこれはと思う人がいたら声をかけ、話し込んでジャッジしていく。
業界の集まりでよい人と出会ったが、その人を直接引き抜こうとすれば
競合会社なので血で血を洗う争いになってしまう。
そんな懸念が生まれる場合もあるでしょう。
そうしたときは私たちのようなヘッドハンターを使えばよいのです。
相手の名前も連絡先もわかっているので、ヘッドハンターとしては着手しやすい仕事です。
出会いの場を増やすときには注意点があります。
それは今一つな人ばかり見ているとそれが自分の基準になってしまい、
ジャッジを誤るということです。
よい人と出会うために出かける場は、ある程度は選んだほうがよいでしょう。
今後、人材のひっ迫感はますます強くなると予想される状況では、
幹部社員が総出でいろいろな場に出かけ、リクルーターとならなければ
人材獲得競争で勝利はできません。
次回は『採用戦略』についてお話しさせていただきます。
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新卒採用と中途採用で大きく異なる点に、
競合他社の存在の見えやすさ・見えにくさがあります。
基本的に新卒採用は同じ時期にゴングがなって一斉に始まるうえ、
学生がたくさんの企業に応募していることは前提になっているので、
企業には「この学生なら採用したい会社は他にもたくさんあるだろう」
との意識が働きます。
ところが中途採用の場合、採用で競合する他社の存在はなかなか見えにくい。
こちらから聞かない限り、候補者は他社も受けていることは口にしないので、
競合他社の存在は新卒採用に比べあまり意識されません。
ところが現在の中途採用市場は需要が供給を上回っており、
優秀な人材は引く手あまたの状況です。
しかも最近は競合他社とは別のライバルが人材争奪戦に加わるようになりました。
それは候補者がいま働いている企業です。
つまり勤務している会社から強く慰留され、
内定が出たあとに転職をやめて残留するケースが増えているのです。
「あなたの希望通りの仕事をやらせてあげます。転勤もしなくていいから」
「給与をアップしましょう。ポジションも二階級特進にします」
そんな風にあの手この手で慰留しているのです。
なかには経営者や担当役員が出てきて
「これまできちんと君を評価できなくて申し訳なかった」と謝る会社もあります。
もちろん退職を申し出た社員の慰留は昔から行われていることですが、
人材の需給がひっ迫しているため企業が非常に力を入れるようになっています。
視点を人材側に移して見ると、中途採用市場が活況である現在は
選択肢に恵まれている状況だといえます。
そのなかでよい人材を採用するのに必要になるのが
前回申し上げた「採用に対して本気の姿勢」であり、
「何が何でもこの人を採るんだ」という気持ちです。
ところが経営者は候補者が慰留されて迷いを示したり
なかなか決断できなかったりすると、「来ても来なくても好きにすればいいよ」
という態度を取りがちです。
そこには「ぜひこの事業をやりたいという思いを持って来てほしい」、
「熱い思いを共有してほしい」という経営者の気持ちがあります。
しかし複数の魅力的な選択肢を目の前にした候補者が、
いろいろ迷うのは当然です。
これは自戒を込めていうのですが、他の会社からもオファーが出たり
いまの会社から強く引き留められたりした候補者が迷うのは当たり前。
迷う姿を見て「来なくてもいいよ」という態度を取ってしまっては、
よい人材を採用することはできません。
次回は「良い人を採用する」ために重要なことについてお話しします。
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